連作短編集です。
5編収録されているのですが、いちばん最初の「ミクマリ」がR-18文学賞受賞のデビュー作です。
斎藤くんは高校1年生。
12歳年上の主婦、あんずと彼女のマンションで週1~2回セックスする関係を続けています。
しかもアニメキャラのコスプレで。
同じ高校の松永という女の子に告白され、斎藤くんはあんずと別れることにするのですが・・・・。
次の「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」では、あんずの視点から描かれています。
あんずはマザコンの夫と暮らしているのですが、子供ができません。
姑からは執拗に子供を作れとせがまれ、不妊治療を受けながら息苦しい思いをしています。
ある日夫と姑からパソコンで動画を見せられます。
あんずの様子がおかしいことに気付いた夫が部屋に隠しカメラを取り付け、斎藤くんとのセックスを隠し撮りしていたのです。
あんずは離婚を申し出ますが、夫は頑なに別れないといいます。
そしてひたすら不妊治療を続けることになります・・・・。
次の「2035年のオーガズム」では松永の視点になり・・・・というふうに話が続いていきます。
登場する人物たちは皆大きな穴を抱えているようです。
大事なものがぽっかりと抜け落ちているような喪失感、そして悩み。
しかしそんな中で傷付きながらもせいいっぱい生きているヒリつくような躍動感もあります。
作者はデビュー作を含むこの作品集で山本周五郎賞を受賞。
確かに繊細な感性と実力を感じました。
いい一冊だったと思います。
posted by たろちゃん at 04:26|
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