「鍵」
夫は56歳の大学教授。
性的になことに関して体力的には衰えてきたのですが、精神的にはまだまだそれを追い求める欲求があります。
妻は年下の46歳。
性的な欲求や好奇心は女の盛りということで旺盛なのですが、恥じらいもあり夫の精神的な性欲を満たしてくれません。
夫は自分の願望を日記に書き、それを入れた引き出しの鍵をわざと落として妻に読ませようとします。
また妻も日記を書いており、互いに読まれるであろうことを意識しています。
相手は自分の日記を読んでいるのかいないのか。
どちらもそんなそぶりは表に出さず、水面下での駆け引きが始まります・・・・。
「瘋癲老人日記」
主人公は76歳の老人です。
こちらも日記形式で話が進んでいきます。
性的にはもう不能なのですが、やはり精神的にはまだまだ燃えるものがあります。
そんな老人の性欲は息子の嫁に向けられます・・・・。
どちらもカタカナと漢字で書かれており、かなり読みづらいです。
ですが思いのほかするすると読めたのは内容の面白さですね。
両作品とも性的な体力が衰えた男の話です。
しかし性欲というのは体力だけではありません。
いくつになっても精神的に疼き欲するものがあります。
そんな気持ちを日記に綴り、「鍵」では遠まわしに相手に伝えて反応を伺い、わざと若い男を妻に近づけたりして嫉妬にマゾヒズムな昂ぶりを感じています。
今でいうNTR(寝取られ)ですね。(笑)
「瘋癲老人日記」ではひたすら息子の嫁に尽くします。
自分の娘をないがしろにしてまで。
こちらは恋愛の要素もありますね。
「痴人の愛」でもそうでしたが、お気に入りの女に傅く悦びというんでしょうか。
これもマゾヒズムですよね。
もちろん「鍵」、「瘋癲老人日記」、どちらの作品も女性の足に対して尋常でないこだわりがあります。
さすがの足フェチ谷崎です。(笑)
いくつになっても異性への興味は尽きないんですねぇ。
それを耽美に艶かしく描いた作品です。