21歳で妻子ある男性の子を宿してしまった多喜子。
酒乱の父には暴力を振るわれ、母親もそんな子供はどうにかしろと言われます。
相手の男にも伝えませんでしたし、また連絡の方法もありませんでした。
しかし多喜子は子供を産みます。
両親からは望まれない出産でしたが、産まれたら産まれたでやはり孫、母親は子供をかわいがります。
酒乱の父親は相変わらず多喜子に暴力をしますが。
世間体や子供の養育という現実の前に、多喜子は自分が無力であることを知らされます。
反発している母親に、ことあるごとに世話にならざるを得ません。
早く仕事を見つけてこの家を出てとは思うものの、そんな生易しくはない。
いろいろ仕事はやってみたものの、どれもうまくいかず。
やがて多喜子は造園業の仕事を見つけます。
男性限定の募集だったのですが、思い切って飛び込んで頭を下げて雇ってもらいます。
そこには障害児を持つ神林という男がいました・・・・。
この作品が世に出たのは1980年。
当時はこういう条件の女性は肩身が狭かったと思います。
そんな中で仕事を得、偏見にも耐え、駆け抜ける女性を描いています。
ただ私生児の母というだけではなく、神林という障害児の子供を持つ男を添えたのが津島佑子だなと。
過去にもやはり障害を持つ子供を扱った作品を書いておられますもので。
多喜子は子供を産んだあと、そば屋、化粧品のセールスと職を変わるのですが、造園業に落ち着きます。
ここからの多喜子がいいですね。
といいますか、タイトルもここからの描写に含まれていますし。
現在はシングルマザーなんて言葉で都合よく処理されてますけど、この時代はそうではなかった。
今とは時代も違った。
そんな中での女の懸命さ。
がっつりきました。