子供の頃から女性に興味を持つことができなかった『私』。
初めて“ひりつくような欲望”を感じたのは男性に対してでした。
しかも肥桶をかついで汚れた手ぬぐいで鉢巻をした汚穢屋(糞尿汲取人)です。
その後も軍隊の兵士たちの汗の匂いに惹かれたり、豊穣な腋毛の同級生に恋をしたり。
そしてサディスティックな死に対する憧れも持つようになります。
同性愛者であることを隠しつつカモフラージュ的にある女性と付き合うのですが、相手も周りも結婚を前提と認めるようになり、『私』は追い詰められ逃げ出します。
それでも虚勢を張り続ける『私』・・・・。
作者の自伝的な小説です。
同性愛という自身の性癖を肯定しつつも外部には隠し、世間体もあり女性と交際もするがやはり失敗に終わってしまう。
そんな苦悩を端正な文章で描いています。
その後の三島の言動を見ますと、結果論ですがこの作品にすでに将来を予見させるものが全部含まれていますね。
ボディビルやボクシングでの肉体鍛錬、自衛隊への体験入隊、映画での切腹シーン撮影。
すべてこの作品にその要素があります。
そして最期は軍服(楯の会の制服)を着ての自決。
しかし昔の作家はみんな“真剣”だったんだなぁと思います。
もちろん時代もありますが、三島みたいなことをやる作家なんて今後出てこないでしょ。
やればいいってもんじゃないですけどね。(笑)
ラベル:小説