2017年05月24日

「女の橋」芝木好子

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由利子は築地で芸妓をしています。
当然周りにはいろんな男がいます。
中でも大野木という会社経営者は由利子にご執心で、ぞんざいには扱えません。
ですが成り上がりでやや品のない男です。
由利子には篠原という幼なじみの恋人がいるのですが、ダムの工事現場を渡り歩く電気技師です。
山の暮らしが多く、ほとんど東京に腰を落ち着けていません。
それだけに由利子の篠原に対する思いは深いのですが、大野木はそんな篠原の存在が気に入りません。
また柳井という若い医者もひたむきな気持ちで由利子に近付いてきます・・・・。
いつもそばにいない恋人を思う女、そんな女を自分のものにしようという男たち。
これだけの設定ですとごく普通の男女の小説なのですが、さすがに芝木好子、やはり舞台がいいんですね。
築地界隈という土地、さりげない着物の描写、お茶、笛、踊りといった芸能、陶芸などの美術。
そのような様々な小道具が作品を味わい深く品のあるものにしています。
それらに目利きな由利子のきりっとしつつも楚々でしなやかな雰囲気と、離れた土地にいる篠原を思うひたむきさがなんとも魅力です。
女の橋。
どのような状況を橋と表現するべきかは定義できません。
人によりその橋は様々でしょう。
由利子はその橋をどのように渡ったのか。
じゅうぶんに楽しませていただきました。
ラベル:小説
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2017年02月05日

「どら焼きの丸かじり」東海林さだお

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グルメエッセイといえば東海林さだおの“丸かじりシリーズ”。
これで30作目とのこと。
いやあ、すごいですね。
数えてみますと35本収録されています。
それが30冊ですからね。
ちなみに2017年2月現在で39作。
週刊朝日に連載されているのが単行本となり文庫本となるわけですが、週刊誌の連載ですから当然週に1本書くことになるわけで。
連載開始が1987年ですから、それを30年続けておられるということです。
これはもう偉業としか言いようがありません。
さて、今回は「どら焼きの丸かじり」ということで、収録作の中の「愛すべきどら焼き」が表題作といえましょうか。
まずはしっとりと茶色いあの見た目。
ビロードのような皮のふくらみ。
ツヤがあってテリがある。
そして手にずっしりと重い重量感に頼もしさを感じつつ、半分に割るときのムリムリ感、断層のタテにスカスカと霜柱がきれいに立ち並んでいる割れ目の描写と続きます。
もちろんカステラや餡の食感甘味についてもじっくりうっとりと語りつつ、幸せに浸るのです。
しかし、ふと現実に目覚め、疑問を持ち、検証に入るわけです。
どら焼きというのは下にカステラを敷き、餡を乗せ、上にもう一度カステラを乗せフタをしている。
だがあれはフタなのか?
フタをしてあるのか、かぶせてあるのか、のっけただけではないのか。
上と下の間にすき間があり、中の餡が見えているではないか。
フタならばすき間が無いようにもっと配慮すべきではないのか。
ちょっと自覚がないんじゃないか・・・・。
とまあ、ショージ君の追及はパラノイア的に続いていくのであります。(笑)
ここがミソなんですね。
他の収録作にしても、ただ何々を食べました、何々屋に行きましたでは済まない。
食べ物にはそれぞれ人格(?)があり、そこには食べ手との格闘がある。
店に行けば駆け引きがあり、ドラマがあります。
焼き肉屋に行って「さあ、焼き肉だ」と心を奮い立たせ、帝国ホテルにわざわざハンバーガーを食べに出かけ、団子屋に行って自分で団子を焼き、立ち食いそば屋で温にするか冷にするかで迷い、そばだけではなくうどんという手もあったのかとうろたえる。
食べることに勇猛果敢に挑みつつも躊躇逡巡し、一喜一憂喜怒哀楽、当たって砕けて泣き笑い、満腹満足不満足、抱腹絶倒丸かじり。
愛すべき小市民の姿がそこにあります。
ラベル:グルメ本
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2017年01月18日

「ロブション自伝」ジョエル・ロブション

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史上最短でミシュラン三ツ星に輝いたジョエル・ロブション。
20世紀最高の料理人ともいわれた天才シェフです。
自身最高の状態だった96年に引退したものの、2003年に復帰。
今も現役で活躍しておられます。
本書はそんなフランス料理の最高峰を極めたシェフの自伝です。
残念ながらロブションの料理というのは食べたことがないのですが、精緻な盛り付けなどを見るとかなり神経質な完璧主義者という印象を受けます。
この本でもそのあたりのシェフの主義というのを知ることができます。
もちろんそうでないとこれほどの功績を残し、また評価はされないでしょうけどね。
内容としましては自伝といってもただ単に経歴や体験を紹介しているだけではなく、インタビューに応える形で料理や経営についてかなり細かなところまでその考えを披露しておられます。
料理人を目指す人はもちろん、違うジャンルにおいても仕事に対する取り組み方という点で学ぶべきところはあるのではないでしょうか。
ラベル:グルメ本
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2016年12月09日

「私の大好物」週刊文春 編

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各界の著名人たちが紹介する大好物。
オールカラーです。
こうやって見ますとほとんどがいわゆるB級グルメの類といえます。
やはり大好物というからには何度も足を運んだり購入したりするわけで、そうなるとご大層な高級店のなんたらよりも大衆的な食べ物ということになるのでしょう。
身近な食べ物がいちばんです。
こういう企画は写真がないとだめですね。
文章だけでは物足りません。
写真というビジュアルの持つインパクト、説得力。
しかし白黒ではいけません。
それならむしろ載せないほうがまし。
白黒の料理写真ほど味気ないものはない。
ページをめくるたびに唾液がじゅわじゅわと溢れ、お腹がグーと鳴る一冊です。(笑)
ラベル:グルメ本
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2016年10月16日

「活字のサーカス -面白本大追跡-」椎名誠

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いろいろな本を紹介した書評本でもあるのですが、上手くそれを取り入れたエッセイとなっています。

というか、エッセイに本の紹介を取り入れているといったほうがいいかもしれません。

著者の椎名氏といえばあちこち旅をしておられるという人ですが、その旅にどのような本を持っていくか。

氏は10冊セットを持っていかれるそうで、その内訳はミステリー3、SF2、時代歴史もの1、ノンフィクション2、エッセイ1、古典1とのこと。

これは人それぞれで、普段ミステリーしか読まない人ならば10冊すべてミステリーでしょうし、小説は読まないという人ならばすべてノンフィクションでしょう。

私なら・・・・単純に小説5、ノンフィクション5という分け方ですかね。

ジャンルまではさてどうでしょうか。

でも10冊も本を持っていくような旅をすることなんてまずないですけども。(笑)

あったとしても旅先で読むということはないはずです。

移動の車内限定でしょう。

旅先でまで読書したいとは思いません。

しかしさすがに著者はいろんなジャンルの本を読んでおられます。

やはり行動範囲と興味の範囲は比例するのか。

私など出不精なせいか視野が狭いとは思っています。

なので趣味も狭くなり、読む本も限定されてくるのかなと。

せめて本だけでもいろんな世界に触れなければ、なんてこの本を読んで思った次第です。

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