2015年06月23日

「文士の魂・文士の生魑魅」車谷長吉

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小説を書く人のことを作家や小説家という以外に文士という呼び方をすることがありますけども、そのような呼び方がふさわしい人はそうそういません。

車谷長吉という人は数少ない文士だったと思います。

そんな著者は今までどのような小説を読んできたのか。

どのような文士を評価したのか。

たいへん興味深いところです。

この本ではいろんなジャンルからそれぞれ数冊を取り上げ、その作品を初めて読んだときの自身の境遇や作品から受けた印象などを述べておられます。

といっても本屋大賞系のような作品はもちろん皆無ですが。

いかにも著者らしい選択と評価です。

しかしお亡くなりになったのはたいへん残念。

またひとり文士がいなくなってしまいました。

ラベル:書評・作家
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2015年01月11日

「限界集落株式会社」黒野伸一

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勤めていたIT企業に辞表を叩きつけ、自分で事業を起こす前に少しのんびりしようと祖父が住んでいた田舎にやってきた多岐川優。

しかしそこは限界集落といわれる過疎・高齢化の村でした。

村の人たちと馴染んでいくうちに、優は農業経営を立て直し村おこしすることを決意します。

経営のコンサルタントとしての手腕はあるものの、農業の経験はまったくありません。

そんな優の大胆な改革に村の人たちは拒否反応を示します。

はたして優は村を立て直すことができるのか・・・・。

地方の過疎、高齢化、農業離れといった社会問題を取り上げ、エンターテイメントに仕上げた作品です。

あらすじとしてはけっこうお決まりのパターンではあります。

祖父の地元とはいえ都会からやってきた優の口出しに反対する村人たち。

その中のひとりが大内美穂です。

敵意をむき出しにして優に反発する美穂ですが、やがて優の考えに賛同し、さまざまな障害を乗り越え、一緒に村を立て直していくことになります。

都会から就農研修に来た3人の若者たちや、美穂の兄の正登、そして気のいい老婆たちなどの脇役もうまく配置されています。

恋愛も盛り込まれて。

このままでは消滅するしかない寒村がだんだんと栄えていく過程は読んでいて気持ちいい。

かといってスムーズにいくわけでもなくピンチがあったりして。

ストレートに楽しめるエンターテイメント小説でした。

ラベル:小説
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2014年09月03日

「食い意地クン」久住昌之

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著者は「孤独のグルメ」の原作者です。

出版されたのはもう何年も前で根強いファンに支持されてきた作品ですが、最近ドラマ化もされ広く知られることとなりました。

ドラマ中ではありませんが原作者も出演しておられますね。

さて、そんな著者の食エッセイ。

といっても美食などという言葉とは程遠く、身近な食べ物に対しての執着ぶりを書いておられます。

『ねこまんま』とか『立ち食いそば』とか。

あるいは『カップヌードル』、『ナポリタン』、『納豆』、『おにぎり』、『弁当』、『カレーライス』などなど・・・・。

そうそう、こういうのがいい。

高級な幻のなんたらとかン万円のステーキなんていわれても、それはそれで羨ましく思いますが共感はありません。

やはり庶民の原点はこういう食べ物ですよね。(笑)

グルメではありませんが食い意地は人後に落ちない。

そう自負する人は多いんじゃないでしょうか。

皆が共感できる内容だと思います。

ラベル:グルメ本
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2014年07月03日

「悪果」黒川博行

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主人公の堀内は大阪府警今里署のマル暴担当刑事です。

給料だけではやっていけず、関わった事件の情報を業界紙編集長の坂辺に流し、坂辺はその人物から広告料という名目で金を出させる。

そして堀内は坂辺から金を受取るというシノギで小遣いを稼いでいます。

暴力団の淇道会が賭場を開くという情報を掴んだ堀内は、ガサ入れで27人を逮捕します。

逮捕された客の中から金になりそうな人物の情報をいつものように坂辺に流し、坂辺はそれをネタに強請りをかけるのですが、車にはねられて死亡。

そして堀内の周りにヤクザがうろつき始めます・・・・。

警察小説というのは初めて読んだんじゃないですかね。

なかなか面白かったです。

600ページを超える長編ですが、まったく退屈を感じることなく読めました。

私の地元の大阪を舞台にしているということで身近に感じたせいもあるかもしれません。

もちろん登場人物はすべてリアルな大阪弁。

堀内と相棒の伊達のやりとりも面白い。

“業界”のシステムや用語も解説されており、勉強になりました。(笑)

前半はそのように堀内の“仕事”と“シノギ”で読ませていきまして、後半は堀内がそのシノギのせいで追い詰められていく。

調子よくいわせている堀内が逆の立場になっていくのもまたハラハラとさせられます。

楽しめました。

また他の作品も読んでみたいと思います。

ラベル:小説
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2014年06月17日

「灘の男」車谷長吉

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3編収録。

表題作は実在した2人の男を紹介した小説ですが、周りの人たちに取材した声を原稿に起こしたインタビュー形式です。

灘という土地において伝説的人物である濱田長蔵氏と濱中重太郎氏。

そんな2人の傑物ぶりをいろんな人が語るエピソードで浮かび上がらせていきます。

作者が灘の男のスケールの大きな生き様に憧憬と敬意を抱いておられるのが感じられます。

他の2編も同じ形式です。

これはこれで面白く読めましたが、やはり私は「糞ッ、と思うた」といった類の(笑)普通形式の小説が車谷長吉らしくていいですね。

解説には車谷氏の昔のエピソードが書かれています。

ラベル:小説
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