2017年05月18日

「カップルズ」佐藤正午

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短編7編。
街のさまざまな『噂』を耳にし、それに関わることになる主人公。
主人公は作家です。
もちろん作者を思わせます。
さて、それぞれの噂にはどのようなドラマがあるのか。
冷めきった夫婦、手袋をきっかけに出会ったカップル、不幸な事件で夫を亡くした未亡人・・・・。
それぞれに主人公が関わりつつ、それらの話が紹介されます。
どれもさりげなく日常的なんですけど、それはあくまで小説として。
現実にはこんな話はそうそうありません。(笑)
でもそれをごく普通の日常のようにさりげなく書くあたりが佐藤正午なんですね。
淡々といいますか飄々といいますか。
この作家にかかれば、どんな日常でもドラマにしてしまうのではないかと思えてきます。
それほど巧いんです。
実に巧い。
この作品集の内容について「じゃあどうなんだ」と問われると、具体的に「こうなんです」とは答えられない。
しかし小説を読む楽しみがじゅわっと滲み出てくるような、そんな一冊だと思います。
ラベル:小説
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2017年05月06日

「本が多すぎる」酒井順子

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鋭い視点とユーモラスな文章でさまざまなジャンルについてエッセイを書いておられる著者。
そんな著者が日記形式で綴った書評エッセイです。
いつもは「ですます」調で書いておられますが、本書に限っては「だである」調。
ご本人は少し恥ずかしがっておられますが。
でも書評としてはともかく日記でもありますから、「ですます」ではちょっと違和感ありますよね。
紹介しておられる本はやはり多岐にわたっています。
ノンフィクションや小説はもちろん、旅行のガイドブックや写真集、タレント本に手芸本、和歌に鉄道、グルメ本、SM、スカトロ、ネクロフィル・・・・。
さすがです。
純粋な書評ではなく読書日記といいますか書評エッセイですから堅苦しさはなく、普段の著者のエッセイ視点も楽しめます。
読み応えたっぷりの500ページというボリュームも嬉しい。
タイトルの「本が多すぎる」ですが、本書の中のエピソードから取られているんでしょうね。
著者が都心の大きな本屋さんに行ったら、「ちょっといっぱいありすぎんじゃねぇのかー、本!」というおじさんの声が聞こえてきたとか。
奥さんらしき女性がすかさず「本屋さんなんだから当たり前じゃないのよっ」と一言。
いや、ほんと本が多すぎます。
その大部分は読んだことのない本なわけで、本好きにとってはあれも読まねばこれも読まねばと気が狂いそうになります。(笑)
著者も「無間地獄を見るような気分になってくる」と書いておられますし。
しかしそれもまた本の楽しさのうちでしょうか。
ラベル:書評・作家
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2017年04月26日

「ホテルローヤル」桜木柴乃

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北海道は釧路の湿原を見下ろす高台にあるラブホテル『ホテルローヤル』。
このホテルに関わる様々な男女たちの短編集です。
投稿雑誌に送るための写真を撮るカップル。
ホテルにアダルトグッズを納品する営業マン。
舅と同居し世話をしながら切り詰めた生活をしている夫婦。
妻が浮気している単身赴任の高校教師と親に捨てられた女子高生。
『ホテルローヤル』で働く従業員、そして経営者。
様々な人間模様が描かれます・・・・。
ラブホテルという淫靡な場所。
まず密室であるわけですが、これは普通のホテルでも同じこと。
ただカップルで利用するホテルであり、また目的は男女のそれなわけですから、どうしても濃密でドラマな場所となります。
ですがこの作品集ではそのような密室内での男女のドロドロを描いているわけではありません。
舞台がホテルの室内に限定されているわけではなく、むしろホテル内でのどうこうはさらりと触れる程度といっていいでしょう。
このホテルを利用するいろんな人たちにとってはただのラブホテルですが、そんな人たちにはどのような人生があるのか。
そこを描いています。
そしてそのような人たちを受け入れるホテルの経営者側も描かれており、むしろそちらが話の柱となっています。
この本は第149回直木賞を受賞。
直木賞というにはちょっと薄いんじゃないかという印象があるんですけどね。
でもまあそこそこ味わえる小説ではありました。
ラベル:小説
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2017年04月18日

「亡食の時代」産経新聞「食」取材班

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本書はまず冒頭で日本の食卓がおかしくなっていると指摘します。
「飽食の時代」が食文化を破壊し、食への感謝の気持ちを奪い去ってしまったと。
そしていまや「亡食の時代」になろうとしていると・・・・。
現在の日本の「食」に異常さを感じている人は多数いるんじゃないでしょうか。
いや、いてほしい。(笑)
この本でも紹介されていますが、ある小学生の朝ごはんがガムであるとか。
それに比べたら味覚破壊や添加物が指摘されるファストフードやインスタント食品のほうがまだ食事らしい。
しかしそういう人たちに多いのがおにぎりを食べながらジュースを飲むとか。
これはもう当たり前に見かけますね。
ファミリーレストランでも料理を食べながらドリンクバーのジュースを飲んでます。
カップラーメンにマヨネーズをぶっかける人までいるようです。
組み合わせの異常さということでは学校給食なんかも問題視されていますね。
ごはんに牛乳に雑煮とか。ホットケーキにおかゆとか、牛乳に焼き鳥に焼きそばとか。
味覚も無茶苦茶なら組み合わせのセンスも無茶苦茶です。
知識においても、料理教室に通う二十歳を過ぎた“大人”が自宅で米や野菜を洗うのに洗剤を使ったとか。
きくらげは海に泳いでいるとか。
魚は切り身でしか見たことがない子供とか。
もういやはや・・・・。
大量に廃棄される食材や料理も気になるところです。
なんとコンビニでは毎月いくら以上の廃棄ロスを出せなんて本部からの指示があるとか。
つねに新しい商品を置くほうが利益が上がるからだそうです。
呆れてものが言えません。
食事の時に「いただきます」、「ごちそうさま」なんて手を合わせている人は、外食なんかでは100人に1人いるかいないかじゃないですかね。
ほとんど見かけることがありません。
家庭でもどこまで躾されているやら。
そして食品の偽装問題もあります・・・・。
まさしく飽食が日本人を狂わせたとしか思えません。
しかし最終章では「再生への胎動」ということで、危機感を持った自治体や学校、企業、個人などの食の再興への活動が紹介されています。
ラベル:グルメ本
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2017年03月19日

「戦場でメシを食う」佐藤和孝

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著者はアフガニスタンやボスニア・ヘルツェゴビナ、イラクなどを取材してきたジャーナリストです。
死と隣り合わせのそんな紛争地で、人々は何をどのように食べているのか。
市民やゲリラ、そしてもちろん現地で取材する著者自身も。
本書は戦場という過酷な土地の食糧事情(だけではありませんが)を伝えるルポタージュであり、どんな状況でも腹は減り食わずにはいられない人間のやるせなさを指摘した本でもあります。
いずれにしてもその食事の状況というのはグルメなどという言葉とは程遠いものであり、食うために命を懸けていたりするんですよね。
食わずには生きていけない→ゲリラとして組織に入れば食事が付いてくる→命を懸けてメシにありつく、という構図です。
今の日本ではまず考えられない話ですね。
こういうシビアな実態を改めて知りますと、ほんと平和な国で飽食の中食べることについて好き放題言っているのが情けなくなってきます。
物を食べて生きていくということはもっと重いものであるべきだと。
自己嫌悪ですね。
食事や食糧というものについて、もっと真摯な気持ちを持たなければ・・・・。
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