2010年07月15日

「日本人と味の素」郡司篤孝

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1978年に出版された本です。

かなり強烈に味の素を批判しておられます。

化学調味料という曖昧な表記ではなく(もちろんその言葉も使われています)、味の素という商品名と会社名を名指ししての猛攻撃。(笑)

化学調味料というのはそれこそあちこちで批判されていますが、やはりその批判をメジャー化させたのはマンガの「美味しんぼ」でしょうね。

おそらくその原作者もこの本はもちろん参考にされたことでしょう。

ただし「美味しんぼ」でもここまで露骨に商品名と会社名を名指しはしていないはず。

それは他の食品やメーカーについてもですが。

本書はかなり頭の痛くなるようなデータを並べて批判の根拠としておられます。

それは化学的(科学的)医学的に基づくものであり、ラーメンマニアが鬼の首取ったように化調スープの店を批判するのとはわけが違います。

ただ読んでいてちょっと強引な部分もあり、わざわざフィクションのストーリーまでこしらえることはないと思いますが。

例えば奇形児の写真なども載せておられるのですが、よく読むとそれは決して味の素が原因の奇形児とは断定していない。

「ここで奇形児の出生状況と、その写真を紹介しておくことも必要であろう。」とし、「まず日本人の死因を年齢別にみると次頁のとおりである(厚生省発表)。判断は皆さんにおまかせしたい。」として、次頁に年齢別による死因順位と割合の表を掲載しています。

そして奇形児の写真。

「判断は皆さんにおまかせしたい」とのことですが、どう判断しろと。(笑)

味の素がクロだという方向に誘導したいのはわかりますが、これではフライングだと言われてしまうでしょう。

誘導しなくとも化学調味料の有害性はじゅうぶん伝わります。

特に石油から作る合成法はどう考えても体にいいわけがない。
(昭和四十八年に廃止し、それ以降は醗酵法で製造とのこと)

そもそも化学調味料なんてこの世になくてもいいものなんですから。

そのはずが今や日本の加工食品には欠かせないものになってしまっているんですねぇ・・・・。

ラベル:グルメ本
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2010年07月14日

「日の砦」黒井千次

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連作短編集。

どれもこれといったドラマになるような出来事はありません。

日常のちょっとした”影”のような部分を切り取って物語にしておられます。

群野家という家族が主人公です。

最初の「祝いの夜」では還暦を過ぎて退職した高太郎の祝いということで、群野家4人と長男の婚約者でホテルのレストランで食事をします。

帰りはタクシーで自宅まで帰るのですが、この運転手がちょっと不気味なんですね。

高太郎が何気なく話しかけ、過去の話題になると「言わないほうがいいでしょう」。

気まずい雰囲気が車内にこもります。

それでもぼちぼちと会話があります。

「お客さんだって、何年か前の夜に私の車に乗ったのなんか、忘れているでしょう」

「え? そんなことがあった?」

高太郎はどきっとしてうろたえます。

「あったとしても、憶えてはいないだろう、という話ですよ」

そしてこの運転手、やけに群野家の住所のあたりに詳しい。

家の前まで行かず、近くの角辺りで降りたほうがいいと判断します。

車を降り、高太郎と娘は先に家に戻るのですが、料金を払った妻と長男が帰ってきません。

どうしたのだろうと思った矢先、玄関で小さな叫びが上がり、激しい足音で全力疾走の気配があります。

もしかして先ほどのタクシードライバーと何かトラブルがあったのか。

高太郎は慌てて家を飛び出しますが、妻と長男、そしてタクシーの姿もありません。

いったい何が・・・・。

どれも地味な話ではありますがなかなか読ませられます。

懐石料理の椀物のような味わいですね。(笑)

ラベル:小説
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2010年01月31日

「漂流物」車谷長吉

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短編集。

「血族のものから、これだけは書いてはいけないと哀願されていたことを、小説に書いた」

「原稿の材料とした人には、犠牲の血を流させた」

「それによって世の賛辞をあび、二度まで賞を受けた」

この本の中に直筆で出てくる文章からの抜粋です。

まさにこの作者の文学者としての生き様を表していると思います。

書かずにはいられない業を抱えた作家。

私小説を書くために生きておられるような人です。

タイトルの「漂流物」というのは自分自身のこと。

サラリーマンを経験したあと九年ほど住所不定の生活をしておられたそうです。

その後「東京での生活も、区役所に住所届けは出してはいても、漂流物の生活だった」と。

やはり表題作の「漂流物」、そして「抜髪」が圧巻です。

「漂流物」での青川という人物の語り、そして「抜髪」での母親の語り。

人間が生きていくことの業を感じずにはいられません。

ラベル:小説
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2009年12月11日

「韓国を食べる」黒田勝弘

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タイトルどおり韓国の食について書かれた本です。

といってもガイドブックの類ではありません。

著者は韓国在住20年以上の新聞記者ですが、その目で食を通じで韓国の国民性や文化をするどく面白く紹介しておられます。

「韓国人は耳で食べる」。

彼らはめし粒まで飛ばしながら大いに賑やかに食事するのだとか。

そして激辛料理を食べては「シウォナダ!(涼しい!)」と叫ぶなど、賑やかで激しい国民性が伺えます。

食の根本にやたら「精力信仰」があるというのもおかしいといいますか微笑ましいといいますか。

韓国に愛着が湧くこと請け合いな一冊です。

ラベル:グルメ本
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2009年10月19日

「アル中地獄(クライシス)」邦山照彦

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アルコール中毒症、略してアル中。

現在はアルコール依存症と呼ばれていますが。

アルコール依存症について書かれた本は多数ありますが、ほとんどが専門家や家族の立場から書かれたもので、患者の立場から書かれたものは皆無に等しいのだとか。

この著者はアル中による精神病院入退院回数36回という筋金入り(笑)の元アル中患者です。

この本では「アルコール依存症」ではなく、敢えて「アル中」という言葉を使っておられます。

患者自らがそのように呼んでおり、「依存」という相対性よりも「中毒」という合一性のほうが症状にぴったりするからとのこと。

本書の内容はさすがに自らの体験によるだけに凄まじい。

幻覚、幻聴、幻臭、幻触。

幻味以外はすべてに襲われたとのこと。

病室にて強烈な原色の世界に引きずり込まれ、激しい頭痛を覚え倒れた瞬間、頭蓋骨が砕け散り脳細胞が床一面に散乱。

悲鳴を上げながら夢中になって破片を拾い集めます。

その奇行をかたずを飲んで見守る他の患者たち。

脳細胞が飛び散ったので向こうの隅からほうきで掃いてきてくれと他の患者に頼む著者。

よし分かった、と協力してくれる患者。

しかしどうしてもあと一つが足りない。

泣きながら這いずり回り絶望していたそのとき、「トイレの前に落ちとるぞ」の言葉。

慌てて拾いにいって当てはめたものの、ベッドに戻るとまた脳みそが飛び散り・・そのまま失神。

しかしそんな禁断症状による幻覚を通り過ぎるとまったく正常な状態に戻るのだそう。

翌朝、「邦山さん、ゆうべは迫力あったぜ」「超Aクラスの禁断症状やな」「三時間くらいやってござったでな」

他の患者のお言葉です。

二十数名の人たちが著者の禁断症状に合わせてくださっていたのです。

著者は皆のことを「同志」と呼びます。

同病相哀れむ心優しき戦士たちと。

まったくすごい世界であります。

私も朝っぱらから酒を飲んでいる人間でして、まったく他人事ではないですね。

わかっちゃいるけど止められないでありますが、ぜひともこれは酒飲みを自認する人たちに読んでいただきたいです。

ラベル:グルメ本
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