2017年06月03日

「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ

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キャシー・Hは介護人です。
『提供者』の世話をしています。
そんなキャシーが過ごした『ヘールシャム』という施設での思い出。
さて、介護人とはなんなのか。
提供者とは?
ヘールシャムというのはなんのための施設なのか。
キャシーの回想とともにそれらが明らかになっていきます・・・・。
翻訳物ですが、まったくそうは思わせない文体です。
作者の文体がそうなのか、訳者がそのように訳しておられるのかは私にはわかりませんけども。
なので翻訳物が苦手な人でも読みやすい。
テーマとしてはけっこうエグイといいますか残酷ともいえるわけですが、ですます調の抑えた筆致で淡々と話が進んでいきます。
ミステリーとも近未来なSFとも読めますね。
ノスタルジックな青春小説とも読めるでしょう。
ジェットコースターのように大きなうねりがあるわけではありませんので、エンターテイメントとして読んだ場合やや物足りなさを感じるかもしれません。
ですが、このテーマを直接ドーンと提示して「さあ、どうだ」と問いかけられるよりも、じわりじわりと身近なことのように染み入る怖さがあります。
いや、怖さではなく悲しみでしょうか、やるせなさでしょうか。
ボリュームは430ページほど。
やや冗長かなという気もするのですが、この枚数で丁寧にキャシーの回想を積み重ねているからこその完成度ともいえます。
地味ではありますが、読ませる小説です。
ラベル:海外小説
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2017年04月02日

「絶対味覚」川越達也

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料理を作るにはどうすればいいか。
普通の料理本ならばレシピが書かれているわけですね。
肉何グラム、だし汁何カップ、醤油大さじ何杯・・・・。
しかしこの本にはそのようなレシピは書かれていません。
作りたい料理の味を記憶して、そこから遡ってレシピを分析しなさいと。
ま、これは改めて言われるまでもなく、料理好きで外食好きな人ならたいがい皆やっていることだと思います。
あの店で食べた料理の味を家で再現してみよう、と。
あの店のハンバーグはとてもふっくらしていた。
この店は肉汁溢れる仕上がりだな。
じゃあ、こねるときにこうすればいいんじゃないか。
ああすればこの食感に近づくかも。
ソースにあの調味料を使えば近い味が出せるはず・・・・。
まったく店と同じ材料は揃えられませんから、生クリームの代わりに牛乳でいけるかなとか、ワインビネガーなんて買ってもそんなに使うものじゃないから酢と白ワインでなんちゃってみるか、とか考えたりもします。
それが料理の楽しさでもあるわけで。
ただまあやはり最低限の知識というのは必要で、それがあってこそだとは思いますけど。
ところでこの著者、いっときはテレビに出まくってましたが最近は見かけなくなったようで。
店も閉められたようですね。
「世の中の人から、僕の存在を忘れてもらいたい」などとおっしゃっているとか。
なんじゃそりゃ。(笑)
ラベル:グルメ本
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2017年02月09日

「ロックンロール・ウイドー」カール・ハイアセン

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主人公のジャックは新聞社の死亡欄担当記者。
昔売れていたロック歌手ジミーが死亡するのですが、ジャックはその死を不審に思います。
ジミーの妹ジャネットやジミーの妻で歌手のクリオを取材するのですが、どうもクリオの言動が怪しい。
さて、ジミー死亡の真実は・・・・。
この作者の作品はこれで3冊目。
以前に読んだ2作に比べるとコメディ度は薄いですね。
「復讐はお好き?」なんかはけっこう笑えましたけども。
まあコメディ小説ではありませんからそんなことを求めてもいけないんでしょうけど。
しかしミステリーとしてもどうなのかなぁ。
意外性があるわけでなく、決まったレールの上を進んでいくような展開ですし。
500ページを超える長さですが、そんなに枚数が必要な内容とも思えませんでした。
退屈はしませんでしたがワクワク感もありませんでしたね。
ラベル:海外小説
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2017年01月20日

「二匹」鹿島田真希

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「青春。青く未熟な春と書く。」
こんなクサイ書出しで始まります。
その後の言い回しやセリフのやりとりも昔のコバルト小説を読んでいるよう。
かなりイタく恥ずかしいです。
内容も私にとっては実にクサく白々しいものでした。
ですがこの小説がそれだけで終わっていない理由が「二匹」なんですね。
「二人」ではなく「二匹」。
ここがポイント。(笑)
主人公ら二人を二匹と扱うことによって、この小説は平凡から非凡に昇華しています。
不条理的なノリですが、逆にいえばリアリティのないやりとり。
なのでこれは普通に高校生の青春小説として読むと大きく期待をはずすことになりますのでご注意。
解説を読みましたら笙野頼子氏らが絶賛したようですが、私はちょっとどうも。
このノリには白けてしまいます。
ラベル:小説
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2016年11月13日

「B級学【マンガ編】」唐沢俊一

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マンガについての評論本です。
第1章では「日本マンガ文化の過去・現在・未来形」ということで、東大での講演が収録されています。
現在のマンガ評論について、そしてマンガの状況、貸本時代のマンガなども取り上げておられます。
第2章は「B級学的現代マンガ家論」。
紹介されているのは内田春菊、望月峯太郎、横山光輝、唐沢なをきの4人。
ただ唐沢なをきはちょっと持ち上げすぎでは。
いくら実弟とはいえ。
しかし身内であるが故に知る素顔もありましょう。
第3章は「マンガ、アニメはどこへ行こうとしているのか」。
貸本時代のB級マンガがいくつか紹介されているのですが、これが実に面白そう。
今のマンガにはないキッチュな魅力があります。
こうやって貸本の時代から現代までざっと見てみますと、さすがに技術的なものは目を見張るほど向上していると思います。
ですがマンガらしさというのは失われてきたのではないかと。
こんなこと言うと「じゃあマンガらしさとはなんなのか。その定義は」みたいな話になってしまいますけど。
昔のマンガ雑誌は絵にしろ話にしろバラエティがありました。
次の発売日まで何度も読み返しましたし。
読んでいて味わいがありましたね。
でも今は・・・・。
私にとっては今の少年ジャンプ的なマンガはいっさいダメですね。
受け付けません。
昔はよかった・・・・などというのは、時代についていけなくなった者のノスタルジーでしょうか。
ラベル:漫画本
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