宝石販売会社に勤める彰子は、ちょっとひねくれており性格も暗い。
皆からつまらない女と言われ、社会に馴染めず孤独を感じつつもそれが楽だと思ったりもしています。
そんな彰子の心の支えは北海道へのツーリング。
短大卒業前に美容室で手に取った『北海道ツーリング完璧ガイド』という本で見た、冊琢内湖の写真に圧倒的な感動を受けたのです。
ここに自分の居場所があるのだと思い込みます。
彰子は三年間勤めた会社を辞め、原付免許を取って50ccのオフロードバイクを買い、北海道へ向かいます。
目指すは冊琢内湖、そしてその湖畔にある『カフェ&イン サッタクナイ』です。
店のマスター手作りの名物『ライダー定食』を食べながら、楽しく旅の話を語り合うのです。
北海道に向かうフェリーの中で他のライダーと知り合い、ライダー宴会に誘われる彰子。
しかし暗くひねくれた性格が災いして皆から鬱陶しがられます。
北海道に着いてツーリングを始めたのですが、いつの間にか他のライダーや彼らが立ち寄る店で彰子は「ハナクソ」というあだ名が付いていることを知らされます。
それほどフェリーや着いてから立ち寄った店での印象が悪かったのです。
もう彰子の支えは冊琢内湖、そして『カフェ&イン サッタクナイ』しかありません。
その店に行けば自分の求める世界があるのです。
名物の『ライダー定食』を食べながら、マスターと楽しい旅の話をするのです。
やがて『カフェ&イン サッタクナイ』に着いた彰子を、マスターは優しく迎え入れてくれます。
残念ながら『ライダー定食』は現在品切れ中でしたが。
彰子はしばらくその店の手伝いをすることになりました。
冊琢内湖の素晴らしい景色に感動し、マスターともいい感じになるのですが・・・・。
読んでいまして、なるほど孤独な女性の自分の居場所探しの話かと。
誰もが思いますよね、自分の本当の居場所はもっと別にあるのではないかと。
店で働きながら性格が明るくなっていき、新しい人生が開けていく主人公。
マスターともいい感じになり、ちょっと安直ながらもまずまずな話かなと思いきや、なんとまあえらい結末が。
フェリーで知り合い、店を訪ねてきたアライさんのセリフもなるほど伏線となっていますね。
予想外のラストがいいし、彰子の性格の鬱陶しさもよく書けてるなと思いました。
しかし期待して読んだ表題作以外の短編はどれもイマイチ。
箸が主人公の「納豆箸牧山鉄斎」や、蠅が主人公の「間柴慎悟伝」などユニークではありましたが。