藩主を亡くした又右衛門。
藩主にかわいがられ現在の地位を築いた又右衛門にとって、忠誠を示すための追腹は当然との認識があります。
しかし家老から追腹を禁じられます。
本来なら藩主を追って腹を切り忠誠を示すべきところ、又右衛門は生きざるを得ないのです。
当然周りの目は白くなります。
なんでいまだに腹を切らずに生きておるのかと。
そんな中、娘の婿が腹を切ります。
なんとかそれを阻止してほしいと娘に懇願されていたにもかかわらず。
娘は又右衛門に言います。
「ちくしょう」
そしてそんな又右衛門を不甲斐なく思っていた息子の五百次もやはり腹を切ります・・・・。
なんともやるせない話ですね。
武士の矜持と上からの禁令による葛藤。
そして個人的な思い。
それらが錯綜するわけですが、結果的にはなにもできなかった無力感が残るわけです。
その他の二編もやはり明るい話ではありません。
でもラストに微かな光がありますけども。
この作者の作品は初めて読みましたが、藤沢周平をもっと凛々しくシビアにした感じでしょうか。
他の作品もぜひ読んでいきたいです。
ラベル:時代小説