2020年03月20日

「切羽へ」井上荒野

CIMG3613.JPG

どことは書かれていませんが、南方にある炭鉱で栄えた離島。
そこでセイは小学校の養護教諭をしています。
夫の陽介は画家。
親しくしている老婆のしずかさんや無邪気な子供たちに囲まれ、地味ながらも平穏な日々です。
同僚の女教師月江は本土から定期的に愛人がやってくるような奔放な女性ですが。
そんな島に石和という男性教師が赴任してきます。
なぜか石和の存在が気になるセイ。
そんなセイの戸惑う心理を気づかぬふりで黙って見守る陽介。
月江は石和とデキてしまい、愛人の妻が乗り込んできて騒ぎとなり、しずかさんは亡くなり、セイの心も乱れます・・・・。
タイトルの「切羽」というのは炭鉱や鉱山の現場、掘進方向における掘削面のことだそうで、この作品では主人公がこのようなセリフを口にします。
「トンネルを掘っていくいちばん先を、切羽と言うとよ。トンネルが繋がってしまえば、切羽はなくなってしまうとばってん、掘り続けている間は、いつも、いちばん先が、切羽」。
昔セイの母親がトンネルの先で綺麗な十字架を拾い、父親がどうやってこのようなものを見つけてくるのかと訊いたときに、「切羽まで歩いていくとたい」と。
う~ん、「掘り続けている間は、いつも、いちばん先が、切羽」、「切羽まで歩いていくとたい」、この言葉に私はなんともやられましたね。
切羽というのはトンネルの先端なわけで。
掘っている間は目の前のそれがすべて。
でも貫通してしまうとそれはあっけなく崩壊して、その先になにがあるのかわからない。
しかしひたすら切羽を先に進めていく・・・・。
今回もやはり静けさの中に不穏な怖さを感じました。
いや、怖さじゃないですかね。
逆に温かな優しさかも。
それはセイの夫である陽介です。
彼は明らかにセイが石和に惹かれているのを感じている。
しかしなにも言わない。
じっと見守っている。
大きいですね。
でもちょっと怖い。(笑)
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『い』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください