2020年03月02日

「グルメの食法」玉村豊男

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自他ともにグルメを任ずる人ならばこれくらいの基本的な食法など当然知っているであろう知識を、著者の私的解釈をまじえながら記したという本書。
ま、本音でもあり、皮肉でもあり、遊びでもあり、照れ隠しでもありましょう。
最初はやはりフランス料理について。
フランス料理の供し方の変遷ですね。
今でこそフランス料理というと優雅に一品ずつ出されるというイメージがありますが、昔はテーブルの上に一度にアホほどの料理が並べられたんですね。
なので温かい料理は冷め、冷たい料理は生ぬるくなり、テーブルの上はもうぐじゃぐじゃで。
多数の料理をテーブルに並べることにより、権力を誇示していたんですね。
料理だけでなく当然その大量の料理をサービスする人間もまたうじゃうじゃいたわけですから。
他、中国料理についても語られていますし、シルクロード近辺を旅してパスタの起源を考察したりもしておられます。
もちろん日本料理についても言及されており、生(ナマ)を異様に重要視する鮮度至上主義を指摘しておられます。
そして要約しますとこのようなことを言っておられます。
「はたしてこれは“進化”なのだろうか」と。
本来ならいろんな素材を組み合わせ、火を入れ、調味料で味付けし、素人にはどのように調理したのか想像もできないような複雑で深い味わいを生み出すのが料理人の腕の見せ所であるはずと。
フランス料理や中国料理はそうであると。
しかし鮮度至上主義が究極になったのが刺身で、これはもう料理技術云々の前に、いかにいい素材を仕入れるかが料理人の腕ということになってしまうと。
もちろんどんなジャンルの料理においても鮮度のいい質のいい素材を使うというのは大前提でしょう。
そして包丁の技術が味を左右するのも当然のことではありますが。
しかし「新鮮な素材を切って出すだけ」というのは紛れもない事実で、これは料理以前ではないかと。
私もそれはずっと思っていました。
まあ“料理”というものについての考え方の違いもあるのでしょうが。
そして鮮度至上主義が高じて極端に走ると姿造りなんてことになってしまう。
ついさっきまで生け簀で泳いでいた、まだピクピク動いている、なんてことを有り難がってしまう。
フランスと日本の違いについて、著者は面白い言葉を紹介しておられます。
フランスでは「女房とワインは古くなるほど味が出る」という言葉があるそうです。
それに対して日本では「女房とタタミは新しいほうがいい」と。
なるほど、すべてに当てはまるわけではありませんが、熟成を重視するフランス人と、とにかく鮮度、生をいちばんとする日本人。
どちらがいい悪いではなく、考え方の違いが見事に言い表されて面白いですね。
ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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