2020年01月02日

「宇喜多の捨て嫁」木下昌輝

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戦国大名・宇喜多直家。
自身の出世のためなら平気で娘の嫁ぎ先を滅ぼし、義父の首さえも切り落とします。
そんな宇喜多直家の半生とはどのようなものだったのか・・・・。
於葉は直家の四女。
後藤勝基に嫁ぐのですが、なんと祝言の場にて直家が浦上家に謀反を起こしたと聞き、血の気が引きます。
浦上松之丞は於葉の姉である小梅の婿です。
その小梅は松之丞に殉じ、自害したとのこと。
その宇喜多の軍勢はいよいよ後藤家にも押し寄せてきます。
於葉は後藤家の嫁として、宇喜多家と戦い後藤家に殉ずることを決意します・・・・。
表題作他5編を収録した連作短編集、というよりは、私は長編として読みましたけどね。
ただそのように読むと時代が前後していたりしてちょっとややこしいのですが。
視点を変えていろんな角度から直家を、出来事を描いています。
宇喜多直家は『尻はす』という病を患っており、体中の古傷から血と膿が大量に滲み出る奇病です。
生きながら体を腐らせていく直家が臥せっている部屋には、腐臭がこもっています。
この腐臭がなんとも全編に漂っているような気がして、非常に雰囲気が重い。
そして直家の手段を選ばない非道っぷりが輪をかけてその雰囲気を強調します。
ですが、ちゃんと直家の内面も描かれており、そのような業を背負った悲しさ寂しさのようなものも感じさせます。
この作品は『第2回高校生直木賞』を受賞しています。
これは直近1年間の直木賞候補作の中から選ばれた5作品について選考に応募した全国の高校が校内で予選会を行い、全国大会として代表が集まった本選会で議論し受賞作を選ぶというものです。
この回の候補作は本作の他、「サラバ」西加奈子、「悟浄出立」万城目学、「本屋さんのダイアナ」柚木麻子、「満願」米澤穂信。
高校生がこれらの作家・作品の中から本作を選んだというのがすごい。
まあ高校生といいましても私ごときなど及ぶべくもない読み巧者な人たちでしょうけど。
作者にとってはこれがデビュー作。
これまたすごい。
ラベル:時代小説
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2019年09月12日

「ラブホテル進化論」金益見

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電車である情報誌の中吊り広告に「ラブホ特集!」という見出しを見かけた著者。
それをきっかけに当時大学生だった著者は「カップルの空間を考察する」と題し、ラブホテルをテーマにした卒業論文を書こうと決めます。
井上章一氏にはつまらなかったと酷評されたそうですが。(笑)
その後大学院に進んだ後もラブホテルを研究し続けます・・・・。
なかなか興味深い研究です。
私が知らないだけかもしれませんが、ここまで真摯にラブホテルを研究、発表した人はいないのでは。
あちこちのラブホに行ってああだこうだという自称評論家はいますけども。
ラブホテルの始まりから、それぞれの時代を背景にしてどのように変遷してきたか。
外観、アイテム、ネーミング。
利用者の意識の変化。
経営者や設計士、デザイナーなどにもインタビューを試みておられます。
まさしく進化論ですね。
今後もどのように進化していくのか。
これからも研究を続けていかれますことを。
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2019年09月04日

「進化する日本の食 農・漁業から食卓まで」共同通信社 編

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現在の日本の食の現状とはどのようなものか。
産地の偽装や添加物まみれの食品があふれかえっています。
中国製の食品に殺虫剤が混入していたなどという事件もありました。
食の安心や安全が叫ばれる昨今、しかし日本の食料自給率は40パーセントと先進国の中では最低です。
にもかかわらず大量の食品を廃棄しているという矛盾。
このままでは日本の食はどうなってしまうのか。
本書では農業や漁業などの生産者を取材し、現場の実情を報告しています。
しかし生産者だけではなく、消費者も意識を変えないとどうにもならないですよね。
ラベル:グルメ本
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2019年07月24日

「神様の贈り物」木内一裕

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感情がなくすべてに無関心な殺し屋チャンス。
淡々と人殺しをやってのけます。
そんなチャンスの乗ったバスがバスジャックに遭います。
皆が手出しをできない中、チャンスはなんのためらいもなく犯人に近づき始末します。
一躍日本国中のヒーローとなったチャンス。
しかしあるトラブルから拳銃で頭を撃ち抜かれ奇跡的に命を取り留めるのですが、目覚めたチャンスの見る世界は今までとまったく違っていました。
何に関しても無関心だったチャンスに『心』が生まれたのです・・・・。
感情がなかった殺人マシーンに人間の心が宿ったら。
そんな設定です。
脳に障害があって感情を失くしてしまっていたチャンスですが、頭を撃たれたことによりそれを取り戻し、ごく当たり前の景色に感動したりします。
感情だけではなく過去の記憶もほとんどありませんでした。
まったく子供のように純粋な心の持ち主になったチャンス。
これからどのように生きていくのか。
自分はどこに向かえばいいのか。
生きて行ける場所はあるのか。
とりあえずは記憶にある実家の住所を訪ね両親に会おうとするのですが。
今後チャンスがどうなるのかは具体的に示されてはいません。
しかし明るくはないでしょう・・・・。
いつもながらこの作者の作品は読ませますねぇ。
1年に1作のペースで刊行しておられますが、構想も文章もじっくりと練っておられるのがよくわかります。
本作の後もまだまだ刊行しておられます。
ぜひ楽しみに読ませていただきたいと思います。
ラベル:小説
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2019年06月18日

「シェフの哲学 食の探求から 三つ星レストランの運営まで」ギィ・マルタン

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ギィ・マルタン。
パリの三つ星レストラン「グラン・ヴェフール」の料理長です。
日本でもミシュランの星がどうこう言われていますけども、フランス版の星とは格が違います。
プロ野球と草野球ほどの違いがあると私は思っていますけどね。
なのでパリで三つ星ともなるとそれはもう相当なものです。
そんな三つ星シェフが語る料理、店の経営、舞台裏。
それはいったいどのようなものなのか・・・・。
料理人が書いた本というのは何冊もありますけども、だいたいパターンが決まっているんですよね。
少年時代、料理との出会い、海外での修行、いよいよ独立、とか。
この本もまたそれらに当てはまりはしますが、もっと料理や経営についてシビアに専門的に語られています。
むしろこれはプロの料理人向けかもしれません。
レシピもびっしり掲載されていますが、ちょっと家庭で再現するのはしんどいですね。
文章はいかにも翻訳調でもうちょっとどうにかならないかとも思いますが、文学ではなく料理の専門書と考えればこれでいいのかもしれません。
ラベル:グルメ本
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