2018年02月24日

「本にだって雄と雌があります」小田雅久仁

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深井與次郎曰く、「あんまり知られてはおらんが、書物にも雄と雌がある。であるからには理の当然、人目を忍んで逢瀬を重ね、ときには書物の身空でページをからめて房事にも励もうし、果ては跡継ぎをもこしらえる・・・・」
與次郎の孫、博は小学校4年生の夏、初めて深井家の屋敷に1人で泊まります。
そのとき、まさにその事実を目の当たりにするのです。
そして大人になり、祖父與次郎の日記から與次郎とその妻ミキがどのように出会い、どのような人生を送り、どのように本と関わってきたのか、深井家にはどのような歴史があったのか、またどのような事実が隠されていたのか。
博はそれを解き明かしつつ、息子の恵太郎に語って聞かせます・・・・。
こりゃまたなんとも壮大な法螺話ですね。
実在する人物の名前も散りばめたりして、なんだか威厳のある本当のような噓の話になっています。
私的には與次郎とミキの出会いあたりが面白かった。
ちょっと森見登美彦的な雰囲気も感じたりして。
本がまるで生き物のように扱われているのですが、これが人間みたいに喋ってしまってはマンガです。
さすがにそのあたりはきっちりと線引きしておられますね。
ファンタジーといいますか、伝奇ロマンといいますか。
どういえばいいのでしょう、本を愛する物語であり、與次郎とミキの夫婦愛の物語であり、深井家の歴史の話であり・・・・。
なんともいえない雰囲気に浸れる作品です。
ラベル:小説
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2017年12月24日

「東海道 居酒屋五十三次」太田和彦 画=村松誠

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弥次喜多になぞらえて著者とイラストレーターの村松誠氏が東海道の居酒屋を飲み歩くエッセイです。
こういうテーマで飲み歩くのもいいですねぇ。
漠然と飲み屋をはしごするよりも風情があるじゃないですか。
東海道五十三次といえば思い浮かべるのがやはり歌川広重。
昔は安藤広重とも呼ばれていましたが、今は歌川広重が定着しているようですね。
広重の浮世絵に想いをを重ねつつ、それぞれの宿で酒を楽しむ。
紹介されている店はほぼ飛び込みのよう(?)です。
このようなぶらり旅的な飲み歩き、ぜひやってみたいものです。
でもお二人の移動は当然電車だったんでしょうね。(笑)
各章に村松氏のイラストが添えられているのですが、村松誠といえば『ビッグコミックオリジナル』の表紙のイメージが私にはあります。
ほんわりと柔らかく暖かな絵です。
なのでこのような絵を見るのはとても新鮮でした。
文中に『どこの店も、もう暖簾が入っていた』という記述があるのですが、『暖簾が入る』という表現は初めて見ましたね。
普通は『暖簾が出ていた』ですけどね。
このような表現があるのか著者の造語なのか。
『提灯に火が入る』というのはありますけども。
ところで太田和彦氏と村松誠氏って顔が似ているように思うのですが、どうでしょうか。(笑)
ラベル:グルメ本
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2017年12月06日

「無敵のラーメン論」大崎裕史

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ラーメンについて網羅した一冊です。
大きくは第一部と第二部に分かれており、第一部は「ラーメンとはなにか」。
ダシとタレ、麺、具、東京ラーメンの系列、それぞれ章を割いて全国各地のラーメン店を紹介しつつ解説しておられます。
第二部は「ラーメンの日本地図」。
5年間で回った北海道から九州まで、各地の地域による特色を紹介。
いまや国民食ともいえるラーメンですが、これほど地域や店による違いのある料理は他にないでしょう。
この本ではなぜラーメンは人気があるのかということについては分析しておられませんが、そんな多彩さも人気の要因でしょうね。
そして値段と入りやすさ。
本格的な日本料理やフランス料理となるとそうそう気軽に足を運べるものではありません。
金額も1回の訪問で万単位となりますし、やはり予約を入れてそれなりの恰好をしてということになります。
普段着でぶらりと訪れるというわけにはなかなかいきません。
その点ラーメン店なら通りすがりにぶらっと入れます。
金額も千円でじゅうぶんお釣りが来ますしね。
中には店をはしごする猛者もいます。
そのあたりの気軽さがやはり人気なのでしょうし、ラーメンについて語る人たちが他の料理に比べて圧倒的に多い理由でもあるでしょう。
いまや誰もがラーメン評論家です。
まあそれよりなにより、やはり美味しいというのが一番の理由でしょうけど。
無限のバラエティがあって安くて美味しい。
とにかく店によって違いがあって飽きずに楽しめる。
そんなラーメンという料理に魅せられた著者の客観的なラーメン論です。
なにが無敵なのかわかりませんが。(笑)
ラベル:グルメ本
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2017年11月10日

「東大オタク学講座」岡田斗司夫

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96年から97年にかけて著者が東大で行った『オタク文化論』についての講義をまとめた本です。
東大とオタクというのは似つかわしくないような気もしますが、私はなんとなくイコールな気もするんですけどね。
さて、オタクというと最初はマンガやアニメのマニアに対して使用されていた言葉です。
なのでちょっとマイナーといいますか、世間から外れた特殊な人たちというイメージがありました。
今もそれはありますけど、当時に比べたらずっとメジャーになりましたね。
ジャンルもマンガやアニメに限定されることなく使われるようになり、その道のエキスパート的なニュアンスさえあったりします。
ですがこの本のいうオタクとはまさしくマンガやアニメな人たちのことです。
あとはゲームですね。
そしてオカルト。
前半の「光のオタク編」ではそれらの世界をしっかりと分析、解説しておられます。
後半は「闇のオタク編」。
こちらではゲストを招いての対談です。
「現代アートの超理論」では村上隆氏、「敗れざるゴーマニズム宣言」で小林よしのり氏、「愛と誠の変態講座」で唐沢俊一氏など。
最後には講義を受けた学生たちのレポートを著者がチェック。
オタク文化についてたっぷりの読み応えがある一冊です。
ラベル:漫画本
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2017年10月07日

「わたしたちに許された特別な時間の終わり」岡田利規

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ライブハウスで出会った男女。
時はブッシュがイラクに攻撃を開始する数日前です。
2人はラブホテルに籠りきり、テレビも観ずひたすらセックスと会話で4泊5日を過ごします。
そのあいだに外の世界ではアメリカとイラクの戦争が開始されているのかいないのか・・・・。(三月の5日間)
戦争という当事者たちにとっては大変な出来事が行われているいっぽう、まったくそれとは無関係な人物と時間が確かに同時期に存在しているんですよね。

夫婦はどちらもフリーター。
妻は自宅の布団の上でだらだらと過ごし、夫はファストフード店のカウンターで突っ伏して眠っています。
布団の上の妻の想像は夫や他人の様々な視点となり・・・・。(わたしの場所の複数)
妻はあくまで自宅におり、夫やたまたま見つけたブログの主の言動は想像なわけですが、まるで幽体離脱したかのような視点とその人物の肉体に入り込んだかのような視点が混在としています。
そして過去の自分さえ登場して。
気怠くも緻密な小説です。

どちらも面白かったかと問われると素直には頷けません。
ですが第2回大江健三郎賞の受賞作。
やはりそれなりの作品なのでしょう。
一般受けはしないと思いますが。
ラベル:小説
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