2014年06月17日

「灘の男」車谷長吉

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3編収録。

表題作は実在した2人の男を紹介した小説ですが、周りの人たちに取材した声を原稿に起こしたインタビュー形式です。

灘という土地において伝説的人物である濱田長蔵氏と濱中重太郎氏。

そんな2人の傑物ぶりをいろんな人が語るエピソードで浮かび上がらせていきます。

作者が灘の男のスケールの大きな生き様に憧憬と敬意を抱いておられるのが感じられます。

他の2編も同じ形式です。

これはこれで面白く読めましたが、やはり私は「糞ッ、と思うた」といった類の(笑)普通形式の小説が車谷長吉らしくていいですね。

解説には車谷氏の昔のエピソードが書かれています。

ラベル:小説
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2013年12月03日

「長生き競争!」黒野伸一

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主人公の白石聡は76歳。

何十年も離れていた地元に帰ってきます。

それがきっかけで小学生時代の同級生たち5人とよりが戻り、定期的に行われている飲み会に顔を出すことになります。

そこで提案されたのが「長生き競争」。

健康に留意し、誰がいちばん長生きするか賭けようじゃないかと。

男5人女1人のそんな賭けがスタートします。

そこに20歳のエリという聡の家に転がり込んできた居候の女も加わって・・・・。

老いだの高齢化だのといったテーマを扱っているのですが、ユーモアのある優しい切り口です。

ですがやはり死を扱っているということでシビアでもあります。

平均寿命を迎える歳になり、メンバーにはどのような変化が訪れるのか。

それは決して小説の中だけではなく当たり前に有り得る現実として読者に突きつけられます。

じゃあ年寄りではない20歳のエリは・・・・?

死を目前とした人物たちのさまざまな生活や思いが描かれています。

なんたら殺人事件といったような小説ばかり読んでいる人にぜひ読んで欲しい作品です。

「人が殺される話ってそんなに楽しい?」

つねに私が思っていることです。

ラベル:小説
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2013年10月08日

「神楽坂ホン書き旅館」黒川鍾信

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ホン書き旅館。

このホンというのは映画の脚本のことでして、脚本家や映画監督がカン詰めになってホンを書くための旅館のことをいいます。

神楽坂の路地の奥にひっそりと佇む「若可菜」。

いろんな映画関係者がここでホンを書き、出世し、名作を生み出しました。

今井正、内田吐夢、山田洋次、深作欣二・・・・。

後には野坂昭如色川武大中上健次高橋三千綱などの作家にも利用されたようです。

女将の名は和田敏子。

女優・木暮美千代の妹さんです。

姉の付き人のようなこともやっておられまして、そういう関係もあり「若可菜」は映画関係者によるホン書き旅館となっていったのですね。

ここでホンを書くと出世することから「出世旅館」なんて呼ばれたりもしたそうです。

ここにカン詰めされるようになると一流と認められたことになり、涙した人もいたとか。

山田洋次監督が「日本アカデミー賞特別功労賞を差し上げようではないか!」と著書に書いておられるそうですが、それだけ日本映画界に関わってこられた旅館なんですね。

でも今はこのような旅館が利用される時代でもなくなってきました。

寂しい話ではあります。

なので本書は貴重な記録だといえるでしょう。

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2013年09月26日

「小林よしのり論序説 ゴーマニズムとは何か」呉智英・編

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「ゴーマニズム宣言」。

漫画家、小林よしのり氏による言論漫画です。

何巻まであるのか把握していませんが、ベストセラーになりましたねぇ。

そもそも言論界(そんな世界があるのかどうかよく知りませんけども)なんてごくごく一部の人たちがあーだこーだと難しいことを発言している世界でした。

もちろん文章で。

そんな世界に小林氏は漫画で切り込んでいったわけです。

もちろん評論家だの思想家だのといった肩書きではなく漫画家として。

これには”業界”の人たちもたまげたわけです。

漫画の表現力というのは文章の比ではなかったりします。

もちろんすべてではありませんけども。

なのでこのインパクトはすごかったですね。

なによりもそれまで言論界に無縁だった人たちが漫画という媒体のおかげでそういう世界に目を向けたことは大きな成果でしょう。

本書は小林氏を支持するというスタンスです。

アンチ派からすれば面白くないかもしれません。

そして漫画家・小林よしのりを分析する本でもあります。

これは1995年の出版。

氏の現在の立場や言動、それらと見比べてみるのも一興でしょう。

 

ラベル:書評・作家
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2013年08月28日

「ふがいない僕は空を見た」窪美澄

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連作短編集です。

5編収録されているのですが、いちばん最初の「ミクマリ」がR-18文学賞受賞のデビュー作です。

斎藤くんは高校1年生。

12歳年上の主婦、あんずと彼女のマンションで週1~2回セックスする関係を続けています。

しかもアニメキャラのコスプレで。

同じ高校の松永という女の子に告白され、斎藤くんはあんずと別れることにするのですが・・・・。

次の「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」では、あんずの視点から描かれています。

あんずはマザコンの夫と暮らしているのですが、子供ができません。

姑からは執拗に子供を作れとせがまれ、不妊治療を受けながら息苦しい思いをしています。

ある日夫と姑からパソコンで動画を見せられます。

あんずの様子がおかしいことに気付いた夫が部屋に隠しカメラを取り付け、斎藤くんとのセックスを隠し撮りしていたのです。

あんずは離婚を申し出ますが、夫は頑なに別れないといいます。

そしてひたすら不妊治療を続けることになります・・・・。

次の「2035年のオーガズム」では松永の視点になり・・・・というふうに話が続いていきます。

登場する人物たちは皆大きな穴を抱えているようです。

大事なものがぽっかりと抜け落ちているような喪失感、そして悩み。

しかしそんな中で傷付きながらもせいいっぱい生きているヒリつくような躍動感もあります。

作者はデビュー作を含むこの作品集で山本周五郎賞を受賞。

確かに繊細な感性と実力を感じました。

いい一冊だったと思います。

ラベル:小説
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