冒頭で滋子は子宮がんの宣告を受けます。
そんな滋子の落ち込みを余所に、むしろ生き生きとして見える夫の宗像。
そして歌舞伎役者になることを夢見て滋子にわがままで負担をかける娘の美子。
重苦しい毎日の中で滋子は懸命に小説を書き、昔の恋人である柿沼と結ばれたりして励まされ癒されるのですが。
乳房を失い、子宮も失い、女としての機能を失いながらも柿沼を心の拠り所にして小説を書き続ける滋子。
愛のない夫との生活、自分の分身でありながらもひとりの女として歯向かってくる娘の美子、柿沼との逢瀬、小説にかける情熱。
まさに虹と修羅です。
しかし柿沼も死病に冒され世を去ります。
からっぽな心境になってしまう滋子・・・・。
これからもこの修羅な生活が続いていくのであろうことを示唆して小説は終ります。
作者はこれは私小説ではないと否定しておられるようですが、やはりご自身をモデルにしているであろうことは明らかです。
円地文学の柱ともいえる三部作ではないでしょうか。
ラベル:小説