主人公はオンボロの四畳半に暮らす大学3回生。
2年前に薔薇色のキャンパスライフを夢見て入学したものの、女性や勉強その他もろもろ、さっぱりな生活を送っています。
小津という悪友や樋口という仙人の様な師匠(先輩)に引きずり回され、黒髪の乙女・明石さんとの仲も思うようになりません。
これもやはり映画サークル「みそぎ」に入ったせいなのか。
もし入学時に他のサークルに入っていれば薔薇色のキャンパスライフを謳歌できたのではないか。
主人公は苦悩(けっこう刺激的で楽しそうですが 笑)の大学生活を過ごすわけですが・・・・。
デビュー作「太陽の塔」に続いての第2作目ですが、やはり京都を舞台として大学生を描いています。
昔の書生さんのような研究者のようなやや大上段に構えたような文体、そんな文体で馬鹿馬鹿しいことをまじめに書くおかしさ。
そしてどうも二枚目になれない冴えない主人公。
そういったものがこの作者の持ち味ですね。
この作品は4つの章に分かれているのですが、それぞれ大学入学時に別の道を選択したらどうなったかというのが描かれています。
第一話なら主人公は「みそぎ」という映画サークルを選びます。
第二話では「弟子求ム」というようわからんビラに惹かれ、第三話では「ほんわか」という脱力系のソフトボールサークルに入り、最終話では「福猫飯店」という秘密機関に入ります。
大まかな流れは共通なのですが、当然それぞれ違うキャンパスライフが展開されるわけです。
特に最終話は四畳半の部屋から出られないという完全なSFです。
玄関から外に出ればそこにも同じ部屋が。
では窓から外に出てみるとやはりそこにも同じ部屋が。
「八十日間四畳半一周」というタイトルも馬鹿らしいやらなるほどやら。
真面目なようなふざけているような、どうも憎めない登場人物たちが織り成す青春物語。
まさしく「森見ワールド」と呼ぶべき独特の世界を読ませてくださる作家です。