2019年02月10日

「藤十郎の恋・恩讐の彼方に」菊池寛

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表題作の2編他8編収録の短編集。
坂田藤十郎は元禄時代の京の歌舞伎役者です。
名人の名を欲しいままにしています。
ある日、江戸から中村七三郎というこれまた名優が上ってきます。
最初はあまり評判の良くなかった七三郎ですが、あっという間に人気となり藤十郎を凌ぐほどとなります。
人々は藤十郎の芸にマンネリ感を持ち始め、藤十郎もまた自分の芸に自信を持ちつつも行き詰まりを感じていました。
藤十郎は現状を打破しようと近松門左衛門に狂言を書いてもらうのですが、その内容というのが命がけの不義の恋です。
女遊びはそれなりにしてきた藤十郎ですが、他人の女房に手を出したことはありません。
そんな自分がこの役を演じることができるのか。
内容は斬新だがいつもの藤十郎と変わらないなどと酷評されるのではないか。
焦燥にかられます。
そんな藤十郎が取った行動は・・・・。(藤十郎の恋)
「恩讐の彼方に」は主人を殺害した若武士市九郎が逃亡し、その後も生きていくために何人もの人間を殺めることを繰り返すのですが、やがて悔恨に苛まれ得度します。
そして了海と法名を呼ばれ諸人救済のため旅に出るですが、旅先で難所に遭遇し、この難所を取り除くことにより千万の命を救うことになるだろうとここに骨を埋める覚悟をします。
村人から狂人扱いされながらも、来る日も来る日もひたすら岩盤を掘り続ける市九郎。
そして20年。
父親の仇を討つために10年近く放浪の旅を続けてきた実之助がようやく市九郎を探し当ててやって来ます。
市九郎に会った実之助は・・・・。
どの話も教訓を含んでいるといいますか。
う~む、と考えさせられますね。
これまで「真珠夫人」「貞操問答」「無憂華夫人」と読んできましたが、それらとはまったく作風が違い幅広さを感じました。
いずれにせよ菊池寛の作品は面白い。
ラベル:時代小説
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2019年01月11日

「新選組 幕末の青嵐」木内昇

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新選組。
どのような存在であったのか、いまさら説明するまでもありませんが。
この作品ではその新選組のいろんな人物にスポットを当てて語られています。
ひとりの人物を主役に据えて書かれるのに比べるとやや散漫な印象はあります。
ですがその分それぞれの人物を主観的に見ることができます。
読んでいまして魅力なのはやはり土方歳三ですね。
小説ですからもちろん脚色もありますし作者の思い入れもあるでしょうが、しかしそれを度外視しても魅力ある人物だといえるでしょう。
そして沖田総司。
この飄々とした純真無垢な人柄もまたいい。
剣客としてあまり活躍できなかったのは残念なことですが。
最初は視点がころころ変わるのに違和感を持ちましたが、慣れればどっふりと浸ることができました。
500ページ以上の長編ですが、最後は読み終えるのが惜しかったくらい。
昔、日本にこのような男たちがいたのだなぁと、しみじみ感慨に耽りました。
ラベル:時代小説
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2018年03月28日

「デッドボール」木内一裕

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5ヶ月ほど前に交通事故に遭い、職を失い将来の希望も失った23歳のノボル。
ひと月近くの入院と長いリハビリを経て職探しを始めたものの、いまだ仕事は見つかりません。
なんとか彼女の助けを借りながら細々とやっていこうと思っていた矢先、その彼女にもフラれます。
そんなどん底な状況でかかってきた1本の電話。
中学の先輩の紹介で知り合った危険な人物からです。
持ちかけられた話は報酬1000万円の仕事。
完璧な計画のもと、誘拐の手伝いをするというものです。
仕事もないが借金はあるノボル、背に腹は代えられずたった一度だけということで引き受けることにしたのですが・・・・。
やはり木内作品、ストーリーは一筋縄ではいきません。
誘拐のつもりが殺人犯になっていたりします。
そしてスピード感のある展開で話が二転三転し、思わぬ方向に進んだりどんでん返しがあったり。
登場人物たちがまたいい。
悪人になり切れない気真面目さのあるノボル、雇い主の佐藤(仮名)。
頭が切れて冷ややかな佐藤ですが、伊坂幸太郎作品に出てきそうなキャラです。
そしてちょっと頭がイッてる弁護士の成宮、その愛人のマナミ。
魅力のあるキャラがそろっています。
最後はハッピーエンドというわけではありませんが、決してアンハッピーというわけでもない。
ラスト2ページのエピローグはじわっと温かい。
タイトルも味わい深い。
「いいか、デッドボールってのは終わりじゃない。これから塁に進めるんだぞ」
佐藤のセリフです。
なるほどと思いました。
やはりはずれがありませんね、木内一裕。
佐藤を主人公にした続編を読んでみたい気がしました。
ラベル:小説
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2018年03月18日

「春夏秋冬 料理王国」北大路魯山人

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魯山人といえば美食家であり陶芸家であり書道家であり漆芸家であり画家であり・・・・。
芸術家としていろんな肩書きがあります。
中でもよく知られているのがやはり美食家と陶芸家の肩書きでしょう。
食べるだけでなく自分で料理もし、「星岡茶寮」という高級料亭を主宰し、自ら包丁をふるっていました。
陶芸も料理を盛るための見るべき器がまったくないということで、魯山人自ら器作りに乗り出したのがきっかけです。
まず第一に料理があったわけですね。
そんな魯山人の意外なことにこれが最初で唯一の料理に関する本だとのこと。
傲岸不遜、傍若無人といわれた魯山人ですが、なるほどこの本を読みましても言いたい放題。
当時の料理人をとことん貶すわ、フランス料理を切って捨てるわ。(笑)
パリの「トゥール・ダルジャン」で山葵醤油で鴨を食べたなんてのは有名な話。
「食道楽」の著書で知られる村井弦斎なども味覚が幼稚だとバッサリ。
それほど自分の価値観をしっかりと持ち、また言うだけのことを示してきたということでしょう。
しかし魯山人の美食話について思うのが、料理の話に比べて酒の話がほとんどないんですよね。
これは片手落ちと言わねばなりますまい。
この本でもあるにはあります。
でもビールについて大ビンより小ビンだとか、デンマークのビールがどこの国のビールよりもうまいとか書かれているだけです。
実際ビール好きで毎日飲んでいたようですが、美食家を自認しておきながらビール党って・・・・。
和食を絶賛しているのだからやはり日本酒についてももっと意見が欲しかったですね。
フランス料理についてもワインにはほとんど触れられておらず、先述の「トゥール・ダルジャン」でも安物の葡萄酒でまずかったと。
こんな安い葡萄酒は好かぬということで「上等のブランデーはないか」と尋ね、地下のワインセラーに案内され美味しいブランデーをプレゼントされたそうです。
それならソムリエにそれなりのワインを持って来させればいい話で、ワインの代わりにブランデーなんてまったくお門違いです。
同じ葡萄から作る酒とはいえ、ワインは食中酒ですがブランデーは食後酒なんですから。
ま、しかし、魯山人という人はほんと刺激的で面白い人物ではあります。
ラベル:グルメ本
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2017年10月09日

「本棚探偵の生還」喜国雅彦

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シリーズ第3弾。
いよいよ本棚探偵が海外に進出です。
アジア最大のブックフェアのため台湾へ。
そしてホームズファンの聖地、ロンドンはベイカーストリートへ。
もちろん国内でも大活躍(?)です。
友人の引っ越しに古本目当てで手伝いに行く。
本棚まで作ってあげる・・・・。
「冒険」「回想」ときて今回は「生還」。
古本&ミステリーファンの喜怒哀楽が実に馬鹿馬鹿しくも生き生きと書かれています。
私はここまでマニアではありませんが、しかしお目当ての古本を探し当てた時の喜びというのはたまらない達成感があります。
特に著者が追い求めておられるのは希少本ですしね。
他人の本棚が気になるというのもよくわかります。
たまに著名人のインタビュー写真なんかでバックに本棚が移っていれば、目を皿のようにしてその背表紙をチェックしますし。(笑)
440ページほどのボリュームをたっぷりと楽しませていただきました。
古本やミステリーファンでなくとも本好きにはお勧めなシリーズです。
ラベル:本・書店
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