2019年05月15日

「漂泊の牙」熊谷達也

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宮城県北西部の村にオオカミが出たという情報を得たテレビ局プロデューサーの丹野恭子は、目撃者の老人に取材します。
ところがなんとも話にならない呆け老人です。
絶滅したはずのニホンオオカミを目撃したなんてあるはずがないのです。
しかしその後山奥に住む主婦が野犬に喰い殺されるという事件が起こります。
被害者はオオカミを研究する動物学者城島郁夫の妻でした。
その後も犠牲者が発生します。
はたしてその正体は本当に野犬なのか。
それとも絶滅したはずのニホンオオカミなのか。
愛妻を喪った城島は真相を追求すべく追跡を開始します。
それをカメラに収めようと同行する恭子。
さて真実は・・・・。
こういう内容を書かせるとさすがの熊谷達也だなと。
直木賞、山本賞をダブル受賞した「邂逅の森」を始め、そのシリーズで山や動物を描いた迫真の作品を発表してこられましたからね。
それらは熊やマタギを描いておられましたが、今回はニホンオオカミです。
絶滅したはずのニホンオオカミが本当に生き残っているのか。
それを軸に、なぜその動物は次々と人を襲って喰らうのか、というミステリーの要素もあります。
オオカミの生態や山中の描写が実に臨場感あります。
一級の動物小説であり山岳小説であり冒険小説でもありますね。
堪能しました。
ラベル:小説
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2019年02月06日

「後妻業」黒川博行

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91歳の耕造が脳梗塞で倒れ病院に運ばれます。
妻は小夜子69歳。
後妻です。
実は小夜子は後妻業。
財産目当てで次々と高齢の男性と再婚死別を繰り返しています。
手を組んでいるのが結婚紹介所を経営する柏木。
二人は公正証書遺言を盾に、耕造の娘二人からほぼすべての財産をむしり取ろうとするのですが。
耕造の娘姉妹は葬式代まで騙されぽったくられるわけですが、さすがにもう黙っていられません。
妹の友人である弁護士に相談し、反撃を開始します。
その弁護士から依頼を受けた興信所の雇われ探偵本多は元マル暴担当の刑事。
調査により明らかになってきた小夜子や柏木の悪行は金になると、依頼以上に事件に突っ込んでいきます。
死別した夫たちはどれも不自然な死因で、間違いなく柏木と小夜子によって仕組まれたものです。
じわじわと外堀を埋めていく本多ですが・・・・。
いやしかし、フィクションとはいえ小夜子がなんともむかつくババアで。(笑)
それだけキャラがしっかりと確立されているということでしょう。
金の匂いをかぎつけた本多の追跡が緻密で、非常にスリリングに話が進んでいきます。
柏木と小夜子、本多の他にも、小夜子の弟で刑務所から出てきた博司、逆に小夜子から金を騙し取ろうとする舟山など、一癖も二癖もある連中が絡み合います。
実に面白かったのですが、最後がちょっとあっけない気もしましたかね。
ストンと終わってしまったような気がします。
ラベル:小説
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2018年10月06日

「百合子のひとりめし」原作 久住昌之 作画 ナカタニD.

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久しぶりにグルメ漫画を取り上げてみます。
ちょくちょくは読んでるんですけどね。
「深夜食堂」とか「目玉焼きの黄身 いつつぶす?」とか。
「美味しんぼ」もぼちぼちと。
でもいちいち取り上げてたらマンガのほうが多くなってしまうので、控えております。(笑)
で、この作品ですが、経歴と内容がちょっと異色だったもので、おっと思いまして。
原作は久住昌之氏です。
「漫画アクション」に連載されていたものの見事打ち切り。
作画のナカタニD.氏はこの作品には思い入れがあり、自費出版。
それに描きおろしを加えてこのように単行本になりました。
まず、打ち切りになって日の目を見なくなってしまった作品を自費出版するという作者の思い入れ。
そりゃそうです。
漫画家にとっては人気に関係なくすべて“我が子”ですからね。
7食目までが連載作なのですが、枠線やフキダシの線が太く、やたらバストアップが多いので画面に圧迫感があります。
描きおろしの8食目9食目は線が細くなり、俄然見やすくなっています。
そして「百合子の制作現場」としてネーム原作と作画の対比が載っているんですね。
こういうのは読者にはなかなか見る機会がありません。
ネーム原作というのはシナリオ形式ではなく、下書きをもっとラフにしたような形式のネームのこと。
久住氏はシナリオではなくネームで原作を書いておられたようです。
それが漫画家の手によってどのような完成原稿になったか。
上下段で見比べることができます。
また下書き原稿も掲載されています。
書き下ろしはシナリオ形式で、これも掲載されています。
この一冊、マンガの制作に興味ある者にとってはなかなか貴重な一冊です。
マンガ家を目指している諸君はぜひ見ておくように。(笑)
ラベル:グルメ漫画
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2018年06月24日

「脱・限界集落株式会社」黒野伸一

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前作では高齢化で過疎となった止村という田舎を救って再生させることに成功した多岐川優。
これはその続編で4年後の話です。
止村には巨大なショッピングモールができます。
目玉は『渋谷マライア』という東京で人気のファッションビルです。
それがテナントとして入ることになりました。
その盛り上がりの影響で麓の街にも駅前の再開発計画が持ち上がります。
昔ながらの雰囲気が魅力ある駅前商店街が、金儲けしか考えていないような連中につぶされてしまう。
考え方の違いから家を飛び出した多岐川優の妻、美穂は商店街のために戦います。
そして優もそれに協力し・・・・。
昔ながらの商店街や風景を残すのか、開発して新しい町を目指していくのか。
現実でもよくある問題でしょう。
その結果はほとんど後者じゃないでしょうか。
昔ながらの人情ある商店街だののどかな風景だのいっても、大部分の人は都会の便利な生活からはいまや抜けられないはずです。
商店街の個人店での買い物よりも、コミュニケーションしなくて済むスーパーやコンビニでの買い物のほうがいいと若い人たちは思っています。
そんな人たちは今後もどんどん増えていく。
なのでこういうのって都合のいい理想なんですよね。
自分は都会的な生活を維持しつつ、でも昔ながらの風情は残しておいてほしいっていう。
だからこそこのような小説が理想のシチュエーションとして読まれるのでしょう。
現代社会において、カタルシスを満たす内容ですね。
でも実際にこのような生活を維持しようとしておられる人たちもいらっしゃいます。
少数派だと思いますが、私は支持したい。
ラベル:小説
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2018年03月24日

「アニバーサリー」窪美澄

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晶子は75歳になった今でも40年続けてきたマタニティスイミングの指導員をしています。
平原真菜はその生徒でしたが、友人に連れられて無理に参加している様子でした。
栄養士の資格を持つ晶子がスイミングのあとでおこなう昼食会でも、晶子の差し出すおかずにはいっさい手をつけません。
友人が出産して卒業したあとは、真菜も二度と来ることはありませんでした。
東日本大震災の日。
電車がストップしてしまいどうしようかと思った晶子は、ここから近くに住むもうすぐ臨月を迎えるはずの真菜の家を訪ねることにします。
震災後の混乱、原発事故。
そんな中でなぜか心を閉ざしている真菜と人からお節介といわれる晶子の交流が始まります・・・・。
2人の過去を紹介しつつ、晶子、真菜の母親で料理研究家の真希、そして真菜の、世代の違う3人の女性の生きざまや物の考え方が描かれています。
働くこと、夫婦のあり方、子供を持つこと育てること、食べるということ。
時代は変わってもそれらは当然当たり前のこととして誰の前にも存在するわけですが、しかし世代によりその様相は違ったものとなります。
やはり生活のスタイルや物の考え方というのはどんどん変わっていくわけで。
でも心の中心にというか人間の中にというか、時代を超えても変わらずに持ち続けていたい温かさのようなものを切望したい気持ちになりました。
ラベル:小説
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