2019年02月18日

「江戸へようこそ」杉浦日向子

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前口上として著者が語りたい江戸についての説明があるのですが、いまいちよくわかりません。(笑)
著者は歴史の知識がある「歴史好き」でもなく、チャンバラなどが好きな「時代劇好き」でもないといいます。
日本で「時代もの」といえばおおむねそれら2種類に支えられており、専門的な研究以外ではどうしてもそういう人たちを対象として書かれることになるので従来のイメージを抜けられないと。
そして江戸趣味を否定し、ノスタルジーも否定しておられます。
で、「江戸はどこにあるのか」という問いに対しては、「いまここにあります」と答えるそうです。
なんだかなぁ、ちょっとイタイなぁ、という気がします。
まあ江戸について一般の人たちが安易に浮かべるイメージに対して物申したいのだとは思いますが。
たしかに江戸時代といっても毎日歴史に残るような出来事があったわけではなく、また時代劇のようなドラマが日常茶飯事に起きていたわけではありません。
現代も同じですが、皆ごくごく平凡に毎日を過ごしていたはずです。
そしてその延長にいまの東京もある、と。
もっと日常の江戸を知ってほしいということなんでしょう。
私もそのあたりは知りたい。
私は大阪の人間なので江戸ではありませんが、例えば自分のご先祖様は江戸時代どのような生活をしていたのか。
なにを生業にしてどのような人物だったのか。
住んでいたあたりはどのような風景で周りにはどのような人たちがいたのか。
日々どのような日常を過ごしていたのか。
教科書に出てくる出来事よりもよほど興味があります。
この本ではゲストを招いての対談も掲載されています。
中島梓氏とは吉原について。
高橋克彦氏とは春画について。
これらは私も興味ありますので、へぇなるほどと読ませていただきました。
でもテーマとしてはベタですよね。
もちろんそれらから庶民の生活を見ることはできるのでしょうけど。
著者の鼻息が荒い割には結局この本も従来のイメージからは脱却できていないのではと思いました。
ラベル:エッセイ
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2018年08月21日

「匂いのエロティシズム」鈴木隆

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嗅覚は視覚、聴覚、味覚などに比べて、論じられたり教育されたりすることは少ないといわれています。
なるほど視覚なら絵画、聴覚なら音楽、味覚なら料理、それぞれ芸術として立派な1ジャンルですよね。
ところが嗅覚にはそれらしきものがない。
日本には香道というものがありますが、あまり知られておらず一般的ではないですね。
そんな匂い(嗅覚)について、タイトルにもあるようにエロティシズムという観点から論じたのがこの本です。
体臭というのは本来その人の個性なわけですが、最近ではそれが嫌われ抑えられる傾向にあります。
デオドラント商品などがそれですね。
だからといって匂いは必要ないのかといえばそんなことはなく、体臭を消して香水をつけたりしている。
面白い傾向です。
動物でいえば匂いはセックスアピールです。
発情期になると匂いで異性を惹きつけたりします。
しかし人間はその匂いを消してしまっている。
動物から離れるほどに人間は匂いを消してしまうようになりました。
ですがそれを取り戻すかのように異性を惹きつける媚薬だのフェロモン入り香水だのをせっせと開発していたりします。
矛盾した面白い現象です。
動物にとっては生殖のための本能である匂いが、人間にとっては意識を伴うエロスに移り変わったと。
匂いにエロティシズムを感じるのは間違いなく、ただどのような匂いにそれを感じるかは人それぞれ。
もしかしたら視覚や聴覚よりも根本的なところに訴えかけてくる感覚かもしれません。
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2018年05月21日

「飛田の子 遊郭の街に働く女たちの人生」杉坂圭介

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大阪の飛田新地で遊郭を経営していた著者。
現在は店の名義を知人に譲ってスカウトマンをしておられるそうです。
前著「飛田で生きる 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白」ではそんな経営者時代の話を書いておられました。
店を始めるには、女の子はどうやって集めるのか、収入は、経営の実態は、など。
今回は実際に自分の店で働いていた女の子にスポットを当て、飛田で働く女の子たちの実情を紹介しておられます。
いろんな女性がおり、いろんな事情を抱えています。
やはり女性を使うのは難しいですね。(笑)
新しい女の子が入ってきたせいで自分の売り上げが落ちたら、その嫉妬の凄まじいこと。
それまで自分がエースだったというプライドもあるでしょうし、ストレートに収入に響きますからね。
修羅場になったりもするようです。
女の子たちをうまくコントロールしつつ、急に飛んでしまう(辞めてしまう)子の代わりを必死に補充しつつ、店の売り上げは乱高下。
そんな仕事を10年もやってこられたのですから、まさにお疲れ様です。
最近の飛田ですが、全体の売り上げも下降し、だんだんと寂れつつあるようです。
世間体が悪いだのと反対する人たちがいますし、他の風俗に客が流れているというのもあります。
確かに飛田はコスパはよくありません。(笑)
15分で11000円くらいですか。
でも正味の時間はその半分くらいということで、女の子によってはタッチもなしなんですから客にとってこんなアホな話はない。
同じ値段で60分のホテヘルに行けます。
ただ女の子からすれば15分でその半分ほどを手取りとしてもらえるわけで、時間単価にすると非常に割がいい。
60分のコースだと手取りで20000円です。
エースともなるとロングやショートのコースも含めてですが、1日30本上げるというのですからたいしたものです。
ですが最近はシャワーあり本番なしのデリヘル・ホテヘルに女の子が集まっているようで。(飛田はシャワーなし、本番あり)
飛田も正念場です。
でもこの独特な街は存続してもらいたいと私は思うのですけどね。
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2018年04月07日

「君の膵臓をたべたい」住野よる

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病院のロビーの隅のソファに置き去りにされていた1冊の本。
僕が手に取ってみると、『共病文庫』と表紙に書かれたその本は手書きの闘病日記でした。
持ち主はクラスメートの山内桜良。
その日記には彼女は膵臓の病気に冒されており、あと数年で死んでしまうと書かれていました。
それをきっかけに僕と桜良の友達のような恋人のような付き合いが始まります・・・・。
タイトルはちょっとおどろおどろしいですよね。
ホラーやミステリーならともかく、青春小説のタイトルとしてはあまりふさわしくない。
ですが、最後まで読むとこの言葉に込められた思いがひしひしと伝わります。
二人の関係がいいですね。
友達以上恋人未満、でもしっかりと心では繋がっているような。
桜良の無邪気に振る舞う健気さがいいし、無理に距離を詰めようとしない(できない)僕とのバランスがいい。
なので変にベタついた恋愛話にはなっていません。
なるほど最後までこの距離感を保つ恋愛小説もありなのかと。
悲しいけれど爽やかな感動のあるいい作品でした。
ラベル:小説
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2018年01月03日

「東京新大橋雨中図」杉本章子

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時代は江戸から明治へ。
小林清親は木版浮世絵師。
もとは御蔵屋敷の御勘定掛でしたが絵師となり、光線画と呼ばれる「東京新大橋雨中図」が話題となります。
その後も数々の話題作を発表しつつ、嫂への恋情、幼馴染みとの友情、結婚生活の破綻、絵への思い、いろんなものを抱え激動の時代を生き抜いていく清親の半生が描かれていきます・・・・。
小林清親というのは実在の人物です。
ですがこれは小説なので、細かなところはもちろん作者による創作でしょう。
作者の筆による清親が実に魅力的に描かれています。
見た目はいかついのですが、実直で女性にはシャイで不器用で、温かみのある男です。
そんな清親が騙りにあったり大きな失敗をしでかさないかと気になりますが、話自体にも悪人が出てこないので安心して読めます。
みんなけっこういい人で清親を支えてくれるんですよね。
逆にいえば大きな山や谷がないということで波乱万丈感は薄いですが。
しかし時代背景もうまく取り入れ、実に読み応えのある味わい深い作品だったと思います。
ラベル:時代小説
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