短編集。
表題作は暴力的な良人に捨てられ行く当てもなく、旅館「花霞」で働くことになった久代という女の話。
幽霊のように陰気な女です。
しかし「花霞」で働いているうちにだんだんと生気を取り戻してきます。
ある仕事休みの日、久代はおめかしをして出かけていくのですが、帰ってきたときにはスカーフに血を滲ませ両手にも包帯という痛ましい姿。
貸していた金を返してもらいに別れた良人に会いにいったのですが、ビール瓶で頭を殴られたとのこと。
しかしそんなことをされてもまた男のもとへ戻っていくのです・・・・。
けっこう典型的なパターンの小説ですね。
だめな男だとわかっているのですがどうにも別れられないという。
男の私にはよくわからない心理です。
表題作よりも他の作品に私はいいものがあったように思います。
中でも舞踏の世界を描いた「舞扇」と「芸術家の扇」がよかったです。
こういう世界はまさに芝木文学の骨頂という気がします。
ラベル:小説