2020年02月17日

「明るい夜」黒川創

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風呂なし、トイレ共用の古アパートに住む朋子はチェーンのイタリア料理店でアルバイトをしています。
彼氏の工藤くんは小説を書きたいと宣言し、3年ほど勤めていた本屋を辞めてしまいました。
しかし小説を書いている気配はまったくありません。
バイト先の友達であるイズミちゃんは自身の生い立ちを朋子に語ったあと消息不明に。
京都を舞台にした不安定な3人の物語です・・・・。
読んで思いましたのは、『場所』と『時間』かな、と。
ちょっと抽象的ですね。
『自分の居場所』と『現時間の認識』と言い換えましょうか。
余計わけわからんですかね。(笑)
まあそんなことを感じました。
途中、主人公はバイトしていたレストランを辞めパン屋で働くのですが、しばらくしてレストランを訪れると店がなくなってたりするんですよね。
このエピソードなんかもそんな風に感じました。
時間と存在みたいな話になりますとかなり哲学的なのですが、この小説自体は決して小難しいものではありません。
ただそのようなテーマを含んでいるのかなと私が感じただけで。
ラベル:小説
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2020年02月03日

「よるのふくらみ」窪美澄

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圭祐・裕太の兄弟とみひろは幼馴染みです。
弟の裕太とみひろは同い年。
ですが高校生のとき兄の圭祐がみひろに告白して、2人は付き合うことになります。
裕太も実はみひろに惹かれていたのですが。
大人になり圭祐とみひろは結婚を前提とした同棲を始めます。
ですが2人にはセックスがありません。
みひろはしたくてたまらないのに。
やがて2人はすれ違いはじめ、裕太もそれに気付き・・・・。
それぞれの人物の視点から描いた連作短編集です。
兄弟と幼馴染みの女の子の三角関係。
あだち充の「タッチ」みたいなものですね。(笑)
それをもっと濃くした大人の恋情です。
若いころは勢いで付き合ったり結婚したりしてしまいますけど。
いや、これはいくつになっても同じか。
そのときはよかれと思うんですよね。
でも付き合っていくうちにズレてくる。
心、体、思考、生活のリズム、いろんな原因があります。
でも一生添い遂げたから正解、別れたから不正解とは言えませんよね。
愛のない一生を終える夫婦もある。
一時の付き合いでもずっと相手が心に残ることもある。
いくつになっても難しいですねぇ、男と女は。
ラベル:小説
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2019年05月15日

「漂泊の牙」熊谷達也

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宮城県北西部の村にオオカミが出たという情報を得たテレビ局プロデューサーの丹野恭子は、目撃者の老人に取材します。
ところがなんとも話にならない呆け老人です。
絶滅したはずのニホンオオカミを目撃したなんてあるはずがないのです。
しかしその後山奥に住む主婦が野犬に喰い殺されるという事件が起こります。
被害者はオオカミを研究する動物学者城島郁夫の妻でした。
その後も犠牲者が発生します。
はたしてその正体は本当に野犬なのか。
それとも絶滅したはずのニホンオオカミなのか。
愛妻を喪った城島は真相を追求すべく追跡を開始します。
それをカメラに収めようと同行する恭子。
さて真実は・・・・。
こういう内容を書かせるとさすがの熊谷達也だなと。
直木賞、山本賞をダブル受賞した「邂逅の森」を始め、そのシリーズで山や動物を描いた迫真の作品を発表してこられましたからね。
それらは熊やマタギを描いておられましたが、今回はニホンオオカミです。
絶滅したはずのニホンオオカミが本当に生き残っているのか。
それを軸に、なぜその動物は次々と人を襲って喰らうのか、というミステリーの要素もあります。
オオカミの生態や山中の描写が実に臨場感あります。
一級の動物小説であり山岳小説であり冒険小説でもありますね。
堪能しました。
ラベル:小説
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2019年02月06日

「後妻業」黒川博行

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91歳の耕造が脳梗塞で倒れ病院に運ばれます。
妻は小夜子69歳。
後妻です。
実は小夜子は後妻業。
財産目当てで次々と高齢の男性と再婚死別を繰り返しています。
手を組んでいるのが結婚紹介所を経営する柏木。
二人は公正証書遺言を盾に、耕造の娘二人からほぼすべての財産をむしり取ろうとするのですが。
耕造の娘姉妹は葬式代まで騙されぽったくられるわけですが、さすがにもう黙っていられません。
妹の友人である弁護士に相談し、反撃を開始します。
その弁護士から依頼を受けた興信所の雇われ探偵本多は元マル暴担当の刑事。
調査により明らかになってきた小夜子や柏木の悪行は金になると、依頼以上に事件に突っ込んでいきます。
死別した夫たちはどれも不自然な死因で、間違いなく柏木と小夜子によって仕組まれたものです。
じわじわと外堀を埋めていく本多ですが・・・・。
いやしかし、フィクションとはいえ小夜子がなんともむかつくババアで。(笑)
それだけキャラがしっかりと確立されているということでしょう。
金の匂いをかぎつけた本多の追跡が緻密で、非常にスリリングに話が進んでいきます。
柏木と小夜子、本多の他にも、小夜子の弟で刑務所から出てきた博司、逆に小夜子から金を騙し取ろうとする舟山など、一癖も二癖もある連中が絡み合います。
実に面白かったのですが、最後がちょっとあっけない気もしましたかね。
ストンと終わってしまったような気がします。
ラベル:小説
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2018年10月06日

「百合子のひとりめし」原作 久住昌之 作画 ナカタニD.

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久しぶりにグルメ漫画を取り上げてみます。
ちょくちょくは読んでるんですけどね。
「深夜食堂」とか「目玉焼きの黄身 いつつぶす?」とか。
「美味しんぼ」もぼちぼちと。
でもいちいち取り上げてたらマンガのほうが多くなってしまうので、控えております。(笑)
で、この作品ですが、経歴と内容がちょっと異色だったもので、おっと思いまして。
原作は久住昌之氏です。
「漫画アクション」に連載されていたものの見事打ち切り。
作画のナカタニD.氏はこの作品には思い入れがあり、自費出版。
それに描きおろしを加えてこのように単行本になりました。
まず、打ち切りになって日の目を見なくなってしまった作品を自費出版するという作者の思い入れ。
そりゃそうです。
漫画家にとっては人気に関係なくすべて“我が子”ですからね。
7食目までが連載作なのですが、枠線やフキダシの線が太く、やたらバストアップが多いので画面に圧迫感があります。
描きおろしの8食目9食目は線が細くなり、俄然見やすくなっています。
そして「百合子の制作現場」としてネーム原作と作画の対比が載っているんですね。
こういうのは読者にはなかなか見る機会がありません。
ネーム原作というのはシナリオ形式ではなく、下書きをもっとラフにしたような形式のネームのこと。
久住氏はシナリオではなくネームで原作を書いておられたようです。
それが漫画家の手によってどのような完成原稿になったか。
上下段で見比べることができます。
また下書き原稿も掲載されています。
書き下ろしはシナリオ形式で、これも掲載されています。
この一冊、マンガの制作に興味ある者にとってはなかなか貴重な一冊です。
マンガ家を目指している諸君はぜひ見ておくように。(笑)
ラベル:グルメ漫画
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