2013年06月15日

「スミヤキストQの冒険」倉橋由美子

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スミヤキスト党員であるQがある孤島に乗り込みます。

孤島にある感化院に革命を起こそうというのが目的です。

そこにはいろんな人物がいました。

肥大した肉体を持った院長を始めとして、ドクトル、主事、神学者、文学者、などなど。

それらの個性的な人物を相手にしながら、Qのスミヤキズムによる理想の革命は成り立つのでしょうか・・・・。

これはどう考えてもマルクス主義に影響を受けて運動していた人たちに対しての強烈な皮肉でありましょう。

と思うのですが、作者はそれを巻末の「著者から読者へ」で否定しておられます。

そのように思われるのは迷惑な話だと。

そう言われてもねぇ・・・・。

私はそのような意図がありつつ(なければこんな作品は絶対に書けないはず)それを作者自身でわざわざ否定していることまでも含めて、この作品として読むべきではないかと思います。

わざと否定して混乱させているなどというのは勘ぐり過ぎでしょうか。(笑)

マルクス主義をモデルにした云々は抜きにしましても、革命という非現実的な理想論を掲げ、自身の主張など無く洗脳されたかのような主義を理想として懸命に行動する主人公Qの滑稽さ。

これはやはり特定の人たちを指定しているわけではないとしても痛烈な皮肉でありましょう。

そして作者の文学論もちらほらと挿入されています。

シュールな世界の話ではありますが、読み応えある小説でした。

ラベル:小説
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2013年05月27日

「ウエンカムイの爪」熊谷達也

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写真家の吉本は北海道で撮影していたときにヒグマに襲われます。

もうだめだと覚悟したとき一人の女性が現れ、不思議な能力でヒグマを操り吉本を救います。

その後吉本は雑誌の依頼でヒグマを捕獲して研究している大学のグループを取材することになり、そこであの時の女性と再会することになります。

女性の不思議な能力の正体はなんなのか、そして取材で吉本は何を見たのか・・・・。

作者のデビュー作です。

以前に「邂逅の森」という山本賞・直木賞をダブル受賞した力作を先に読んだせいか、ちょっと物足りなく感じてしまいました。

でもそれは順序が逆なので言いがかりですよね。(笑)

これがあの傑作に繋がっていくのだと考えると、なるほどと思えます。

作者の経歴は存じませんが、熊の生態や猟については実にお詳しい。

なのでその知識が作品にリアリティを添えて厚みになっているのですね。

小説誌の新人賞受賞作としては佳作だと思います。

ラベル:小説
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2012年11月11日

「久住昌之の人生読本」久住昌之

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81年から82年にかけて「バラエティ」という月刊誌に連載されていたエッセイをまとめたものです。

そういえばそんな雑誌ありましたね、角川書店から。

久住昌之氏の著作ということで期待して読んでみたのですが。

とんでもないクソ本でありました。(笑)

当時の風俗を取り上げ、その揚げ足を取って笑いを取るというスタンスなのですが、今から読むとそんなことをしていること自体が恥ずかしい。

当時としては上から目線でそれらを小バカにし面白がっていたものの、今となっては目くそ鼻くそを笑うです。

なので笑うに笑えないんですね。

ネタ自体も面白くありませんし。

売れないお笑い芸人の空回りな芸を見せられているようでいたたまれません。

でも食べ物をネタにしているのはやはりそれなりに面白かったです。

これは現在にも続いている著者の芸ですもんね。

まあ買う値打ちのない本です。(笑)

ラベル:エッセイ
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2012年10月06日

「坂本ミキ、14歳。」黒野伸一

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中学2年生のミキの家庭はサザエさんと同じ7人家族です。

おばあちゃん、無職のおとうさん、おかあさん、大仏顔で短大生のナナコ姐、美人のマミちゃん(高1)、俊才の源五郎(中1)。

それぞれいろんな事情を抱えています。

ナナコ姐は家を出てキャバ嬢になり男と同棲を始めます。

マミちゃんは神経症になり、源五郎は学校でいじめられ、ミキもやがてクラスで孤立することに・・・・。

出だしはちょっと軽いかなと読み始めましたが、やがて楽しく話に入っていくことができました。

家族それぞれ問題を抱えていたりしますが、それもやがていい方向に向かいます。

お決まりのハッピーエンドなわけですが、そのぶん読後感は爽やか。

以前に読んだ「万寿子さんの庭」もそうですが、読み終えてほのぼの晴れやかな気分になります。

ラベル:小説
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2012年04月28日

「世界一周恐怖航海記」車谷長吉

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嫁はん(詩人・高橋順子)にせがまれ世界一周の船旅に出ることになった長吉っつぁん。

外国など行きたくもないのですが、家に置いてきぼりにされるのもつらい。

というわけで100日間の旅がスタートです。

やはりこれは車谷長吉という異端(?)な作家の体験談だからこそ面白い。

もちろん他の作家でもそれはそれで興味深い読み物とはなるでしょうが、長吉節と世界一周というなんだかミスマッチな感じがいいんですよね。

そして船に乗り合わせたいろんな人を見る目がいかにもです。

これは日記形式なのですが、できれば日常の生活もこのように纏めて出版していただけないものでしょうか。(笑)

氏の日常には非常に興味あります。

ラベル:エッセイ
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