2020年09月04日

「大阪船場 おかみの才覚 「ごりょんさん」の日記を読む」荒木康代

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大阪といえば商売の町。
中でも昔は船場といえば商いの中心地でした。
誰もがここに店を出すことに憧れたといいます。
まあ今でいえば銀座に鮨屋やクラブを出すようなものなんでしょうか。
いつかは銀座へ、と。
大阪の商家では主人の妻は“ごりょんさん”と呼ばれました。
漢字で書くと“ご寮さん”。
ちなみに主人は“だんさん”ですね。
多くの女性が船場でごりょんさんと呼ばれることを夢見たようです。
さて、ごりょんさんというのはどのような役割を果たしてきたのか。
この本では大阪船場の商家に嫁いだ杉村久子という女性の日記を読みながら、ごりょんさんというのはどのような存在だったのか、当時の商家の日々というのはどのようなものだったのかを解明していきます・・・・。
現在はどこもまったくその土地ならではみたいな特色がなくなり、個性がないといいますか、のっぺりと標準化されて無個性になりました。
大阪船場でも昔ながらの商家なんて雰囲気の店はありません。
なので当然ごりょんさんなんて存在もなく。
主人は“だんさん”ではなく社長、奥さんが手伝っているとしたら専務でしょうか。(笑)
丁稚なんて言葉は死語。
風情ないです。
時代の流れとはいえ、なんだか味気ないですね。
しかしこの本、どんな人が読むんでしょ。
というか、どういう人に向けて書かれたんでしょうか。
商売人?
郷土史を研究している人?
船場のごりょんさんに興味を持ってこの本を手に取る人って、どのような人たちなんでしょう???
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2020年08月27日

「星やどりの声」朝井リョウ

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鎌倉を舞台にしていると思われる街。
「星やどり」という喫茶店を経営している早坂家。
母と三男三女の家族です。
ビーフシチューが名物の「星やどり」ですが、客は少なく経営は思わしくありません。
ですがその収入を頼りになんとかやってきた早坂家。
家族それぞれいろんな事情を抱えています。
ある日から毎日店に来ていた常連のブラウンおじいさんがぱったりと店に来なくなり、その頃から家族に歪みが生じてきます。
皆が抱えている問題も噴出してきて・・・・。
ロマンチックな家族小説です。
ちょっと言い回しが装飾的過ぎたり、仕掛けもベタ甘だったりしますが。
まあライトな青春小説として読めば高校生のキャラなんかはそれなりなのかなと。
亡き父親の存在が効いていますね。
というか作品の背骨になっています。
ただ章によって視点が変わり、効を奏している部分もあれば全体として散漫になっている印象もあります。
まあ家族の絆を描いているわけですが、よくも悪くもライトだなぁと。
ラベル:小説
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2020年07月10日

「剣客商売番外編 ないしょ ないしょ」池波正太郎

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越後は新発田の城下町で道場を営む一刀流の剣客、神谷弥十郎。
そこでお福は下女として働いていたのですが、弥十郎が何者かに暗殺されます。
主を失ったお福は下男の五平と共に江戸へ。
そこで三浦平四郎という七十に近い隠居の下で働くのですが、その平四郎もやはり殺され、一緒に江戸に出てきた五平までもが殺されてしまいます。
犯人はすべて同一人物、松永市九郎です。
お福は平四郎から手ほどきを受けていた手裏剣を使って、なんとか松永に一矢報いてやろうとするのですが・・・・。
剣客商売の番外編です。
しかし主役はあくまでお福であり、秋山小兵衛はほんの脇役です。
別に剣客商売の番外編としなくともこれだけで成り立つ話ですが、やはりそこは秋山小兵衛や町医者の小川宗哲、手下の弥七などのお馴染みの人物が登場することにより、剣客商売の世界にしてしまったほうが読者も物語に浸れるでしょう。
お福は最初の主である神谷弥十郎に何度も凌辱されるのですが、このエピソードがいまいちよくわかりません。
こんな話を書く必要があったのかなと。
特にそれが後の話に効いているわけでもないし。
むしろお福がその時のことを思い出して体を熱くしているなんて、そんなアホな。
オヤジの妄想ですよ、これ。(笑)
最後に仕えた倉田屋半七のキャラもよくわかりませんね。
初めてお福と出会った時のあの印象はなんだったのでしょうか。
倉田屋が裏のある人物だという演出なんでしょうけど。
そのあといきなり印象変わられてもね。
ま、物語としては波乱万丈な女の生涯を描いており、秋山小兵衛もいい感じで脇を固め、どうにかこうにか剣客商売シリーズにこじつけたかな、と。

ラベル:時代小説
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2020年06月24日

「赤瀬川原平の名画読本 鑑賞のポイントはどこか」赤瀬川原平

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絵画鑑賞って難しいのか簡単なのかよくわかりませんね。
作者の意図や技術的な分析となりますと当然それなりの知識や経験、目利きが必要となります。
しかしそんなことを知る必要なんかない、自分がいいと思った絵が名画だという理屈になりますとなんの前知識もいらないわけで。
で、鑑賞の入門書的な本なんか読みますとたいがい後者的なことが書かれていたりして私のような者など安心したりするわけですが、しかし知識はあったほうがいい的なことも書かれていたりして、結局はそっちかい、と思ったりもします。
まあ名画についての解説なんか読んだりしますと自分がまったく気付かなかったようなことが書かれていて、やはり専門家は違うわいと感心するのですが。
その絵が描かれた背景についても触れられたりしていますしね。
この本もそういう類の解説書です。
15人の画家、15作品を取り上げて著者が解説といいますか独自の分析をしておられます。
絵を見、文章を読み、また絵を見直し、なるほどなぁと感心。
なんの解説もなしにその絵を見てもたぶんそんなことには気づかなかっただろうし、やはり専門家の解説というのは必要だなと思います。
この著者が絶賛するのはゴッホ。
取り上げられている作品は『アルルの跳ね橋』です。
意外に思ったのがルノワール『ピアノによる少女たち』やアングル『泉』に対しての評価。
けっこうボロクソ。(笑)
私はルノワールの柔らかなタッチや色彩が好きなのですが、著者は「汚い」とまで言ってのけます。
アングルの作品に対してもまるでプラスチックのようで、「風俗営業の入口にぴったりの絵」だと。
言われてみればおっしゃる通りとも思えてきます。
まあこれはこれで著者の感性であり価値観なのでしょう。
しかしルノワールの絵を「汚い」と評価するというのもなかなか勇気のいることでしょうね。
目利きに自信がありませんと。
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2020年04月13日

「柳生薔薇剣」荒山徹

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秀吉の朝鮮出兵時に朝鮮から日本に渡ってきた人がたくさんいました。
うねもそのひとりです。
肥後・熊本藩で藩士の貴月主馬の妻として日本人になりきって平和な生活を営んでいたのですが、朝鮮からそのような人たちを連れ戻そうと使者がやってきます。
幕府は強制はしないという方針だったのですが、隈本藩は過剰反応し強制的に朝鮮人たちを帰国させる決定を下します。
もちろんうねもその対象です。
しかしうねには夫と3人の息子を残して今さらひどい仕打ちをしてきた朝鮮に戻る気などありません。
夫である主馬は脱藩してでもうねを守るため、鎌倉の駆け込み寺である東慶寺までうめを護送します。
ここに駆け込んでしまえば誰も手が出せません。
しかし主馬と3人の息子は追手に切られ、それでもうめは這う這うの体で東慶寺に駆け込むことができました。
それを偶然手助けしたのが柳生宗矩の娘で柳生十兵衛の姉である柳生矩香(のりか)。
ですがここからうねをめぐって凄まじい争いが始まります・・・・。
矩香って名前がもうね、これ藤原紀香が人気あったころですかね。(笑)
で、うねをめぐって将軍徳川家光とその父であり大御所である徳川秀忠の争奪戦が始まるわけです。
東慶寺の住持天秀尼は豊臣秀吉の孫娘である涼姫。
家光は以前から涼姫に想いを寄せており、東慶寺を守る、つまりうねを守る側になります。
矩香や父の柳生宗矩が付くのは家光側です。
秀忠側も魔剣使いや妖術使い、矩香が昔ほのかに想いを寄せていた剣客などを引っ張り出してきて、もう大騒ぎ。(笑)
山田風太郎どころじゃないですね、こりゃ。
しかしたかが朝鮮人女性ひとりをめぐってここまでやりますか。
死者数十人ですよ。
まあ朝鮮使節団のプライドなんかもあったりするんですけど。
でもただ荒唐無稽なだけではなく、説得力もあります。
強引ですが。
そうそう、この作者なんでこんなに朝鮮にこだわるんでしょう。
あと柳生とか。
いや、独特の世界観が実に面白いんですけどね。
ラベル:時代小説
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