唐沢男爵の娘・瑠璃子は真珠のように美しい二十歳前の処女です。
杉野子爵の息子・直也と潔い交際をしています。
成金の荘田勝平の園遊会に招かれた二人は勝平がそばにいることに気付かず、成金の趣味の悪さを批判します。
二人の前に姿を現した勝平を前にしても、純粋で若い二人は金の力で事を運ぶような生き方を批判するのです。
侮辱された勝平は批判されたその金の力で瑠璃子の父を陥れ、直也との仲を引き裂き、瑠璃子を自分の妻にしてしまいます。
しかし瑠璃子はなんだかんだと理由を付け操を守ります。
勝平が事件に巻き込まれて死亡し、処女のまま未亡人となった瑠璃子。
サロンにいろんな男性を招き、女王のように振る舞い、男を弄ぶのですが・・・・。
この作品が書かれたのは大正9年。
読んでいて古臭く辛気臭く退屈するのではないかなどと思っていたのですが、なんのなんの、実に面白かった。
570ページほどをまったく中弛みすることなく読めました。
処女がどうのとか操を貫くとか今の時代からするとちょっと当てはまらない設定ではありますが、だからこそ逆に純粋で高貴に感じたりもします。
成金に初恋の男との仲を引き裂かれ、父が辱めを受け、その復讐のために敢えて結婚する瑠璃子。
そこまでは物語としてわからなくもないですが、他の男たち全てを敵と見做し、結果的に死に至らしめるほどの執念深さにはちょっと違和感がありました。
一人の男から受けた屈辱のためにそこまでするというのはちょっと強引ではないかと。
ですが瑠璃子というキャラがこの設定によって強烈に立っているのですね。
そんな瑠璃子はどのような結末を迎えるのか・・・・。
純愛小説であり、ミステリーでもあり、ひとりの女の生き様の小説でもありますね。
ラベル:小説