2017年09月03日

「書店ガール4 パンと就活」碧野圭

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新興堂書店でアルバイトをしている高梨愛奈は就職活動を控えた大学生。
周りが積極的に就職活動している中、愛奈はいまいち気持ちがはっきりしません。
本は好きですが、このまま書店に就職したとして未来はあるのか。
一方、駅ビルの書店で働く宮崎彩加は書店員5年目です。
大学時代からこの店でアルバイトし、卒業後は契約社員として勤めています。
愛奈より4歳年上ですが友達として親しく付き合っています。
正社員への登用とともに、新しくオープンする七坪ほどの駅中書店の店長を任せられることになるのですが。
2人の今後は・・・・。
シリーズ第4弾。
これまでは西岡理子と小幡亜紀のコンビでしたが、今回からはその2人は若い人たちにとって憧れの存在となり、次世代というべき愛奈と彩加がメインとなっています。
愛奈の就活、そして彩加の書店員としての成長を柱に、パン屋の大田英司という男性との接点があります。
寂れた商店街で書店をしている彩加の叔母の店を、大田のパン屋と提携してブックカフェにしないかという話が持ち上がっているんですね。
最初は太田に対してあまりいい感情を持たない彩加ですが・・・・。
サブタイトルの「パンと就活」というのはここから来ているわけです。
いつもながら登場人物が悩み葛藤しつつ成長していくという大きな幹があります。
そして女性が働くことの意味、本への愛情といったしっかりとした枝。
それらを描きつつちらっと恋愛の要素も隠し味程度に加え、実在の作家の名前や作品を多数登場させ、上手く現実とシンクロさせて読み応えのあるエンターテイメントとなっています。
毎回ただエピソードを羅列するだけではなく、しっかりと物語自体が進歩しているのがいいですね。
ラベル:小説 本・書店
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2017年08月12日

「バカボンのパパよりバカなパパ」赤塚りえ子

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「天才バカボン」や「おそ松くん」などで知られるギャグマンガ家、故・赤塚不二夫。
日本のギャグマンガを変えたといってもいいその功績はあまりにも偉大です。
さて、そのような天才マンガ家のプライベートとはどのようなものだったのか。
一人娘の著者が貴重な写真を多数掲載しつつ綴った一冊です。
マンガ家としての赤塚不二夫の経歴を紹介しつつ、娘という立場から書かれた家族の記録。
いやまあその生き様は抱腹絶倒です。
作品を地で行くような日々の生活ですね。
とにかく他人を笑わせるのが好きだったんでしょう。
しかしバカなことをやりまくっておられましたが、実はすごくシャイな人。
とても純粋な人だったんだなというのが読んでいて伝わります。
だからあれほど皆に愛されたのでしょう。
周りには人が良く集まったようです。
ホームレスを自宅に集めて宴会したり。
再婚の記者会見で前妻も同席するなんて普通あり得ませんし。(笑)
離婚後も前の奥さんとの仲はよく、新しい奥さんと前の奥さんは友達のように付き合っていたようで。
そんなエピソードも赤塚不二夫という人柄をよく表していますし、またギャグマンガのようでもあります。
評論家や編集者から見た漫画家論ではなく、娘から見た父親・赤塚不二夫の素顔です。
タイトルも父への愛しさがこもっており、いいですね。
ラベル:漫画本
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2017年06月11日

「かけおちる」青山文平

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柳原藩執政の阿部重秀は農政の実務に強いいわゆる地方巧者。
門閥には連ならない生まれながらも重責を務めています。
片腕の中山藤兵衛、阿部家若党の啓吾、娘婿の長英らの助力を得ながら、藩財政を立て直すことに尽力しています。
そんな重秀ですが過去にある事情を持っており、いつまでもこのような立場に居るわけにはいかず、そろそろ身を引こうかと考えている矢先。
江戸にいる長英に異変があり、啓吾もまた重秀を裏切ることに・・・・。
タイトルの「かけおちる」はいわゆる男と女の駆け落ちですね。
これが重秀が過去に抱える問題であり、また現在においても大きく関わってくる問題となります。
男と女が駆け落ちる。
そこにはどのような事情があるのでしょう。
この作品においてその行為は決して自分たち本位の行為ではありません。
重秀は自分が何も見えていなかったことに気づき、自身の至らなさに気づかされるのです。
人を思う気持ちの健気さ、尊さ、献身さ。
そういうのがひしひしと伝わる作品でした。
ラベル:時代小説
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2017年06月05日

「好かれようとしない」朝倉かすみ

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恋愛に対して奥手でシャイな二宮風吹25歳。
旅行から帰ってきたものの、スーツケースの鍵が開きません。
大家さんの紹介で来てもらったのが鍵屋の国友哲治。
風吹は一目惚れします。
もう一度声を聞きたい、逢いたい、喉仏を見たい。
風吹は片思いに悶々とするのですが・・・・。
主人公風吹の庶民感がいいですね。
トレンディドラマ(いまや死語ですか 笑)に出てくるような、非現実な日常生活を演じているような女性ではありません。
鍵屋を待つあいだはずしたブラジャーの跡をごりごり掻いてみたり、鍵屋が来てからは息が酒臭くないか気にしてみたり、もう一度だけ穿いたら捨てるつもりだった肌色のパンツを部屋に干してあるのを焦って隠してみたり。
等身大(?)な女性です。
もう一度鍵屋に逢いたいがために、部屋の鍵を失くしたと嘘をついてみたり。
そんな男性に対してちょっと不器用で健気な女性がいかにして憧れの男とお近付きになるか。
「好かれようとしないことよ」と大家はいいます。
主人公の恋愛以外にも親友の恋愛やダンス教室の講師とのエピソードが絡み、それがこの内容を小説としています。
なんだかんだありつつも、わりと爽やかな恋愛小説かなという印象です。
で、この作者って文章の言い回しに独特の面白さがあるんですよね。
これはやはり言葉のセンスであり、この作者の強い魅力だと思います。
ラベル:小説
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2017年05月28日

「女子をこじらせて」雨宮まみ

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「女子をこじらせ」てしまい、気が付けばAVライターになっていた著者。
はて、女子をこじらせてしまうというのはどういうことなのか。
こじらせてしまったという著者はこれまでにどのような人生を過ごしてきたのか・・・・。
「こじらせ女子」という言葉は流行語大賞にもノミネートされたそうですね。
そういうのに疎い私はまったく知りませんでしたが。
見た目決してかわいくない、なので男に縁がない、でも性欲はしっかりとあるので頭の中はエロい妄想だらけ。
青春を満喫している人たちを羨ましく思うものの、自分はそのようにはなれない。
自分なんて所詮・・・・というコンプレックスの塊です。
う~ん、それを女として「こじらせてしまった」と表現しておられるわけですが、そういう人は多いんじゃないですかねぇ。
すべてとは言えません。
異性にモテて楽しんでいる人も実際にいるわけですし。
でも私もそうですけど決して異性に縁があったわけでなく、妄想な日々を過ごしてました。
(現在もですが 笑)
周りの人を見てもそんなにウハウハしてませんでした。
そしてモテるモテないだけでなく、自分の存在感や価値観というものもやはり意識します。
自分は世間に対していったい何ができるのだろう、どの程度の存在でどれだけの価値があるのだろう。
実は何ほどの者でもないんですよね。
私は著者の境遇や経験というのは別に特殊なものではないと思います。
むしろ普通じゃないでしょうか。
同じような人は男女を問わずいっぱいいると思います。
それを赤裸々に語り、「女子をこじらせて」という言葉にもっていったのが著者のセンス。
(編集者がつけたのかもしれませんが)
本人にとってはすごくシビアな問題であるはずですが、コミカルな印象のタイトルと文章で成功していると思います。
この本を発表後もいろいろとご活躍されていましたが、40歳の若さで逝去。
何もそんなに生き急がなくとも。
とことん自分を突き詰めておられたんでしょうか・・・・。
ラベル:エッセイ
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