2019年01月03日

「東電OL殺人事件」佐野眞一

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平成9年、東京電力に勤めるOLが何者かによりアパートの一室で絞殺されました。
この事件が異様に注目されたのは、彼女が当時企画部経済調査室副長というエリートだったこと。
そしてなにより昼はOL、夜は売春婦としてホテル街に立っていたということです。
年収が1000万円近くあったといわれるエリートOLがなぜ売春などしていたのか。
犯人として逮捕されたのは事件があったアパートの隣に住むネパール人。
しかし彼を犯人とするにはあまりにも証拠が弱いにもかかわらず、警察ははなっから彼を犯人だと決めつけて逮捕しています。
真犯人は誰なのか。
エリートOLはなぜ毎晩ホテル街に立ち客を取り続けたのか・・・・。
まず、被害者女性の心の闇といいますか、なぜ売春などしていたのかそれがまったくわからないですね。
社会的な立場もあり、年収も十分です。
にもかかわらず、仕事後に毎晩最終電車の時間まで立ち続け、何人も客を取ったといいます。
安い時は2千円、3千円という金額で。
常連客の話によると決してセックスが好きなわけではなかったようです。
そして真犯人は誰なのかということ。
逮捕されたネパール人については判決が二転三転していますが、最終的には平成24年に無罪が確定しました。
なぜ検察は執拗に彼を犯人に仕立てようとしたのか。
それにしても恐ろしい話です。
まったく聞く耳を持たず不十分な証拠で逮捕した警察、そして執拗に追い詰めた検察。
ネパール人の彼は外国でこのような冤罪をかけられて、どれほど不安で恐ろしく悔しく悲しかったことでしょう。
無罪になったものの、それまでの時間は返ってきませんし精神的苦痛は甚大なものがあります。
この本では著者はひたすら被告無罪の確信を持ち、30回にわたる公判を傍聴し、被告に何度も面会し、丁寧に事件を追っています。
しかし20年以上経った今でも被害者の心や真犯人が闇のままなすっきりとしない事件です。
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2018年12月21日

「窓際OL 会社はいつもてんやわんや」斎藤由香

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窓際OLが書くエッセイ、シリーズ第2弾です。
一流企業に勤める著者が赤裸々に社内の実態を暴露します。
しかし会社の許可も得ず(?)社長を始めとして上司のことをここまでボロクソに書いていいのでしょうか。(笑)
どこまでが本当の話かわからないのですが(すべて実話のように思う)、こんな会社が本当にあるのでしょうか。
いや、あるのはあるんですね。
だってあの『サントリー』ですから。
そこで健康食品事業部に配属され、『マカ』を宣伝して売りに売りまくったのが著者なのです。
作家、一流企業の社長、政治家にまで『マカ』を送りつけての“布教活動”。
傍若無人、大胆不敵。
実に痛快です。
ちなみに著者は祖父が斎藤茂吉、祖母は斎藤輝子、父が北杜夫、叔父が斎藤茂太。
そのような血統もありまして、交友や活動も幅広い。
そしてこのような本を出す著者のような社員を笑って許容している『サントリー』という会社。
これがなによりもすごい。
さすが「やってみなはれ」の精神ですね。(笑)
ラベル:エッセイ
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2018年12月11日

「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹

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山陰地方の山脈の奥に隠れ住む“辺境の人”にぽつんと紅緑村に置いて行かれた万葉。
村の若夫婦に引き取られ育てられましたが、やがて製鉄業で界隈に君臨する赤朽葉家に嫁ぎます。
子供の頃から未来の光景を見ることのできた万葉は千里眼奥様と呼ばれるようになります。
その娘で長女の毛毬、そして語り手である孫の瞳子。
赤朽葉家、女三代の物語です・・・・。
しっかりと世界観を作っておられるなという印象ですね。
万葉と毛毬が丁寧に描かれていますし、その二人を語りつつ赤朽葉家という家族を描き、ミステリーの要素もあり、そして1950年代からの日本の経済や風俗をきっちりと取り込んで厚みのある小説となっています。
語り手の瞳子から見て祖母は千里眼奥様、母は一世を風靡した漫画家、しかし瞳子自身は何物でもない平凡な女性。
このあたりの設定も時代を追って旧家の消滅といいますか時代の終焉といいますか、まさしく伝説的な雰囲気となっています。
私は特に第二部の毛毬の章がよかったですね。
毛毬のキャラが秀逸です。
なんだか嶽本野ばらの「下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん」を連想しましたが。(笑)
このキャラには作者も手応えを感じられたようで、後に「製鉄天使」というスピンオフ作品を書いておられます。
読んでいるあいだはどっぷりと世界に浸ることができました。
お見事。
たいへん読み応えのある力作だと思います。
ラベル:小説
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2018年09月14日

「きみは誤解している」佐藤正午

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競輪に関わる男たちを主人公にした短編集です。
表題作は婚約者の両親に挨拶することを後回しにし、父親が死にかけていても競輪場に通う男の話。
結局は婚約者よりも競輪を選びます。
他、すべて競輪という競技に取りつかれてしまった男たちです。
女性もいますが。
競輪に関わると言いましても、あくまでギャンブルとして競輪に懸ける連中の話であり、競輪そのものをモチーフとしているわけではありません。
刊行当初は競輪小説と扱われたりもしたようですが、それは的外れです。
まあ競輪をめぐってのさまざまなドラマですね。
シビアなギャンブル小説にもなっていないところがやはり佐藤正午でしょう。
女性に対しても人生に対してもお金に対しても飄々としているというか、達観しているといいますか。
そしてやはり上手いなぁと思いますね。
ラベル:小説
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2018年07月18日

「サービスの達人たち 究極のおもてなし」野地秩嘉

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サービスマンを取り上げたシリーズの、これは第4弾になるんでしょうか。
著者のライフワークですかね。
今回紹介されているのは、飛び込みの営業でベンツを日本一売る男、戦後最高のカフェ店主の神接客、デパ地下でとんかつを売りまくる女性店長、など。
なぜ彼らは客の心を捉え、商品を売ることができるのか。
著者はポリシーとしてただ取材だけではなく、実際に彼らのサービスを体験するんですね。
といってもベンツを買うわけにもいかず、デパートの美容部員から化粧の手ほどきをしてもらうわけにもいかなかったようですが。(笑)
ただベンツの場合は取材の同行者が実際にベンツを買ってしまったそうですし、美容部員の場合は女性編集者とカップルを装って化粧品売り場を徘徊したり、わざわざ地下で食料品を買ったりして客を装ったりして普段の仕事ぶりを観察されたようです。
達人たちのノウハウはそれぞれですが、皆自分の仕事を苦労とも思わず楽しんでやっておられるとのこと。
そうですね、いやいややっていてお客さんに喜ばれるわけないですもんね。
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