2018年03月26日

「被差別部落の青春」角岡伸彦

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部落差別というのは現在(この本の出版は単行本1999年、文庫本2003年)どのような状況にあるのか。
いまだに厳しく残っているという人もいれば、そんなの気にしたこともないという人もいます。
この本の著者は部落の出身です。
しかし部落差別というものを直接的に経験したことがないといい、また両親もそのようなことはなかったといいます。
はたして他の部落の人たちはどうなのか。
著者はいろんな部落を訪ね、インタビューを試みます・・・・。
この本を読みますといわゆる部落という土地に住む人でも、若い人はほとんど意識しておられないようですね。
親から自分の住む地域の事情を聞かされ、「おまえは部落民なんだ」と聞かされても、「あっ、そう」というような反応です。
実際にそのようなことで差別を受けたことがないからです。
つまりそのような意識を持つ人が少なくなってきたということなんでしょうね。
だからといって皆無というわけではありません。
結婚ということになって相手の出身を調べる人というのはやはりいるようです。
当事者の二人はよくてもそれぞれの親や親戚が口をはさんで反対してくる。
部落民が身内になるということに抵抗を示す人たちがいるのです。
この本の中でもそれで結婚を断念せざるをえなかった人や、そのような反対を押し切って結婚した人たちも紹介されています。
少しずつではありますが、部落差別というのは薄くなってきているようです。
そして「で、なにが悪いの?」という若い当事者たちのいい意味での開き直り。
完全に人々の意識からなくなることはまだ遠い先のことかもしれませんが、いわれのない差別はなくしていきたいものですね。
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2018年02月12日

「オール・アバウト・セックス」鹿島茂

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文藝春秋編集部から「エロス関係の本だけを取り上げる書評のページを担当してみないか」と提案され、「どうせなら書評を通しての日本のセックスのフィールド・ワークのようなものを試してみたいと思った」とのことで始まった連載。
それを1冊にまとめたのがこの本です。
ということでいろんなジャンルのエロに関する本を紹介し、書評しておられます。
連載にあたり、そんなおあつらえ向きの本が毎月みつかるのか。
いざ始めてみるとそんな心配は杞憂だったとのことで、予想をはるかに超えた点数が出版されており、1年の予定だった連載が3年を過ぎて42回になったとのこと。
いやあ、それだけいろんなエロに関する本が出版されているんですねぇ。
もちろんただのエロ本では取り上げる意義がありません。
その時代を反映したもの、学術的に掘り下げたもの、文学として感心させられるもの、などなど。
なかなか興味深く読めました。
紹介されている本を見かけたらぜひ購入してみようと思います。
(ブックオフの100円コーナー限定ですが 笑)
ラベル:書評・作家
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2017年11月28日

「紙の月」角田光代

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専業主婦で子供もいない梅澤梨花は41歳。
銀行でパートを始めます。
得意先をまわり、集配金を届けたり預かっていた通帳や書類を届けたりが主な仕事です。
顧客から呼び出されて定期や普通貯金のお金を預かったりもします。
真面目で客からの受けもよい梨花は、やがて契約社員となります。
ある日、顧客の孫である大学生の光太と出会うのですが、そこから梨花の人生の歯車が狂い始めます・・・・。
怖い小説ですね。
といってもホラーな怖さではなく。
お金の怖さです。
いや、お金自体は怖くもなんともない。
それを追い求める欲望が怖いのです。
光太に貢ぐため顧客のお金に手を付ける梨花。
最初はすぐに返せばいいといった考えでしたが、すぐに歯止めが効かなくなります。
平凡な専業主婦だったはずが、大学生の男を相手に大金持ちのマダムを演じてしまうのです。
ブランド物を買い漁り、高級ホテルのスイートルームに泊まり、車を買い与え、マンションまで借りてやり・・・・。
なんだかんだと横領し、やがてその金額は1億円。
やはり人間は身の程を知るというか足るを知らなければだめですね。
話のメインは梨花ですが、梨花の昔の友人たちの生活も描かれています。
中学・高校とクラスメートだった岡崎木綿子、昔梨花と付き合っていた山田和貴、料理教室で一緒だった中條亜紀。
やはり皆、なんだかんだとお金にまつわる苦労をしています。
木綿子はひたすら節約して家計をやりくりしています。
スーパーで買い物袋を持参して5円割引きをしてもらったり、使いすぎるといけないので財布には2千円しか入れなかったり。
しかしそんな倹しい生活をしているせいか、小遣いを与えられていない娘はスーパーで化粧品を万引きしてしまうのです。
和貴の家庭では裕福な家の出である妻が何不自由なく暮らしていた自分の子供時代と自分たちの子供の現状を比べ、子供たちになにもしてあげられないと現在の生活レベルを嘆きます。
やがて妻はいきなり羽振りよく子供にいろんなものを買い与え、お金の出所は自分の母親だと和貴に説明するのですが、実は消費者金融でした。
和貴の出した結論は離婚です。
亜紀は出版社の編集者。
浪費癖があり、そのためにこれも消費者金融に手を出して借金し、夫から離婚されてしまいます。
娘がいましたが夫が引き取り、現在は12歳。
ときどき会っているのですが、娘に言わせるとママというよりも友達感覚だそうです。
会うたびにブランド物で着飾りかっこよく素敵な友達感覚の母親を演じてきましたが、結局娘は亜紀のことを金づるとしか考えていませんでした。
皆お金に振り回されています。
まあ現実の問題としてやはりお金は必要ですが、人生を破滅させるほど追い求めてはいけませんね。
ラベル:小説
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2017年09月09日

「翼はいつまでも」川上健一

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神山は青森県の中学3年生。
野球部に在籍しています。
といっても補欠ですが。
平凡な中学生ですね。
そんな神山はある日、三沢基地のアメリカ軍放送から流れてきた歌を聴いて落雷のようなショックを受けます。
ビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」。
興奮した彼は翌日大声でクラスの皆にその歌を披露します。
「♪ラースタアナーセイトウマートウーマーイガール!」
この日から神山の日々が変わります・・・・。
ビートルズの歌に勇気づけられ、学校生活、野球、家族、友情、恋愛、別れ、いろんなことを経験し乗り越えていく少年の姿が実に清々しくて爽やかです。
このような経験ができるのはまさしく中学や高校といった時代ですね。
大人になると世界が変わるような新鮮な経験とは縁がなくなってしまいますし。
そういった数々のエピソードを、楽しく苦く描いているこの作品、青春時代を遠く過去にしてしまった世代にとってはとてもノスタルジックで眩しい。
青く恥ずかしいような部分も含めて。
最終章では30年後の同期会ということで、大人になった神山たちが描かれています。
輝いていたあの頃を思い出しつつ、大合唱。
「♪カモンカモン、カモンカモン、カモンカモン、カモンカモン!」
「♪プリズプリーズミーオーイエーライップリズユー!」
大人が読むには内容的に稚拙という評価もあるかもしれませんが、いかにも川上健一らしい瑞々しい青春小説だと思います。
ラベル:小説
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2017年07月23日

「極みのローカルグルメ旅」柏井壽

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この本は食通に向けて書かれたものではありません。
かといってB級グルメマニア向けに書かれたわけでもなく。
その土地に行かなければ味わうことのできないローカルグルメを紹介した本です。
いいですねぇ、ローカルグルメ。
どの土地に行っても同じような料理が蔓延る昨今。
地方の名物とかいいながらも簡単に取り寄せたりできてしまいます。
ではなく、やはりその土地に足を運ばなければ食べられない料理があっていいはずです。
いや、なくてはなりません。
地元の人だけが知る味、店。
そういうのがあってこそ旅もまた楽しみになるというものです。
じゃあ旅行になんて行けない人はそういう料理を味わえないではないか、という意見もありましょう。
うむ。
それならば諦めればいいのです。
無理なら潔く諦めるというのも肝心です。
なんでもかんでも手に入るという考えが現代人の自惚れであり、物に対する有難みを失くしているのです。
どうしても諦められなければ執念でお金と時間を作って食べに行けばいいのです。
さてローカルグルメですが、こういうのって当然高級な懐石料理やフランス料理ではなくB級グルメ的なんですよね。
高級になるほどローカル色といいますか地元べっちゃり感がなくなるといいますか。
洗練とともにローカルな泥臭さがそぎ落とされてしまうんでしょうね。
この本で紹介されている店や料理はほとんどB級グルメ的です。
市役所の地下食堂のカレーなんてのも紹介されています。
やっぱり気取らなく昔から地元の人に愛されている料理というのはいいものですね。
ラベル:グルメ本
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