東京のはずれにある「まほろ市」。
そんな街で多田啓介は便利屋を営んでいます。
ある日、高校時代の同級生、行天春彦と会うのですが、どこにも行くあてのない行天は多田の事務所に居候することになります。
便利屋に舞い込む仕事を二人でこなしていくわけですが・・・・。
連作短編のような構成となっています。
主人公が便利屋という設定となりますと、パターンとしては舞い込む仕事先での人間模様であるとか、いろんなトラブルに巻き込まれてドタバタするとかということになりますね。
どちらかというとこの作品は後者でしょうか。
もちろん前者にも跨っていますが。
第135回直木賞受賞作なのですが、読み始めて「これは直木賞とかいうのとは違うだろう」との印象を持ちました。
しかし読み進めていくと流れるテーマが明確になってきて、なるほどただの便利屋トラブル始末記ではないのだなということがわかります。
責任感のあるきっちりとした多田とちゃらんぽらんな行天のコンビですが、どこか通じる部分もあるのです。
ある理由で離婚し、いまだに重いものを抱えている多田。
幼い頃から虐待を受け、変わり者な人間になってしまった行天。
そんな二人だからこそ理解できる「幸福」への思い。
作者からのメッセージも明確に込められています。
文章も上手い。
星という裏側の世界の人間が出てきてのやりとりも、ハードボイルド小説でいけそうな歯切れです。
もう一冊か二冊、シリーズとして読みたいなという気もしました。
ラベル:小説