2017年12月20日

「剣客商売 浮沈」池波正太郎

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シリーズ第16弾。
いよいよ最終巻となりました。
26年前に門弟である滝久蔵の敵討ちに立ち会った小兵衛。
相手の助太刀だった山崎勘助と死闘を演じました。
ある日、小兵衛は蕎麦屋で見覚えのある浪人を見かけます。
滝です。
敵討ちから数年後に音信の絶えた滝でしたが、蕎麦屋で絡んで店主につまみ出されるほど落ちぶれていました。
その直後小兵衛は山崎の子息と出会います。
父の命を奪ったのは自分だと伝えるべきなのか・・・・。
13作目の「剣客商売 波紋」あたりからですかね、小兵衛の老いが感じられるようになってきたのは。
そのあたりから作者もこのシリーズに幕を下ろすことを考えていたのかもしれませんが、今作ではやけにバタバタと畳んでしまった感があります。
そして小兵衛が何歳まで生きただの、それより先におはるや弥七が逝ってしまっただの、そんな野暮なことをなぜわざわざ書くのか。
未来のことまで書かなくてもいいではないか。
先のことは読者の頭の中で綴ればいいんです。
そうやって作者が物語の中にときどきしゃしゃり出てくるのがどうも好きになれないんですよね。
せっかくの最終巻でありながら大治郎も三冬もあまり出てきませんし、孫の小太郎もどこへやら。
今回は滝、山崎、そして金貸しの平松多四郎と息子の伊太郎の話も絡んで同時進行していくのですが、ちょっと欲張りすぎたかなという気もします。
いまいちまとめ切れていないように思えました。
解説では常盤新平氏が大きな間違いをしておられますし。
せっかく16作も続いたシリーズなのに、最後はどうもしっくりしませんでした。
このあとは番外編の2作を楽しみに読んでみます。
ラベル:時代小説
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2017年11月12日

「ばかもの」絲山秋子

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ヒデは大学生。
バイト先のスーパーマーケットで知り合った30歳に近いパートの額子と付き合っていました。
ですが21歳の誕生日を2週間後に控えた日、夜の公園で木に縛り付けられ、パンツを膝までおろされてフェラチオされ、発射する寸前に「結婚するんだ、私」と額子に去っていかれます。
情けない姿で木に縛られたまま捨てられたヒデ。
やがて大学を卒業し、家電量販店に就職もします。
翔子という彼女もできて休みの日は彼女のアパートに入り浸り。
結婚も考える付き合いですが、いつの間にかヒデはアルコール依存症になっており、翔子に暴力を振るうようになります。
会社も辞め、翔子にも去られ、飲酒運転で事故を起こし、ついには入院。
もうボロボロです。
退院したあと約10年ぶりに額子と再会するのですが・・・・。
額子を失い、仕事を失い、新しい恋人も失い、友人も失い。
心も体もボロボロになったヒデですが、10年ぶりに会った額子もまた大きなものを失っていました。
そんな2人の喪失と再生の物語です。
どん底に落ちて絶望を目の当たりにし、しかし再会によってようやくじんわりと先が見え始めます。
この喪失と再生というのは他の絲山作品にも共通して感じられるように思います。
そして男女の距離感がまた絶妙なんですよね。
ほんわかと心が温まるような。
例えば翔子という新しい彼女は恋人としてとても理想的な女性です。
私は額子よりも翔子のほうがずっといい。(笑)
でも絲山作品においては翔子ではだめなんですね。
やはり額子のような女性であり、このあたりが絲山作品の魅力でしょう。
ラベル:小説
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2017年10月01日

「ロスジェネの逆襲」池井戸潤

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半沢直樹シリーズ第3弾。
東京中央銀行から子会社の東京セントラル証券に出向(左遷)になった半沢。
電脳雑伎集団というIT企業がライバル会社の東京スパイラルという会社を買収したいので、アドバイザーになってほしいという依頼を受けます。
半沢は乗り気ではなかったものの、部下で大きな仕事にやる気満々の諸田にチームを組ませて引き受けることにします。
ところが親会社である東京中央銀行の証券営業部がその仕事を横取りするのです。
いくら親会社とはいえなんの仁義もなく仕事をかっさらうなんて非常識にもほどがある。
誰かが情報を銀行側にリークしたのではないか。
半沢の部下たちは憤ります。
「やられたら、倍返しだ」
半沢の反撃が始まります・・・・。
「バブル入行組」「花のバブル組」ときまして、第3弾は「ロスジェネ」です。
起承転結でいいましたらまさに転ですね。
まあパターンとしましては従来通り。
コケにされた半沢があくどい客や上司に起死回生の一発逆転をくらわせるという内容です。
水戸黄門の印籠や遠山の金さんの桜吹雪のごとく、最後に溜飲を下げるわけですね。(笑)
ですがそれまでの展開は決して単純ではなく、山あり谷あり、実にドキドキハラハラと読ませてくれます。
このあたりはさすがの池井戸潤、読み応えじゅうぶん。
今回は残念ながら半沢の妻、花が出てきませんでした。
名前通りまさしくストーリーに花を添えるような、清涼感のある存在なのですが。
それはともかく、いつもながらカタルシスを味わえる作品でした。
ラベル:小説
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2017年07月29日

「新宿駅最後の小さなお店ベルク」井野朋也

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JR新宿駅東口改札から徒歩15秒の店「ベルク」。
たった15坪のビア&カフェです。
そんな小さな店に毎日平均して1500人ものお客さんがやってくるとか。
ビルから立ち退きを要求されても拒み続け、1ヶ月ほどで5000人ほどの署名を集め、生き残り続けています。
セルフサービスでカウンターは立ち飲み。
なぜそのような店が長年愛され続けているのか・・・・。
個人店が生き残っていくためにどのような創意工夫をしているのか。
チェーン店のような資本力はありませんが、しかし個人店だからこそできる経営というのもあるでしょう。
値段や商品の魅力はもちろんですが、でもやはり人なんでしょうね。
店と客といっても結局は人と人です。
店員はお客さんに喜んでもらうために一生懸命工夫し努力する。
その思いがお客さんに伝わりお気に入りになり何度も訪れるようになる。
言葉でいうほど簡単なことではないでしょうが、結局はそういうことなんでしょう。
エッセイとして面白く、ビジネス書としても同業者の参考になるのではないでしょうか。
ラベル:グルメ本
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2017年07月11日

「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎

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4編収録されています。
売れないロックバンドがレコーディングしたある1曲。
いい曲なんだから誰かに届けと願いを込めて。
それがいったいどのように誰かの人生に関わっていくのか・・・・。(フィッシュストーリー)
風が吹けば桶屋が儲かる的な話といいますか(笑)、なるほどなぁと。
自分の気付かないところで、意外な形で誰かの人生に影響を与えているんですね。
最後に収められている「ポテチ」なんかベタな話ではありますが、ちょっと泣かせられました。
タイトルの意味が憎い。
いつもながら伏線の張り方が上手く感心させられます。
また、他の作品にも出てくるお馴染みの黒澤というキャラがいい味を出しています。
ラベル:小説
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