2018年11月15日

「天才たちの値段 美術探偵・神永美有」門井慶喜

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本物の絵を見ると甘味を感じ、偽物だと苦みを感じるという天才美術コンサルタント神永美有。
短大の美術講師である佐々木昭友との名コンビ(?)で美術に関する様々な難問を解いていきます・・・・。
表題作「天才たちの値段」は画商に声をかけられた佐々木が故・子爵の館を館を訪れます。
そこで出会ったのが神永です。
子爵が秘蔵していたボッティチェッリの絵を見せられるのですが、それは本物なのか偽物なのか。
本物なら世紀の大発見です。
しかし佐々木が見たところ、筆致は酷似しているものの微妙にボッティチェッリらしくない。
ですが神永は口の中に強烈な甘みを感じ、呟きます。
「これは本物です」。
さて真偽は・・・・。
美術に関わる謎を解き明かしていく美術ミステリーとでもいいますか。
専門的な知識が駆使され、上辺だけの美術ものではありません。
といっても私は美術について詳しいわけではないですけども。
しかしこれらの知識や情報ががっちりと本格感をもたらしているように思えます。
作者もさぞかし大変だったのではないかと。(笑)
続編も出ているようですね。
ぜひ読ませていただきましょう。
ラベル:小説
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2018年10月28日

「鴨川食堂」柏井壽

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京都は東本願寺の近くで食堂を営む鴨川流と娘のこいし。
料理雑誌に掲載された『〈食〉捜します』の1行広告を頼りに、看板もないこの店を客が訪れます。
もう一度食べてみたい料理を再現してもらうために・・・・。
思い出の料理を食べさせるという趣旨は食べ物を扱う小説やマンガとしてはけっこう安直でしょう。
目新しさはありません。
これをどのように読ませるか、ですが。
鴨川食堂は食堂であり食の探偵事務所でもあるわけですが、所長は娘のこいし。
でも彼女はただ客の話を聞くだけでなんの役にも立ってません。(笑)
実際に行動しているのはすべて父親の流です。
父娘で経営というのはありがちでパターンな設定ですが、それならもっと娘を動かしませんと。
客から聞いたヒントを頼りに料理を再現することについては、まあこんなものかなぁと。
セオリー通りの推理という気がします。
作品世界の設定については敢えて余計な説明を省いておられますね。
流の経歴についても具体的には語られていません。
間接的な言い回しで読者が察するように書かれています。
雑誌の広告についても同じく。
具体的にああだこうだという説明はありません。
第三話の客の正体についてもそうです。
これはこれで不親切なようですがいいと思います。
読者も自分で判断しませんとね。
でも流になぜそんなに料理の腕があるのか。
ちょっと苦しい気もします。
小説としては可もなく不可もなくといった印象でした。
ラベル:小説 グルメ本
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2018年10月10日

「わが闘争」角川春樹

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角川春樹といえばあの角川書店の元社長で。
一時期はイケイケでしたよね。
ベストセラーを連発し、本と映画をリンクさせて売り出し、映画界も席巻しました。
彼がいたからこそ今の角川書店があるわけで。
でもいろんな事情があり角川書店を追放され、しかし角川春樹事務所を立ち上げ、刑務所に服役したりもありましたが、今また編集者として現役で活躍しておられます。
そんな著者の波乱万丈な自叙伝です。
なんともまあパワフルな人ですね。
幻冬舎の見城徹氏も編集者としてたいがいな人ですが、なにしろその師匠ですから。(笑)
まあ話がオカルトな方向にいったりするのはちょっとアレなんですけども、しかし編集者として、実業家として、その実力と実績は誰もが認めるところでしょう。
どのようにして角川春樹という人物が現在の地位を築いたのか。
生い立ち、経歴、人生観、思想、経営理念。
それらがみっちりと語られた一冊です。
ラベル:エッセイ
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2018年09月02日

「ゆめいらんかね やしきたかじん伝」角岡伸彦

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『関西の視聴率男』と言われた歌手でタレントのやしきたかじん。
2014年に64歳で死去。
その言動や人生は波乱万丈でした。
そんなやしきたかじんの生涯を描いた評伝です。
本業は歌手でしたがタレントとしての活動で人気がありました。
司会する番組はすべて高視聴率。
関西で圧倒的な人気はありましたが、そのアクの強さからあまりよく思わない人もけっこういましたが。
しかしこの本を読みますとかなり『やしきたかじん』を演じていたことがうかがえます。
傍若無人だったことは確かですが、実は繊細で気の小さなところもある人だったようです。
父親が在日韓国人だったということでコンプレックスを持った人でもありました。
言いたいことをズバズバと言ってのけた人ではありましたが、自身のルーツについては触れることができませんでした。
ジレンマといいますか大きな苦悩があったでしょうね。
そして死後は世間を騒がせた「殉愛」騒動。
善し悪しはともかく、それほど存在感があったタレントということでしょう。
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2018年03月26日

「被差別部落の青春」角岡伸彦

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部落差別というのは現在(この本の出版は単行本1999年、文庫本2003年)どのような状況にあるのか。
いまだに厳しく残っているという人もいれば、そんなの気にしたこともないという人もいます。
この本の著者は部落の出身です。
しかし部落差別というものを直接的に経験したことがないといい、また両親もそのようなことはなかったといいます。
はたして他の部落の人たちはどうなのか。
著者はいろんな部落を訪ね、インタビューを試みます・・・・。
この本を読みますといわゆる部落という土地に住む人でも、若い人はほとんど意識しておられないようですね。
親から自分の住む地域の事情を聞かされ、「おまえは部落民なんだ」と聞かされても、「あっ、そう」というような反応です。
実際にそのようなことで差別を受けたことがないからです。
つまりそのような意識を持つ人が少なくなってきたということなんでしょうね。
だからといって皆無というわけではありません。
結婚ということになって相手の出身を調べる人というのはやはりいるようです。
当事者の二人はよくてもそれぞれの親や親戚が口をはさんで反対してくる。
部落民が身内になるということに抵抗を示す人たちがいるのです。
この本の中でもそれで結婚を断念せざるをえなかった人や、そのような反対を押し切って結婚した人たちも紹介されています。
少しずつではありますが、部落差別というのは薄くなってきているようです。
そして「で、なにが悪いの?」という若い当事者たちのいい意味での開き直り。
完全に人々の意識からなくなることはまだ遠い先のことかもしれませんが、いわれのない差別はなくしていきたいものですね。
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