2018年12月11日

「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹

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山陰地方の山脈の奥に隠れ住む“辺境の人”にぽつんと紅緑村に置いて行かれた万葉。
村の若夫婦に引き取られ育てられましたが、やがて製鉄業で界隈に君臨する赤朽葉家に嫁ぎます。
子供の頃から未来の光景を見ることのできた万葉は千里眼奥様と呼ばれるようになります。
その娘で長女の毛毬、そして語り手である孫の瞳子。
赤朽葉家、女三代の物語です・・・・。
しっかりと世界観を作っておられるなという印象ですね。
万葉と毛毬が丁寧に描かれていますし、その二人を語りつつ赤朽葉家という家族を描き、ミステリーの要素もあり、そして1950年代からの日本の経済や風俗をきっちりと取り込んで厚みのある小説となっています。
語り手の瞳子から見て祖母は千里眼奥様、母は一世を風靡した漫画家、しかし瞳子自身は何物でもない平凡な女性。
このあたりの設定も時代を追って旧家の消滅といいますか時代の終焉といいますか、まさしく伝説的な雰囲気となっています。
私は特に第二部の毛毬の章がよかったですね。
毛毬のキャラが秀逸です。
なんだか嶽本野ばらの「下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん」を連想しましたが。(笑)
このキャラには作者も手応えを感じられたようで、後に「製鉄天使」というスピンオフ作品を書いておられます。
読んでいるあいだはどっぷりと世界に浸ることができました。
お見事。
たいへん読み応えのある力作だと思います。
ラベル:小説
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2018年09月14日

「きみは誤解している」佐藤正午

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競輪に関わる男たちを主人公にした短編集です。
表題作は婚約者の両親に挨拶することを後回しにし、父親が死にかけていても競輪場に通う男の話。
結局は婚約者よりも競輪を選びます。
他、すべて競輪という競技に取りつかれてしまった男たちです。
女性もいますが。
競輪に関わると言いましても、あくまでギャンブルとして競輪に懸ける連中の話であり、競輪そのものをモチーフとしているわけではありません。
刊行当初は競輪小説と扱われたりもしたようですが、それは的外れです。
まあ競輪をめぐってのさまざまなドラマですね。
シビアなギャンブル小説にもなっていないところがやはり佐藤正午でしょう。
女性に対しても人生に対してもお金に対しても飄々としているというか、達観しているといいますか。
そしてやはり上手いなぁと思いますね。
ラベル:小説
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2018年07月18日

「サービスの達人たち 究極のおもてなし」野地秩嘉

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サービスマンを取り上げたシリーズの、これは第4弾になるんでしょうか。
著者のライフワークですかね。
今回紹介されているのは、飛び込みの営業でベンツを日本一売る男、戦後最高のカフェ店主の神接客、デパ地下でとんかつを売りまくる女性店長、など。
なぜ彼らは客の心を捉え、商品を売ることができるのか。
著者はポリシーとしてただ取材だけではなく、実際に彼らのサービスを体験するんですね。
といってもベンツを買うわけにもいかず、デパートの美容部員から化粧の手ほどきをしてもらうわけにもいかなかったようですが。(笑)
ただベンツの場合は取材の同行者が実際にベンツを買ってしまったそうですし、美容部員の場合は女性編集者とカップルを装って化粧品売り場を徘徊したり、わざわざ地下で食料品を買ったりして客を装ったりして普段の仕事ぶりを観察されたようです。
達人たちのノウハウはそれぞれですが、皆自分の仕事を苦労とも思わず楽しんでやっておられるとのこと。
そうですね、いやいややっていてお客さんに喜ばれるわけないですもんね。
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2018年06月28日

「河口へ」佐藤洋二郎

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短編集。
どの作品も肉体労働者を主人公としています。
そして現場には外国人労働者がいます。
『クロ』と呼ばれる肌の黒い外国人、『パキ』と呼ばれているのはパキスタン人。
そんな中で汗を流して働いている男の日々が描かれています。
今の若い人とひとくくりにはできませんが、そういう人たちとは対極の生活ですね。
おしゃれなスポットが出てくるわけでなし。
あ、東京ディスニーランドなんて出てきます。
しかしそれは現場から眺めることができる場所というだけだったりします。
いい女が出てきて恋愛物語が始まるわけでもありません。
出てくるのは飯場の飯炊き女です。
あるいは場末の飲み屋の女。
そんな女に手を出そうとしている男たち。
たぶんこの作品集を読んでもいまやピンとくる人は少ないんじゃないでしょうか。
ネクタイ締めてスーツ着て冷暖房の効いたオフィスで仕事している人たちとは別世界。
今の若い人たちが求めているのとは真逆の生活です。
ですがこういう世界や生活があるのは事実で、だからこそ世の中が成り立っているわけです。
当事者としてはごく当たり前の日常なんですけどね。
社会の下の層といえるかもしれません。
ですがそんな視線をしっかりと皮肉も込めずに淡々と描いているのがこの作品集。
浮かれていないしっかりと地に足の着いた視線があります。
ラベル:小説
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2018年04月19日

「寿司屋のかみさん とびっきりの朝ごはん 今日は何を食べよう・・・?」佐川芳枝

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「寿司屋のかみさん」シリーズの一冊です。
この本では朝ごはんをテーマにしておられます。
寿司屋さんというのはどのような朝ごはんを食べておられるのか。
毎日いい魚を扱っておられるのでさぞかし豪華な朝食では。
たしかにこの本を読みますと店の残りの魚を使ったりして、なかなか贅沢な朝食が出てきます。
といってももちろん毎日そんなのを食べておられるわけではなく、パンの時もあればごく普通に納豆と佃煮なんてことも多々あるとのこと。
しかしまあ一般家庭よりは魚に関してバラエティもあり、美味しいものを食べておられるようです。
レシピというほどの詳細ではありませんが、いろいろと食べ方も紹介しておられます。
朝ごはんとのことですが、時間は11時半くらいだそうです。
世間一般で言えば昼ごはんですよね。
昼食は4時半。
半日ずれています。
早朝から仕入れ、帰ってきて仕込み、そしてようやく朝ごはんとなるようです。
なかなか大変ですね。
そんな忙しい合間を縫って支度する朝ごはん。
実に美味しそうです。
ラベル:グルメ本
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