2017年07月17日

「泣いたらアカンで通天閣」坂井希久子

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大阪は新世界のはずれにあるラーメン屋『味よし』。
親父のゲンコが作るラーメンは不味く、いつも閑古鳥が鳴いています。
やる気のないゲンコに活を入れながらどうにか店を支えている一人娘のセンコ。
そんな日常の中、『味よし』の向かいにある質屋『かめや』の息子カメヤが東京から帰ってきます。
カメヤはセンコの幼なじみ。
出張で帰ってきたという割にはどうも様子がおかしいのですが・・・・。
ベタベタな話ですねぇ。(笑)
新世界といういかにも大阪を象徴する街を舞台にし、これ見よがしの大阪弁とキャラクター。
ちょっと鼻に付くものの、ここまで徹底するとこれはこれでしっかりとした世界であり作品です。
笑いあり、涙あり、人情あり。
吉本新喜劇の小説版といったところでしょうか。
ラベル:小説
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2017年06月13日

「マンガの遺伝子」斎藤宣彦

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マンガに「モノサシ」を当てて検証してみようというのが本書の趣旨です。
なんだかよくわからない表現ですが、まあそれぞれテーマ別にマンガの変遷を追ってみようといった感じでしょうか。
第一章なら野球マンガ。
第二章ではそんな中で魔球についていろいろと。
最初に出てくるのは井上一雄の「バット君」。
そしてあだち充の「タッチ」まで。
第三章は「ギャグ」です。
やはり赤塚不二夫を語らないわけにはいきません。
第四章は「速度」。
車のスピード感の描写など。
手塚治虫「新寶島」の冒頭は語り草です。
今となってはなんとも思えませんが。
ジャンルとしては第七章で「料理マンガ」を取り上げておられます。
いまや完全にひとつのジャンルとして定着しましたもんね。
猫も杓子も的なところが無きにしも非ずですが。
最後の第九章では「マンガ家マンガ」について。
その通りマンガ家を描いたマンガですね。
古くは永島慎二の「漫画家残酷物語」。
藤子不二雄の「まんが道」はまさしくその王道でしょう。
相原コージ・竹熊健太郎の「サルでも描けるまんが教室」などは、業界の裏話やパロディも盛り込んだマニア受け必至な内容。
ざっくりとですが、昔から現在まで、テーマ別にマンガの歴史がわかる一冊となっています。
ラベル:漫画本
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2017年05月18日

「カップルズ」佐藤正午

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短編7編。
街のさまざまな『噂』を耳にし、それに関わることになる主人公。
主人公は作家です。
もちろん作者を思わせます。
さて、それぞれの噂にはどのようなドラマがあるのか。
冷めきった夫婦、手袋をきっかけに出会ったカップル、不幸な事件で夫を亡くした未亡人・・・・。
それぞれに主人公が関わりつつ、それらの話が紹介されます。
どれもさりげなく日常的なんですけど、それはあくまで小説として。
現実にはこんな話はそうそうありません。(笑)
でもそれをごく普通の日常のようにさりげなく書くあたりが佐藤正午なんですね。
淡々といいますか飄々といいますか。
この作家にかかれば、どんな日常でもドラマにしてしまうのではないかと思えてきます。
それほど巧いんです。
実に巧い。
この作品集の内容について「じゃあどうなんだ」と問われると、具体的に「こうなんです」とは答えられない。
しかし小説を読む楽しみがじゅわっと滲み出てくるような、そんな一冊だと思います。
ラベル:小説
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2017年05月06日

「本が多すぎる」酒井順子

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鋭い視点とユーモラスな文章でさまざまなジャンルについてエッセイを書いておられる著者。
そんな著者が日記形式で綴った書評エッセイです。
いつもは「ですます」調で書いておられますが、本書に限っては「だである」調。
ご本人は少し恥ずかしがっておられますが。
でも書評としてはともかく日記でもありますから、「ですます」ではちょっと違和感ありますよね。
紹介しておられる本はやはり多岐にわたっています。
ノンフィクションや小説はもちろん、旅行のガイドブックや写真集、タレント本に手芸本、和歌に鉄道、グルメ本、SM、スカトロ、ネクロフィル・・・・。
さすがです。
純粋な書評ではなく読書日記といいますか書評エッセイですから堅苦しさはなく、普段の著者のエッセイ視点も楽しめます。
読み応えたっぷりの500ページというボリュームも嬉しい。
タイトルの「本が多すぎる」ですが、本書の中のエピソードから取られているんでしょうね。
著者が都心の大きな本屋さんに行ったら、「ちょっといっぱいありすぎんじゃねぇのかー、本!」というおじさんの声が聞こえてきたとか。
奥さんらしき女性がすかさず「本屋さんなんだから当たり前じゃないのよっ」と一言。
いや、ほんと本が多すぎます。
その大部分は読んだことのない本なわけで、本好きにとってはあれも読まねばこれも読まねばと気が狂いそうになります。(笑)
著者も「無間地獄を見るような気分になってくる」と書いておられますし。
しかしそれもまた本の楽しさのうちでしょうか。
ラベル:書評・作家
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2017年04月26日

「ホテルローヤル」桜木柴乃

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北海道は釧路の湿原を見下ろす高台にあるラブホテル『ホテルローヤル』。
このホテルに関わる様々な男女たちの短編集です。
投稿雑誌に送るための写真を撮るカップル。
ホテルにアダルトグッズを納品する営業マン。
舅と同居し世話をしながら切り詰めた生活をしている夫婦。
妻が浮気している単身赴任の高校教師と親に捨てられた女子高生。
『ホテルローヤル』で働く従業員、そして経営者。
様々な人間模様が描かれます・・・・。
ラブホテルという淫靡な場所。
まず密室であるわけですが、これは普通のホテルでも同じこと。
ただカップルで利用するホテルであり、また目的は男女のそれなわけですから、どうしても濃密でドラマな場所となります。
ですがこの作品集ではそのような密室内での男女のドロドロを描いているわけではありません。
舞台がホテルの室内に限定されているわけではなく、むしろホテル内でのどうこうはさらりと触れる程度といっていいでしょう。
このホテルを利用するいろんな人たちにとってはただのラブホテルですが、そんな人たちにはどのような人生があるのか。
そこを描いています。
そしてそのような人たちを受け入れるホテルの経営者側も描かれており、むしろそちらが話の柱となっています。
この本は第149回直木賞を受賞。
直木賞というにはちょっと薄いんじゃないかという印象があるんですけどね。
でもまあそこそこ味わえる小説ではありました。
ラベル:小説
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