2020年03月20日

「切羽へ」井上荒野

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どことは書かれていませんが、南方にある炭鉱で栄えた離島。
そこでセイは小学校の養護教諭をしています。
夫の陽介は画家。
親しくしている老婆のしずかさんや無邪気な子供たちに囲まれ、地味ながらも平穏な日々です。
同僚の女教師月江は本土から定期的に愛人がやってくるような奔放な女性ですが。
そんな島に石和という男性教師が赴任してきます。
なぜか石和の存在が気になるセイ。
そんなセイの戸惑う心理を気づかぬふりで黙って見守る陽介。
月江は石和とデキてしまい、愛人の妻が乗り込んできて騒ぎとなり、しずかさんは亡くなり、セイの心も乱れます・・・・。
タイトルの「切羽」というのは炭鉱や鉱山の現場、掘進方向における掘削面のことだそうで、この作品では主人公がこのようなセリフを口にします。
「トンネルを掘っていくいちばん先を、切羽と言うとよ。トンネルが繋がってしまえば、切羽はなくなってしまうとばってん、掘り続けている間は、いつも、いちばん先が、切羽」。
昔セイの母親がトンネルの先で綺麗な十字架を拾い、父親がどうやってこのようなものを見つけてくるのかと訊いたときに、「切羽まで歩いていくとたい」と。
う~ん、「掘り続けている間は、いつも、いちばん先が、切羽」、「切羽まで歩いていくとたい」、この言葉に私はなんともやられましたね。
切羽というのはトンネルの先端なわけで。
掘っている間は目の前のそれがすべて。
でも貫通してしまうとそれはあっけなく崩壊して、その先になにがあるのかわからない。
しかしひたすら切羽を先に進めていく・・・・。
今回もやはり静けさの中に不穏な怖さを感じました。
いや、怖さじゃないですかね。
逆に温かな優しさかも。
それはセイの夫である陽介です。
彼は明らかにセイが石和に惹かれているのを感じている。
しかしなにも言わない。
じっと見守っている。
大きいですね。
でもちょっと怖い。(笑)
ラベル:小説
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2020年02月15日

「最終増補版 餃子の王将社長射殺事件」一橋文哉

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2013年、『餃子の王将』の社長が射殺されるというショッキングな事件がありました。
いまだに事件は解決していません。
犯人は誰なのか、どのような理由なのか・・・・。
事件から6年以上ですか。
もう話題にもならなくなりました。
『餃子の王将』という大きな会社の社長が射殺されるだなんて、どのような事情があったのでしょう。
本書を読みますと、いろんな理由や犯人が推測されます。
中国への進出。
暴力団、中国マフィアも絡んでいます。
複雑な事情があるのですが、これといって決め手はありません。
いまだに犯人はわかりませんし、わからない以上その動機も不明です。
この本が文庫化されて最終章が追加されたのは平成28年。
その時点で「迷宮入りの匂いが漂い始める中、水面下の深いところで何かが動き出す兆候が窺える」とあります。
しかしそれから3年。
やはり事件は解決していません。
なんなんでしょうか。
非常に不気味で怖い事件ですね。
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2020年02月07日

「変わる家族 変わる食卓 真実に破壊されるマーケティング常識」岩村暢子

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1960年以降に生まれた、子供を持つ主婦を対象に食卓のアンケートを実施。
3段階に分けたアンケートです。
まずは筆記。
食事作りや食生活について。
第2段階では1日3食分、1週間連続で毎日の食卓の記録と写真を提出してもらいます。
そして第3段階では第1段階と第2段階の結果を突き合わせて分析し、面接で詳細を問います。
予想通り最初のアンケートと実態は思いっきりかけ離れています。
アンケートではできるだけ手作りしている、野菜をたっぷりと取り入れているなど聞こえのいい回答なのですが、実態はほとんどコンビニなどの出来合いや冷凍食品、ファーストフード、そして野菜なんてごくわずか。
というか、その前に料理自体していない。
以前に読んだ著作も同じ内容なのですが、もうほんと読んでいてこれほど腹が立ってストレスが溜まる本もないでしょう。(笑)
主婦たちの言い訳の口の減らなさといったら。
仕事で遅くなったので夕食はコンビニのお惣菜で済ませた、って短時間パートで夕方4時上がりだったりします。
昼間は忙しかったので夕食を作る時間がなかった、ってママ友とランチでだべってただけだったりします。
わたしは朝が弱い人なので朝食は作りませんとか。
主人も子供も勝手に好きなものを食べてますとか。
料理を作るにしても栄養とかバランスとかまったく考えていない。
そもそも母親に料理を教わっていないので作れない。
それをまったく悪びれない。
なんなんでしょうか、この人たちは。
まさしく“豊かな国ニッポン”の弊害ですよね。
これを読みますと、食生活に限らずですが、アンケートなどというものはなんのアテにもならないということに気づかされます。
アンケートの回答なんて上辺だけの体裁のいい理想論です。
実態はまったく別。
なのでメーカーがアンケートを信用して商品開発なんかすると、とんでもない失敗をしてしまったりするんですね。
上辺の回答を鵜呑みにしてはいけません。
さて、著者はあとがきに書いておられます。
これは現在の主婦の実態を暴いて糾弾する本ではないと。
そう、著者は決してそのような主婦たちを批判しておられません。
しかし耳が痛いというか胸が痛いというか、心当たりのある人たちからは批判の声があるようです。
こいつらどこまでふてぶてしいのか。(笑)
しかし食糧面でも健康面でも、このしっぺ返しは必ずやってきます。
間違いなしに。
ラベル:グルメ本
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2019年12月25日

「はじめての恋ではないけれど」伊東悠香

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相澤奈々はまもなく25歳になる平凡なOL。
ですが同じ職場に彼氏の佐々木涼もいるし誕生日には指輪も買ってもらって、平凡ながらも幸せな日々です。
そんなある日、職場に年下の女子が途中入社してきます。
20歳の江藤マユリ。
最初は後輩としてかわいがっていた奈々ですが、男性社員に気のあるそぶりをして弄ぶタイプの女だということがわかってきて複雑な心境に。
自分とは無関係な男性にちょっかいを出しているうちはよかったのですが、なんと彼氏である涼にも接近していきます。
そしてついには涼を奪われてしまうのです。
精神的にもボロボロになってしまった奈々が逃げ口として求めた相手が、仕事に厳しく冷たい雰囲気の上司、樋口恵介でした。
奈々は恵介と心がない体だけの関係になります・・・・。
若くてキャピキャピした自分より若い女。
しかも男に気があるようなそぶりをするものだから男受けがいい。
同性からして思いっきり嫌な女ですよね。
そんなのに彼氏を取られたら、そりゃ精神的にダウンするでしょう。(笑)
そういう下地を作っておいて、上司と関係を・・・・というのはベタではありますが、作者もまあちゃんと辻褄は考えておられるのだなと。
いや、このエタニティのシリーズ、そんなの考えずにいきあたりばったりの脳内妄想で書いておられるような作家さんもいらっしゃいますので。(笑)
エッチの描写に関しましては、ヒロインがけっこう積極的なのがいいですね。
というのは、現実の男女の付き合いにおいて女性はいつも男性の誘いを待っている、なんてことはないわけですし。
付き合っていれば女性のほうからアプローチすることも当然あるわけで。
そのあたりは積極的というより、むしろ自然だなと思いました。
本編の他、2編の後日譚があります。
「Je te veux」という編にはちょっとホロッとさせられたりもしました。
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2019年11月25日

「性人伝」いその・えいたろう

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“性”について極めた10人の男性へのインタビューです。
本妻、妾、合わせて15人の女性と同時進行で“性活”する男性。
84歳で週2回とか。
女性の汚れ下着を収集し、その数およそ1200枚という人もいらっしゃいます。
といっても決して下着泥棒で集めたのではなく、街中で声を掛けて貰ったといいますから、むしろその交渉術のほうがすごいのでは。(笑)
スワッピング1000回以上のご夫婦なんてのも登場します・・・・。
いやしかし。
どんな世界にも達人といいますか、その道を極めている人というのはいるのですねぇ。
私もスケベにおいては相当なものと自負しておりますが(恥)、こんな人たちを見せられたら。
性欲と双璧である食欲の場合、それを自慢する人は老若男女数多い。
グルメだ食通だと皆誇らしげです。
しかしそんな人たちも“性”に関しては口をつぐみます。
世間では“食”は陽であり“性”は陰という認識でしょう。
“性”について公に語るのははしたないと。
この本に登場する人たちはそんな陰の趣味を堂々と恥じることなく実践しておられる。
いや、趣味ではなくライフワークであり人生そのものですね。
まことにあっぱれです。
着飾って高級なレストランで食事している男女も、いざ密室に二人きりとなると本能むき出しで性欲を堪能しています。
しかし日常ではそんなことしてませんというような顔をし、このような人たちの性癖に顔をしかめたりしてはいないでしょうか。
同じですよ、食を語るのも性を語るのも。
世の中に食通がいるように、性通がいてもいいじゃないか。(笑)
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