2018年11月19日

「活字の海に寝ころんで」椎名誠

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「活字のサーカス」「活字博物誌」に続いてシリーズ第3弾。
サーカスと博物誌のあとは海に寝ころがりました。(笑)
今回は『食』について書かれた本を多く取り上げておられます。
最初に「辺境の食卓」ということで『極限地帯や極限状況に置かれた人間が何をどうやって食って生きてきたか』ということに興味があり、そのようなものをまとめたとあります。
アマゾンやチベットではどのようなものを食べているのか。
そしてオーストラリアやアフリカの砂漠では。
中国では。
極限状況ということであれば漂流があります。
船が難破して脱出し、漂流、あるいは無人島に流れ着いてどのような食生活を送ってきたのか。
いろんな人が「漂流記」を書いておられるようで、南極では17ヶ月の中でペンギンを食べ、アザラシを食べ、やがては役に立たなくなったソリ牽き用の犬まで食べます。
アザラシの肉ばかり食べていた皆にとって犬肉は御馳走だったとか。
海を漂流した人たちはやはり魚になるわけですが、けっこうウミガメが食料として役に立ったようです。
特に卵は美味で、雌亀は肝臓がとりわけおいしいとか。
しかしまあ人間、極限状況になるとなんでも食べざるを得ないわけで、あーだこーだと顔をしかめてなんかいられないわけです。
これは戦時中の日本人もそうですよね。
戦地の兵隊さんもそうでしたし、日本で戦火から逃れた人たちもそうでした。
「火垂るの墓」の幼い兄妹なんか見ましたら、食べ物にあーだこーだなんて言えたものではありません。
なので私はグルメごっこから卒業してずいぶんとなります。
食べられることがありがたい。
そして何を食べても美味しいと思えるのがいちばんです。
著者はあとがきに『平素我々はいかに無意識のうちにうまいものを食って堕落しているか、ということも同時に分かり、しばらく気持ちがぐったりした』と書いておられます。
まさしくですね。
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2018年09月06日

「オムライスの秘密 メロンパンの謎 人気メニュー誕生ものがたり」澁川祐子

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普段特に意識せずに食べている日常のいろんな料理。
当然それぞれにルーツがあるわけで。
というわけで、この本では日本の定番ともいえる料理のルーツを検証しておられます。
ただ、そのような類の本は今までにもいろいろあるわけで、それらと同じことをしても意味がない。
なので元祖といわれる店に取材するとかそういうことはせず、一般に出回っている説を文献によってあらためて検証してみようという試みです。
紹介されている料理はタイトルのオムライスやメロンパンも含めて28種類。
カレーだの餃子だの牛丼だの。
どれも馴染みの料理ばかりです。
元祖の店を取材してその店の言い分を聞いて文章にするだけではそれで終わってしまうわけですが、いろんな文献で多角度から見ることによって新たな発見もあったりするわけですね。
例えばカツカレー。
私が知識として知っていたのは、昭和20年代にプロ野球選手の千葉茂が銀座の「グリルルイス」という店でカツとカレーを別々に食べるのは面倒だからということで注文したのが元祖というものでした。
しかし大正時代に「河金」という浅草の洋食屋が河金丼という名前で出していたといいます。
タイトルにあるメロンパンにしても、見た目の格子状の縞模様がメロンに似ているからというのがよく言われますが、話はそのような単純なものではなかったのですね。
元祖といわれる店の言い分やひとつの文献だけを参照していれば疑いもなくそれを信用してしまうわけです。
ですがいろんな文献を調べれば巷で言われる由来よりも古い時代に既に存在していたことがわかったりします。
また必ずしもどこかの店とかどの料理人が始めたとかではなく、同時多発的に各地で生まれた可能性も推察できます。
300年以上前の文献にも目を通し、そこから著者なりの推察も加え、纏めたのがこの本です。
いやはや、お疲れさまでした。
ラベル:グルメ本
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2018年08月27日

「いかめしの丸かじり」東海林さだお

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さてさてシリーズ第32弾。
「いかめしの丸かじり」ということで、「いかめしの秘密」というのが表題作といえましょうか。
いかめしといえばJR函館本線森駅の駅弁ということですが、つねにランキング入りする人気商品らしいですね。
しかし意外と小さいそうで。
弁当箱の大きさは横9cm、縦12cm、イカの身長10cm。
くみしやすしと手を出させる。
イカは2個ゴロンと転がっているだけ。
このゴロンがいい。
茶色一色。
素朴、素直、真面目。
定価は501円(当時)。
気軽に財布を取り出すことになる・・・・とまあショージ君の分析は続くわけです。
私は食べたことないんですけど、たしかに大きさといい値段といい、ごはんを詰め込まれてパンパンになったイカといい、いっちょ買ってみるかと思わせるものがあります。
なるほどなぁ。
他にもいろいろありまして、「キンレイ鍋焼うどん」を読んですぐに買いに走りましたですよ。
「新国会丼発見!」なんてのもいいですね。
民主党に政権交代してから国会図書館に新国会丼というのが登場したとか。
自民党時代に国会丼というのがありまして、民主党政権になって新国会丼の登場。
ガキの意地の張り合いかと。(笑)
いや、業者の商魂か。
でもこういう所の食堂とか大学の食堂とか、独自のメニューがあって楽しそうです。
評判の店を食べ歩いてどうこうなんて誰でもやっているし新鮮味もありません。
グルメブロガーといわれる人たちも他人やマスコミの追っかけではなく、このような食堂のユニークなメニューを紹介してくれませんかねぇ。
冷やしかつ丼なんてのも紹介されていますね。
そう、このような食べ物があると聞けばすぐに飛んで行って検証する。
このフットワークですね。
ラベル:グルメ本
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2018年08月25日

「恥辱」J・M・クッツェー

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大学教授のデヴィッドは52歳。
2度の離婚を経験し、現在は独身です。
軽い気持ちで女子学生に手を出すのですが、告発されてしまいます。
それがきっかけで大学や学生たちから非難を受け、教授を辞任するはめに。
田舎で農園を営む一人娘のところに逃避するのですが、そこでもまた災難に遭います・・・・。
主人公のデヴィッドだけを見ていれば、まあ自業自得ではあります。
しかしそのデヴィッドの転落する人生の中にさまざまな問題が提起されているのですね。
デヴィッドは元々は現代文学の教授。
しかし学部が閉鎖され、コミュニケーション学部というわけのわからない学部の准教授に降格させられています。
文学の衰退といいますか。
女学生に手を出すなんてのはセクハラ問題ですよね。
そしてこの作品はアフリカを舞台にしているのですが、娘の農園に転がり込んでからは人種問題が色濃くなってきます。
人間の一方的な都合による動物の安楽死の問題も。
ストーリーとしてはスケベな中年男の転落人生なわけですが、そのようないろいろなテーマを取り込んで厚みのある作品に仕上がっています。
ちなみに作者はノーベル賞作家であり、この作品で史上初の2度目のブッカー賞を受賞したとか。
しかしそのような堅苦しい肩書きに関係なく、翻訳にも変な言い回しなどなく非常に読みやすい作品でした。
ラベル:海外小説
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2018年08月11日

「空に唄う」白岩玄

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23歳の海生の家はお寺ということで、海生も新米のお坊さんです。
住職である祖父に付いて初めてお通夜を務めることになるのですが、遺影を見ると故人は若い女性のようです。
その女性が棺の上に腰をかけています。
びっくりする海生。
どうやら海生以外の人には見えないらしい。
その後も度々海生の前に現れる女性には行く場所がないようです。
放っておくわけにはいかず、海生は彼女(碕沢さん)に寺に住むよう提案します。
日を追うごとにだんだんと彼女に惹かれていく海生・・・・。
作者は「野ブタ。をプロデュース」でデビュー。
芥川賞候補になりテレビドラマ化もされ、話題になりました。
しかしデビュー作が大きすぎたせいか、正直その後はあまりぱっとしない印象です。
さてデビュー2作目はどんなものかと読んでみたのですが。
いいじゃないですか。
ファンタジーということになるんですかね。
幽霊と同居という非現実的な設定ではありますが、それを変におちゃらけた方向に持っていっていないのがいいですね。
同い年の彼女を「碕沢さん」とさん付けで呼び、ずっと敬語を使い続ける海生の真面目さがいい。
幽霊である碕沢さんにはこの世での生活にいろいろと不便があります。
海生の声以外の音は聞こえない。
物を動かすことができない。
ドアを通り抜けたりすることもできませんので、一人で部屋の出入りができない。
そんな不自由な碕沢さんを不器用ながらも一生懸命に支え、喜ばせようとする海生の健気さがいい。
地味ですがしみじみと感動できる恋愛小説です。
収穫でした。
ドラマにしてもいけるんじゃないでしょうか。
ラベル:小説
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