2016年08月23日

「いっぽん桜」山本一力

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今年五十四歳の長兵衛は深川門前仲町の口入屋の番頭。

仕事ひと筋で娘にかまってやれず、せめて嫁ぐまでの数年、娘と存分に花見をしたいと庭に植えた一本の桜がある家に住んでいます。

ある日、長兵衛はあるじの井筒屋重右衛門に料亭に誘われます。

重右衛門は身を退いて息子の仙太郎に店を任せるというのです。

それどころか長兵衛も一緒に身を退いてほしいといわれます。

井筒屋をここまで大きくしたと自負する長兵衛にいきなり降って湧いた“定年”の話。

いや、悪い言い方をすれば解雇です。

娘の祝言を師走に控え、年齢的にもまだまだの自分がなぜ道連れに辞めさせられなければならないのか・・・・。

現代に置き換えれば企業の都合に左右されるサラリーマンの悲哀ですね。

井筒屋を辞めたあとの長兵衛はコネで魚卸の店に勤めるのですが、大店の番頭時代の習性が抜けきれず横柄な態度と頭の切り替えができない融通の無さで棒手振たちに総スカンをくらってしまいます。

いますねぇ、こういう人。(笑)

以前の会社でどれだけのことをしていたのかわかりませんが、新しい会社でやたらそれまでやってきたやり方を持ち出して皆を服従させようとする人。

他所の会社を追い出されて拾われた人間が何言ってやがんだ、てなものです。

もちろんそれだけで終わる山本作品ではありません。

表題作の他、3編収録。

「萩ゆれて」、「そこに、すいかずら」、「芒種のあさがお」とどれも花にちなんだタイトルが付けられています。

山本一力らしい人情味のある作品集です。

ラベル:時代小説
posted by たろちゃん at 00:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 『や』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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