映画評論家の荻昌弘氏。
食通としても知られた人でして、何冊か食に関する著書を残しておられます。
この「男のだいどこ」が食について書かれた氏の最初の本です。
私が読むのは二冊目。
ミーハーな食通にはチクリと皮肉をかましておられますように、決して誰もが口にできないような料理の食べ歩き自慢ではありません。
もちろん相当な食の経験をお持ちなのですが、世間で食通といわれる一部の俗人たちを冷笑しておられたようで。
氏は経験した味を家庭で再現することに意欲を注いでおられたようですね。
というか、それがこの本の主旨でもあります。
男が台所に入る。
今は当たり前ですが、昔は男が台所に入るなんて・・・・という雰囲気がありました。
男が台所に入って何が悪い。
そんな開き直りと気構えを感じさせるタイトルです。
公に男の料理を宣言した先駆者ともいえましょう。(笑)
かといってこの本はレシピ集ではありません。
あくまで食エッセイです。
しかしちゃんとご自身のレシピは披露しておられます。
読み物としては文体が独特です。
後にいくほどその感はあり。
ちょっといき過ぎかなと思いつつ、でも私は楽しめました。
以前に某大家の食エッセイを読んだのですが、なんとも退屈。
あの開高健氏も絶賛しておられたそれは、私にはまったく面白くない一冊でした。
やはりこれは相性でしょうね。
「男のだいどこ」、これはよかった。
ラベル:グルメ本