短編集です。
2作が表題作となっています。
「パニック」はネズミが大繁殖するという話。
前兆を感じた主人公が警告したにも関わらず、周りは信用せず対応が後手に回ってしまいます・・・・。
「裸の王様」は芥川賞作品です。
絵画により抑圧された子供を解放してやろうとする絵の講師が主人公。
彼の教え子はどのような絵を描き、それは大人たちのあいだでどのように受け止められたのか・・・・。
「パニック」はタイトルほどパニック小説ではありません。
まあ純文学ですからね。
むしろ個と組織といった図式として私は読みましたけども。
「裸の王様」もそのようなところがありますね。
子供が渾身の絵を描くのですが、権威たちはそれを認めない。
他、収録されている「巨人と玩具」は広告に携わるサラリーマンの話。
これもまあなんといいますか、組織の中でうごめき飲み込まれていくサラリーマンの話ですよね。
「流亡記」にしても舞台は違いますが、やはり個と組織といえるでしょう。
中国を舞台にし、皇帝の絶対的な権力に飲みこまれ、長城建設に徒労する男の話。
どれも緻密で力のある小説との印象でした。
ラベル:小説