2020年09月14日

「磁極反転の日」伊与原新

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東京の夜空に真っ赤なオーロラが。
いったいなにが起こっているのか。
なんと地球のN極とS極が反転し始めているのです。
日々磁気が弱まっていくため遮られることのない宇宙線が降り注ぎ、人々は体にどのような影響があるのかと不安を募らせます。
携帯電話もつながらない事態が増え、電車の交通システムなどにも不具合が発生し始めます。
そして10月の東京に雪が降るような寒冷化。
そんな中、都内の病院から次々と妊婦が失踪しているという話も出始めて・・・・。
地球のN極とS極がひっくり返るという荒唐無稽な設定のSF小説です。
と思ったら荒唐無稽でもなんでもなく、実際過去に何度も磁極反転という現象は起こっているのですね。
初めて知りました。
そのようなことになったとき、我々人類はどのように反応し、対応するのか。
そして自然や人間の体にどのような影響を与えるのか。
この小説はもちろんフィクションですが、書かれていることについては実際に起きる可能性が指摘されていることと専門家でもある作者はあとがきに書いておられます。
磁気というのは空気と同じように普段意識することはないのですが、この地球上で生物が生きていくためには必須であるということも解説に書かれています
浅田柊という女性ライターを主人公にし、地磁気問題を追う中で妊婦失踪という事件にも出くわす。
SF小説パニック小説にミステリーの要素も加えられて、読者の興味を引っ張ります。
個人的には恋愛の要素を盛り込まなかったこともよかったですね。
こういうのって主人公の言動に最初は反発していた人物が登場して、しかし徐々にお互い理解して惹かれあってみたいな設定を盛り込みがちです。
そんなクサイ話がなかったのがいい。
パニック小説としてもこのような状況で怪しげな団体が登場するのはパターンではありますが、変なリーダーに洗脳される人たちがいたり妊婦を絡ませているのが庶民の弱みを上手く突いています。
妊婦はお腹の赤ちゃんのことを考えると理性よりも感情に走るかもしれない。
まあそんなこんなで、なるほどと思えるシミュレーション小説でもありますね。
ラベル:小説
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2020年08月21日

「乙女のままじゃいられない!」石田累

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坂谷由南は少女漫画家。
昔はヒット作を出して一世を風靡したものの、いまはやや落ち目。
「少女漫画の限界は、べろ入れなしのキスまでです!」というポリシーを持っているのですが、そのせいか作風が時代に合わなくなっているようです。
ある日、漫画誌の企画で読者のラブロマンスを漫画にというオークションの企画があり、名乗りを上げたのが現在飛ぶ鳥落とす勢いのIT企業社長。
5000万円もの大金でその権利を買い取ります。
実はその社長というのが過去に由南の人生に汚点を付けた男、篠原柊哉でした。
柊哉は「キスシーンは3回以上、ベッドシーンは最低でも2回入れること」という条件を出します。
断わったものの話はどんどんと進んでしまい、由南は描かざるを得なくなります。
しかしネーム(下書き前のラフな原稿)を描いても描いても柊哉は納得せず、ひたすらボツ。
やがて「大人の恋愛を教えてやる」と言い出して・・・・。
いやあ、なかなか読ませられましたね。
感動もしました。
エッチがウリのこのエタニティシリーズなんですが、エッチ度は低めです。
後半にちょこっとあるくらい。
その分というわけではありませんが、なかなかしっかりとストーリーが読ませます。
由南が最後までひたすらトラウマを引きずっているのがいい。
これ最初からいきなり手のひら返したように柊哉になびいてしまっては興ざめです。
疑心暗鬼ながらもだんだんと由南の心がほどけていくのがよかった。
満足の読後感でした。
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2020年08月10日

「女たちよ!」伊丹十三

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「ヨーロッパ退屈日記」でエッセイストとしても鮮烈に才能を発揮した著者。
この本はエッセイ第2弾ということになります。
内容としましては前作と大きく違うわけではなく。
時代のせいもあるでしょう、まだ海外の事情について何もしらない一般の日本人を啓蒙(?)しておられます。
本物はそうじゃないんだよ、本物というのはこういうものなんだよ、と。
ただ今回はけっこう食べ物についての記述が多かったですね。
さすが食通の著者です。
このような知識やこだわりが後に映画「たんぽぽ」という名作につながるのだなぁと思いました。
で、なんでタイトルが「女たちよ!」なのかと。
これ、うるさい女性がケチつけてきそうですよね。(笑)
喧嘩売っとんのかと。
決して女性に物申すという内容ではないのですが、時代もありましてそういう内容もあるにはあります。
でもむしろ女性たちに対して目覚めよというメッセージがあります。(あるかな?)
本書で著者は偽物を否定し、本物を知れと主張しておられます。
これは前作から一貫していますね。
著者のこだわりといいますかダンディズムといいますか。
当時このようなエッセイは画期的だったようですが、先見の明はさすがだと思います。
文体にしろ内容にしろ。
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2020年07月25日

「フレンチの王道 シェ・イノの流儀」井上旭 聞き手神山典士

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日本においてのフランス料理。
いまやほんと根付きましたよねぇ。
どこの街でもフランス料理の看板を挙げた店があります。
ですが昔は当然そんなことはなく、フランス料理といえばホテルのレストランだけでした。
しかも今からすればフランス料理というよりも洋食というレベルです。
そんな状況の中、本物のフランス料理を学ぶために、それこそ決死の覚悟でフランスに渡った料理人たちがいました。
その中のひとり、井上旭。
東京京橋の『シェ・イノ』のオーナーシェフです。
『ラセール』や『マキシム』といったいろいろな名店で修業するのですが、『トロワグロ』のジャン・トロワグロを師と仰ぎます。
ジャン・トロワグロといえば言わずと知れた名シェフ。
ソースの神様とまで言われた人です。
井上氏はジャンのルセットだけではなく、その動き、振る舞いを映像で頭に刻み込んだといいます。
「どのタイミングでポルト酒をどれくらい入れるのか。コニャックはどこでどれだけ振るのか。白ワインは何をどれくらい煮詰めればいいのか」
映像で身体に染み込ませたといいます。
なので井上氏の料理はソースに重点を置いたクラシック。
王道のフランス料理です。
現在においては賛否あるかもしれませんが、氏の言う「いつからソースは泡だらけになったのか」という言葉には賛成。
軽さを求める現在においてそういうのはもちろんありでしょうが、猫も杓子もの感があります。
とくにスペインの『エル・ブリ』が注目を浴びてからは模範が雨後の筍のごとく現れましたもんね。
なんじゃこれは、といった料理。
最初にやったフェラン・アドリアは偉い。
でも流行に乗って真似した人たちはカッコ悪い。
クラシックな料理を受け継ぐというのとは意味が違いますから。
ブイヨンやコンソメも既製品を使っている店が多いという昨今。
このようなクラシックにこだわる店やシェフは貴重です。
ラベル:グルメ本
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2020年06月20日

「君が好きだから」井上美珠

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美佳は29歳。
翻訳家兼小説家です。
現在独身ですのでやはり30歳を前にしてちょっと焦っています。
そんなところに突如お見合いの話が持ち上がります。
相手の紫峰は少し年上で長身でかっこよく、職業はSP。
自分とはまったく不釣り合いな相手だと思っていたのですが、なんと即プロポーズされます。
あっという間に結婚となるのですが・・・・。
このエタニティシリーズには珍しく、最初から結婚しているという設定です。
普通は出逢って付き合ってやがて結婚でハッピーエンド。
番外編としていまだラブラブな新婚生活が描かれていたりするんですけどね。
これはもういきなり夫婦。
それまでのいきさつは紹介されてますけど。
美人でもなくスタイルもよくない主人公に、なぜかカッコイイ男性がベタボレで。
まあ女性の理想を作品内で実現しておられます。
ちょっと話の作り方が雑だなとは思いましたが、主人公の美佳も夫の紫峰もひたすら相手に懸命で、細かいことはどうでもいいかと。(笑)
読んでいてそんな気分になってしまいました。
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