主人公の柏原野々は厳しすぎる父と馬が合わず5年前に家を飛び出し、彼氏の家に転がり込んで同棲中の25歳。
天然石を扱うショップで働いています。
そんな神経質なほどに厳格だった父も亡くなったのですが、実は愛人がいたことが判明。
そのせいか母の様子もおかしくなってしまいました。
愛人と会った野々は父のことをいろいろと聞くのですが、「自分には暗い血が流れている」と漏らしたことがあったそうです。
「暗い血」とはどういう意味なのか。
野々は兄や妹と一緒に父の故郷である佐渡へ行き、父のルーツを探ります・・・・。
児童文学で数々の賞を受賞してこられた作者が書いた、大人の小説です。
そのあたり意識しておられるのでしょうか、いきなり性描写で始まります。
そして父の愛人問題にしても主人公の不感症問題にしても、扱っておられるのは性的なことなんですね。
しかしそれがテーマだというわけではありません。
厳格すぎた父が子供たちに与えた影響。
そうせざるを得なかった父のそれまでの人生。
父のルーツを探ることにより、今さらながらに父を知り、自分を知ることになります。
バラバラになっていた家族が父の死という出来事をきっかけに、あらためてしっかりと家族というものを認識するあたりが温かく爽やか。
微笑ましい小説でした。
ラベル:小説