2015年08月08日

「茗荷谷の猫」木内昇

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短編9編収録です。

江戸時代から始まり昭和の戦後あたりまででしょうか、時代をまたいでの短編集です。

どれも主人公はごく普通の庶民です。

桜の新種を作り出す男、万人が幸せになるための黒焼きを造り続ける男、役人を夫に持つ画家の女、その夫は妻に内緒で役人を辞め浪曲の小屋の呼び子をしており、などなど・・・・。

それぞれ独立した話ではあるのですが、さりげなく過去の登場人物が話に出てきます。

この作品集を読みますと、当たり前のことですが人それぞれ人生があるというのを噛み締める思いがします。

自分にとってまったく知らない人物にも人生があり、そのようないろんな人の人生が自分に関わっているということを、そうやって日々を積み重ねて人は生活しているんだということを、さりげなくじんわりと提示しています。

大部分の人は歴史に残るような功績を残すわけでなし、生涯を終えます。

しかし間違いなくその人の存在は誰かに関わり、未来へとつながっているのです。

そんなことを改めて思い知らされる実に味わい深い一冊でした。

ラベル:小説
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2015年03月26日

「貞操問答」菊池寛

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芝居に夢中な長女の圭子、いちばんしっかりものの次女新子、無邪気で男を惑わす魅力のある三女の美和子。

主人公は新子です。

父が亡くなったあと金銭感覚のない母や姉、妹のせいで家庭の経済は貧窮状態。

新子は家計を支えるため、前川準之助という実業家の軽井沢の別荘で家庭教師の仕事を始めます。

妻子ある身でありながら新子に想いを寄せる準之助。

しかし準之助の妻がとんでもなく意地の悪い女。

準之助は事なかれ主義者で、気の強い妻には頭が上がりません。

新子と準之助の雰囲気を察した妻は、新子を解雇して追い出してしまいます。

ですが新子への想いを断ち切れない準之助は、新子の生活を確保すべく銀座にバーを持たせます・・・・。

いやぁ、菊池寛の小説って面白いですねぇ。

以前に読んだ「真珠夫人」もそうですけど、なんといいますか下世話。(笑)

奥様に向けた昼のドラマにぴったりといった内容ですね。

新子のけなげさ、しかしそれを奪いぶち壊してしまう姉や妹に対してのいらだたしさ。

社会的立場のある準之助の新子に対する純な想い。

それを徹底的にぶち壊そうとする準之助の妻の嫉妬と性悪。

読みどころをたっぷりと設定し、しっかりとエンターテイメントに仕上げています。

新聞に連載されて話題になったようですが、そりゃそうでしょうね。

文春文庫からもう一冊出ている「無憂華夫人」も購入済み。

少し間を置いてぜひ楽しませていただきましょう。

ラベル:小説
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2015年02月06日

「化学探偵Mr.キュリー」喜多喜久

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七瀬舞衣は2週間前から四宮大学の庶務課に勤める社会人1年生です。

庶務課の今年度の目標として『学生のモラル向上の実施』というのが掲げられ、モラル向上委員に任命されたのは理学部化学科のMr.キュリーこと沖野春彦准教授。

舞衣は沖野に協力することになります。

まず第一の事件が最近キャンパスのあちこちに穴が掘られるという出来事。

今回は農学部応用生命化学科の畑が掘り返され、しかも埋蔵金の在り処を示したメモが現場に残されていたというのですが・・・・。

まずタイトルですが、明らかに「探偵ガリレオ」のパクリですよね。(笑)

2匹目のどじょう狙いといいますか。

ただガリレオは未読なので内容の比較はできませんけども。

こういうのって他にもありますね。

「ビブリア古書堂の事件手帖」が当たったとなれば、その後どどどっと類似の作品が出てくる。

舞台を喫茶店にしてみたり画廊にしてみたり、その他いろいろ。

出版社は商売ですからまあわかりますが、作家としてどうなのよと思います。

それはともかく。

これは5話が収められた連作短編集ですが、すべてMr.キュリーこと沖野が化学の知識を駆使して事件を解決するという内容です。

第一話の埋蔵金云々にはずっこけましたが、しかし読み進めるとなかなか面白い。

第二話の「化学探偵と奇跡の治療法」なんてホメオパシーという治療法を取り上げ、「何の根拠もないおまじない」とぶった切っておられます。

化学者の面目躍如といったところでしょう。

設定としては探偵と若い女性の助手というひとつのパターンを踏襲しています。

この掛け合いがステレオタイプではありますが、いいんですよね。

七瀬舞衣のキャラがいい。

ただ沖野の気持ちが舞衣に早く接近しすぎ。

続編を出せるか出せないかの状況で作者としては気が焦ったのかもしれませんが、こういうのはじっくりいきませんとね。

しかし中公文庫がこんな本を出すんですねぇ。

商売商売。(笑)

ラベル:小説
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2014年12月12日

「キミはヒマラヤ下着の凄すぎる実力を知っているか」北尾トロ

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ヒマラヤ下着というのがあるんですね。

この本を読むまで知りませんでした。

エベレストの極寒にも耐えるほど暖かいということで、広告写真には下着姿の男たちがずらりとエベレスト山中に並んでいるらしい。

そんな広告も見たことありませんでした。

著者は以前からその広告が気になっており、実際どうなのかと1万5千円也をはたいて購入してみるわけです。

さすがにエベレストまで行くわけにはいきませんので、標高2612メートルの信州駒ヶ岳山頂で試すことに。

結果は・・・・。

ヒマラヤ下着の完勝。

下着姿でも全然寒くないとのこと。

登山者の目を気にしながら下着姿でポーズを決める著者の姿がなんともマヌケですが。(笑)

その他、小遣い4万5千円で1カ月乗り切れるかとか、大人用のオムツをはいてオシッコをしてみるとか。

小遣いに関しては実際に大多数の家庭を持つサラリーマンが四苦八苦しながら乗り切ってますけどね。

オムツに関してはさすがに抵抗があってなかなか放尿できなかったようで。

居酒屋で説教オヤジに意見するは失敗に終わっています。

その他いろいろ・・・・。

「キミは他人に鼻毛が出ていますよと言えるか」に次いで第2弾となるわけですが、相変わらずバカなことを(失礼)やっておられますねぇ。(笑)

ですがとても楽しめました。

このようなふと思ったことを実際に行動に移すなんてなかなかできることではありません。

仕事とはいえ。

ぜひ今後も続編をと期待します。

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2014年08月02日

「木野評論臨時増刊 文学はなぜマンガに負けたか!?」

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「文学はなぜマンガに負けたか!?」

まさにこのタイトルがテーマであり、いろんな人たちが執筆しインタビューに答えておられます。

巻頭の対談では編集長で作家でもある鈴木隆之氏、永井豪氏、里中満智子氏、高橋源一郎氏

マンガ原作者の立場としては高橋三千綱氏や関川夏央氏。

巻末の対談では宮崎駿氏、梅原猛氏、高坂制立氏、網野善彦氏など。

錚々たるメンバーであります。

内容のすべてがこのテーマというわけではないんですけども。

しかしこのテーマについてインタビューに答え、あるいは執筆しておられるのを読みますと、皆そんなことは思ってない。(笑)

主旨が肩透かしになっている感があります。

編集の立場としては意外だったのか予想通りだったのか。

予想通りの確信犯な気もしますけどね。

なにを基準に勝ち負けを決めるのかということですが、発行部数でいえばこれはもう文学なんてマンガの足元にも及びません。

でもマンガと文学は同じ『本』という形で表現されるのでライバル視されがちですが、まったく別物です。

対比しても意味ない。

ただ最近の文学の作家はマンガの影響を受けておられるのは明らか。

よしもとばなな氏なんて少女マンガの影響がずいぶんと評論の話題になったりもしました。

そりゃマンガを読んで育ってきた世代ですから当然のことでしょう。

文学とマンガ、今後も考察されるテーマでしょうね。

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