2020年11月13日

「誰もいない夜に咲く」桜木紫乃

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7編収録の短編集。
日本海のそばにある小さな町で親から受け継いだ牧場を経営する秀一。
農業研修という名目でやってきた中国人娘たちの一人、5歳年下の花海と結婚します。
秀一は30歳になるまで女を抱いたことがありませんでした。
言葉の通じない花海に寄せる秀一の思い、そして花海の思いとは・・・・。(波に咲く)
口では大きなことを言いながらまともに働きもしない男を体を売って食わせてやっている千鶴。
しかしマグロというあだ名で評判が悪い。
そんな千鶴のどこが気に入っているのか、週に一度必ず指名する加藤という男が唯一の常連です。
加藤は水産会社を経営しているとのことですが、見た目もパッとせず気の小さそうな雰囲気からはあまりそのようには見えず、しかし毎週3万円で千鶴を買う金があるのだからまるきりの嘘ではないのかもしれません。
店にピンハネされるくらいならと専属契約さえ持ちかけてきます。
後日、千鶴が見た加藤の本当の姿とは・・・・。(海へ)
この作者の作品は何冊か読んでいますが、どれも暗いですね。
北海道生まれで現在も在住ということで、その北海道の明暗でいえば暗の部分を舞台にして書いておられる印象です。
本書もやはりどんよりとした曇天のような重さがあります。
そんな中での女性の強さ、したたかさ、哀しさ。
ストリッパーを取材するライターの話、「フィナーレ」の志おりという女性もよかった。
どれもロマンチックな要素などありませんが、じんわりと染み入るものがあります。
ラベル:小説
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2020年09月19日

「製鉄天使」桜庭一樹

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東海道を西へ、西へ、中国山地を越えて、さらに下ったその先、地の果てみたいな、日本の最果て・・・・鳥取県赤珠村。
そんな村の経済を支える名家の製鉄会社赤緑豆製鉄の長女が赤緑豆小豆。
バカお嬢と呼ばれています。
ヤンチャですでに中高生にも名前を知られた小学生ですが、中学に入ってボコボコにされます。
しかしふざけて乗り回していたバイクの仲間がだんだんと集まり、やがては『製鉄天使』という暴走族を立ち上げ総長に。
小豆の中国地方制覇が始まります・・・・。
これは「赤朽葉家の伝説」のスピンオフ作品です。
赤朽葉毛毬が主人公である第二章の前半部分を深く書き込んでいるといいますか。
登場人物の名前はすべて変更されていますし、表現もかなりマンガっぽくなってはいますが。
まあそれがド田舎のヤンキー女を描くのに効果を発揮しています。
で、この作品にはちょっとした仕掛けがありまして、それがエピローグ以降で明かされるわけですが、これって必要だったのかな。
私は蛇足だと思いましたし、なのでこの仕掛け自体も必要ないと思ったんですけどね。
ところで鳥取県てそんなに最果て?(笑)
そういう設定だからこそ登場人物たちにとっては中国地方制圧という目標が世界制圧ほどのレベルとして描けたんでしょうけど。
さすがに日本制圧となるとこれはもう「男一匹ガキ大将」の世界になってしまい、いくらなんでも風呂敷広げすぎになってしまいますもんね。
ラベル:小説
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2020年08月29日

「完全保存版 まんが道大解剖」サンエイムック

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マンガ好き、というか70年代~80年代にマンガ家を目指していた人たちにとってはバイブル的な作品が「まんが道」です。
さすがに現在の若い人たちはどうか知りませんけども。
主人公は満賀道雄こと藤子不二雄A氏。
手塚治虫に憧れ、マンガ家になるため友人の才野茂(藤子・F・不二雄)とともに富山県の氷見・高岡から上京して伝説のトキワ荘に住むことになります。
トキワ荘。
う~ん、マンガファンにとっては聖地のような場所ですね。
1982年に解体され、今はもうありませんけど。
マンガの歴史を語る上で避けて通れない場所です。
最初に手塚治虫が住み、そして寺田ヒロオ、手塚が出たあとに藤子不二雄、鈴木伸一、森安なおや、石森章太郎、赤塚不二夫、水野英子と続きます。
通い組ではつのだじろう、園山俊二など。
つげ義春、松本零士、ちばてつやなどもトキワ荘を訪れたことがあるそうです。
そのトキワ荘時代を描いたのが「まんが道」なんですね。
今のようにマンガ家が長者番付に名を出すような時代ではありませんでした。
なので一攫千金とかではなく、ただひたすらマンガが好きで描き続けた人たちです。
四畳半の狭い部屋でカリカリカリカリ・・・・。
藤子氏がトキワ荘に移る前は二畳の部屋に二人ですからね。
まあそのようなマンガに懸けた青春物語である「まんが道」をいろんな角度から紹介、解説したガイドブックがこの本なわけです。
登場人物やいろんなシーン、藤子不二雄A氏へのインタビューはもちろん、まだ電話が普及していなかった当時の出版社からの原稿催促電報なども公開されています。
そしてトキワ荘の見取り図、解体前の外部や内部の写真なども。
藤子氏のトキワ荘時代を知ることができるだけでなく、マンガ史の資料としても価値のある一冊です。
ラベル:マンガ本
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2020年08月19日

「旬の魚を食べ歩く」斎藤潤

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タイトルからわかるように内容はそのまんまなのですが。
正直私も大した期待はせず読み始めたのです。
こういう類の本はいままでに何冊も読んでますし。
でも違った。
読んでいて引き込まれ、この面白さは何だろうと思いました。
内容は、魚好きの著者がいろんな土地(漁港)に出向き、漁に同船され、市場なども取材されています。
そして民宿なんかで地元の料理を堪能しておられるのですね。
「こんなのしかありませんが」と出される、その地元の料理の素晴らしいことよ。
いや、もちろん私はこの本を読んだだけです。
読んだだけですが、それらの料理の素晴らしさがひしひしと伝わってくるのですね。
取材先ではその土地ならではの料理を所望し、堪能しておられる。
そう、これなんですよね。
現地に足を運ばなければ味わえない絶品がある。
取材した漁師さんは「これ食べてみ」と、漁に同行せねば味わえないような貴重な珍味を惜しげもなく著者に食べさせる。
私のようにスーパーの魚しか知らない者にとっては未知の世界です。
そして民宿。
その土地の魚を知り尽くしておられる宿での食事
こういうのがいい。
飾らなくていいです。
その土地の人たちが普段食べている料理。
何もないけどと言いながら、都会人が目を見張るような料理を出される。
たまりませんね。
魚でも野菜でも産地に出向き、本物の味を知る。
当たり前のことをしっかりと認識しなおしました。
ラベル:グルメ本
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2020年07月16日

「〈美少女〉の現代史 「萌え」とキャラクター」ササキバラ・ゴウ

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現在のマンガやアニメにおいて、美少女というのは欠かせない存在です。
ではこの美少女というのはいつから登場するようになったのか・・・・。
もちろんマンガの中に登場するヒロインたちは皆美少女としてかわいく描かれてました。
でも最初のころはそれに“意味”はありませんでした。
さすがにわざわざブサイクには描きませんしね。
しかしだんだんとヒロインに“萌え”るファンが出てくるのですね。
まあ、ざっくばらんにいいますとオタクです。
マニアックな人たちが作品内の美少女キャラに注目する。
そうなると特定のマンガ家が注目を浴びたりする。
例えば吾妻ひでおとか。
やがてラブコメブームなんてのがやってきます。
有名なところではあだち充とかですね。
(柳沢きみおの「翔んだカップル」がラブコメの元祖といわれたりもしているのですが、本書ではそのような扱いはされていません。美少女マンガとはちょっと違うからか。笑)
ロリコンブームなんてのもありました。
内山亜紀なんてその代表だったように記憶しています。
少年チャンピオンというメジャー誌にまで進出しましたから。
で、本書の内容としましては、マンガやアニメにおいての「美少女」という存在の変遷を、マンガ・アニメ史を追いつつ、世間の風潮もちょっと意識しつつ、その時代時代でどのように捉えられてきたのか、なぜそのように変化してきたのかということを分析しておられます。
それはマンガの世界でもそうですし、現実においても価値観の変化がありますから。
少年マンガでは「スポ根」などというスポーツにそれこそ命を懸けるようなマンガもあったわけです。
「巨人の星」みたいな。
またそれに読者も胸を熱くしたわけですが。
これが現代になりますと(といってもけっこう前になりますが)同じ野球マンガでも「タッチ」になってしまうんですよね。
主人公は野球そのものに情熱を燃やしているわけではなく、ましてや命なんて懸けるわけもなく、美少女(朝倉南)を甲子園に連れていくのが目的だと。
美少女というのが作品内で非常に重要な役割を果たしていることになります。
彼女の存在が主人公(男)を行動させる動機になっています。
ま、そのようなことを詳しく分析、解説しているのがこの一冊です。
「美少女」をモチーフにマンガ史を語っているともいえます。
ラベル:マンガ本
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