2018年03月18日

「春夏秋冬 料理王国」北大路魯山人

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魯山人といえば美食家であり陶芸家であり書道家であり漆芸家であり画家であり・・・・。
芸術家としていろんな肩書きがあります。
中でもよく知られているのがやはり美食家と陶芸家の肩書きでしょう。
食べるだけでなく自分で料理もし、「星岡茶寮」という高級料亭を主宰し、自ら包丁をふるっていました。
陶芸も料理を盛るための見るべき器がまったくないということで、魯山人自ら器作りに乗り出したのがきっかけです。
まず第一に料理があったわけですね。
そんな魯山人の意外なことにこれが最初で唯一の料理に関する本だとのこと。
傲岸不遜、傍若無人といわれた魯山人ですが、なるほどこの本を読みましても言いたい放題。
当時の料理人をとことん貶すわ、フランス料理を切って捨てるわ。(笑)
パリの「トゥール・ダルジャン」で山葵醤油で鴨を食べたなんてのは有名な話。
「食道楽」の著書で知られる村井弦斎なども味覚が幼稚だとバッサリ。
それほど自分の価値観をしっかりと持ち、また言うだけのことを示してきたということでしょう。
しかし魯山人の美食話について思うのが、料理の話に比べて酒の話がほとんどないんですよね。
これは片手落ちと言わねばなりますまい。
この本でもあるにはあります。
でもビールについて大ビンより小ビンだとか、デンマークのビールがどこの国のビールよりもうまいとか書かれているだけです。
実際ビール好きで毎日飲んでいたようですが、美食家を自認しておきながらビール党って・・・・。
和食を絶賛しているのだからやはり日本酒についてももっと意見が欲しかったですね。
フランス料理についてもワインにはほとんど触れられておらず、先述の「トゥール・ダルジャン」でも安物の葡萄酒でまずかったと。
こんな安い葡萄酒は好かぬということで「上等のブランデーはないか」と尋ね、地下のワインセラーに案内され美味しいブランデーをプレゼントされたそうです。
それならソムリエにそれなりのワインを持って来させればいい話で、ワインの代わりにブランデーなんてまったくお門違いです。
同じ葡萄から作る酒とはいえ、ワインは食中酒ですがブランデーは食後酒なんですから。
ま、しかし、魯山人という人はほんと刺激的で面白い人物ではあります。
ラベル:グルメ本
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2017年10月09日

「本棚探偵の生還」喜国雅彦

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シリーズ第3弾。
いよいよ本棚探偵が海外に進出です。
アジア最大のブックフェアのため台湾へ。
そしてホームズファンの聖地、ロンドンはベイカーストリートへ。
もちろん国内でも大活躍(?)です。
友人の引っ越しに古本目当てで手伝いに行く。
本棚まで作ってあげる・・・・。
「冒険」「回想」ときて今回は「生還」。
古本&ミステリーファンの喜怒哀楽が実に馬鹿馬鹿しくも生き生きと書かれています。
私はここまでマニアではありませんが、しかしお目当ての古本を探し当てた時の喜びというのはたまらない達成感があります。
特に著者が追い求めておられるのは希少本ですしね。
他人の本棚が気になるというのもよくわかります。
たまに著名人のインタビュー写真なんかでバックに本棚が移っていれば、目を皿のようにしてその背表紙をチェックしますし。(笑)
440ページほどのボリュームをたっぷりと楽しませていただきました。
古本やミステリーファンでなくとも本好きにはお勧めなシリーズです。
ラベル:本・書店
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2017年04月06日

「漂砂のうたう」木内昇

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御一新から十年。
もともとは武士だった定九郎ですが、現在は根津遊郭の美仙楼という店で客引きをしています。
龍造という妓夫太郎に使われ、遣手のばあさんにつつかれるような毎日。
出世の見込みもありません。
自分より格下の仲どんと呼ばれる雑用係の嘉吉にも追い越されそうです。
やたらと定九郎につきまとう噺家の弟子であるポン太という謎の男や、美仙楼で一番人気の花魁小野菊などさまざまな人物と関わりながら、先行きの見えない不安と虚ろな日々を過ごしています・・・・。
江戸から明治に時代が変わり混沌としている時期、武士という身分を失った定九郎が翻弄される様が描かれています。
周りの人物たちの配置がいいですね。
ひたすら美仙楼を守り続ける龍造、ずる賢く油断のならない嘉吉、得体のしれない神出鬼没のポン太、凛として気高く自分を持ち続ける小野菊。
それぞれが目まぐるしく変化していく時代の中を自分なりに精一杯生きています。
どうにも生き方の定まらない定九郎と対照的に、ひたすら一点を見続けるような生き様の小野菊がやはり魅力でしょう。
武士から遊郭の客引きへ堕ちた定九郎、苦界に身を沈めた小野菊。
どちらも身分が堕ちた立場ではありますが、しかし二人が日々見つめているものは明らかに違います。
時代の波に飲まれながらも泳ぎ続ける、いろんな人たちの人間模様が描かれたいい小説でした。
ラベル:時代小説
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2017年02月15日

「キッド」木内一裕

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ちっぽけなビリヤード場を経営する二十歳の麒一。
近所のたばこ屋の女子中学生から助けを求める電話を受けます。
駆けつけてみると男の死体がありました。
家を出たろくでもない父親が帰ってきて暴力をふるい、家の権利書を持っていこうとしたのです。
その家は中学生の女の子、29歳の姉、お婆さんの3人暮らし。
姉は留守をしており、抵抗したお婆さんと女の子は思わず父親を刺し殺してしまったのでした。
どうしていいかわからず女の子は麒一に電話してきたのです。
母親代わりに家計を支えてきた姉は結婚を控えており、ようやく手に入れた幸せの絶頂にいます。
こんな事件が知れたら破談になるのは確実です。
これ以上自分たちのために姉の人生を犠牲にし、狂わせるわけにはいかない。
脅える2人に男気を見せる麒一はその死体を処理することを引き受けるのですが、話は意外な方向に展開していきます・・・・。
いやぁ、面白かった。
二転三転するスピーディーな展開、持続する緊迫感にドキドキハラハラ。
二十歳の若者がヤクザ相手にという現実離れした内容ではありますが、細かなところをきっちりとリアリティで抑えてあるのはさすが。
存分に楽しめるエンターテイメントでした。
この作者の本を読むのはこれで4冊目。
やっぱり木内一裕はええわ。(笑)
ラベル:小説
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2017年02月11日

「ブラ男の気持ちがわかるかい?」北尾トロ

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ブラジャーというのは男性には一生縁のないものです。
パンツなら形は違えど男性も着用しますが、オッパイのない男性にブラジャーは不要。
しかし愛用する男性が増えているとか。
著者はさっそくコスプレショップに行き、男性用ブラを購入します・・・・。
シリーズと言えるでしょうか。
いろいろとバカなことを(失礼)実行してみる「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか」、「キミはヒマラヤ下着の凄すぎる実力を知っているか」の流れですね。
身が引き締まるという理由でブラを愛用する男性がいるとのことですが、それならなにもブラでなくともいいわけで。
襷(たすき)のようなものでもいいわけです。
あるいは晒(さらし)とか。
やはりそこには倒錯した性癖が底辺にあると思うのですが、どうでしょうか。
さて、著者がブラを着用した結果。
ホックを留めてもらった妻に笑われ、3歳の娘に「キモチワルイ」と言われ。
街に出、電車に乗ったものの、圧迫感に耐えられなくなりチクチクムズムズせり上がってきて気持ち悪い。
やがては痛みさえ感じるようになり。
帰りは駅から家まで走り、引きちぎるようにブラをはずしたとか。
ご苦労様です。(笑)
その他、150キロの剛速球をバントできるか挑戦してみたり、ゴルフ接待とはどのような気分なのかと接待を受けてみたり、ひとりカラオケで絶唱してみたり。
相変わらずの好奇心とバイタリティです。
ところでこの本、単行本時のタイトルは「全力でスローボールを投げる」だったのですが、文庫化するにあたって改題。
文庫版のほうがストレートに内容を表現していますが、単行本時のほうが秀逸でよかったな。
「全力でスローボールを投げる」は現在著者のブログのタイトルとなっています。
ラベル:エッセイ
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