2013年02月25日

「ダンシング・ヴァニティ」筒井康隆

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主人公の美術評論家の自宅の周りで喧嘩騒ぎがおこります。

「ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ」

妹が知らせにやってきます。

二階の窓から見てみると数人のやくざと体育会系の大学生たち。

騒ぎが収まったと思ったらまた妹がやってきます。

「ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ」

今度はやくざ同士の抗争です。

それが収まるとまた妹がやってきます。

「ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ」

相撲取り同士の争いです。

騒ぎが収まったと思ったら今度は死んだ父が現れて。

これがまた何度も繰り返され・・・・。

このようにコピー&ペーストでひたすら同じフレーズが繰り返され、しかし内容は微妙に変化していきます。

さすが筒井センセイというしかありません。

とんでもない小説を書かれましたね。

何度も微妙に違った話を繰り返しながら物語は進み、主人公の人生を描いていきます。

人生にはさまざまな分岐点があります。

それをコピー&ペーストで何度も分岐点に戻りながら、くどいほどにいろんな枝をなぞっているんですね。

分岐点ということでいえば、例えば森見登美彦の「四畳半神話大系」ではこれを章に分けて書かれました。

Aという選択肢をした場合の章、Bの選択肢をした場合の章というふうに。

もっとざっくりといえば佐藤正午の「Y」なんかも『あのとき違う行動を取っていれば・・・・』というような小説です。

しかしこの「ダンシング・ヴァニティ」は主人公が自分で道を選ぶのではなく、作者の手により主人公に降りかかってくるのです。

しかも章なんてありません。

次の行で唐突に別の人生が始まるのです。

夢を題材にしたと思われるシュールな描写、最近の筒井氏に見られる老いや死といったテーマ。

それに氏の実験的な小説の技巧が施されて成り立っています。

筒井文学のひとつの到達点ではないでしょうか。

笑いあり、最後はちょっとホロッとさせられたりもして。

ノーベル文学賞も村上春樹などではなく、筒井康隆を候補にしなさい。

絲山賞は受賞されましたけど。(笑)

現在筒井氏は78歳。

このバイタリティはすごいですね。

ぜひとも末永くこのような前人未踏の小説を書き続けてくださいますことを。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 03:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 『つ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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