2018年04月07日

「君の膵臓をたべたい」住野よる

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病院のロビーの隅のソファに置き去りにされていた1冊の本。
僕が手に取ってみると、『共病文庫』と表紙に書かれたその本は手書きの闘病日記でした。
持ち主はクラスメートの山内桜良。
その日記には彼女は膵臓の病気に冒されており、あと数年で死んでしまうと書かれていました。
それをきっかけに僕と桜良の友達のような恋人のような付き合いが始まります・・・・。
タイトルはちょっとおどろおどろしいですよね。
ホラーやミステリーならともかく、青春小説のタイトルとしてはあまりふさわしくない。
ですが、最後まで読むとこの言葉に込められた思いがひしひしと伝わります。
二人の関係がいいですね。
友達以上恋人未満、でもしっかりと心では繋がっているような。
桜良の無邪気に振る舞う健気さがいいし、無理に距離を詰めようとしない(できない)僕とのバランスがいい。
なので変にベタついた恋愛話にはなっていません。
なるほど最後までこの距離感を保つ恋愛小説もありなのかと。
悲しいけれど爽やかな感動のあるいい作品でした。
ラベル:小説
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2018年01月03日

「東京新大橋雨中図」杉本章子

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時代は江戸から明治へ。
小林清親は木版浮世絵師。
もとは御蔵屋敷の御勘定掛でしたが絵師となり、光線画と呼ばれる「東京新大橋雨中図」が話題となります。
その後も数々の話題作を発表しつつ、嫂への恋情、幼馴染みとの友情、結婚生活の破綻、絵への思い、いろんなものを抱え激動の時代を生き抜いていく清親の半生が描かれていきます・・・・。
小林清親というのは実在の人物です。
ですがこれは小説なので、細かなところはもちろん作者による創作でしょう。
作者の筆による清親が実に魅力的に描かれています。
見た目はいかついのですが、実直で女性にはシャイで不器用で、温かみのある男です。
そんな清親が騙りにあったり大きな失敗をしでかさないかと気になりますが、話自体にも悪人が出てこないので安心して読めます。
みんなけっこういい人で清親を支えてくれるんですよね。
逆にいえば大きな山や谷がないということで波乱万丈感は薄いですが。
しかし時代背景もうまく取り入れ、実に読み応えのある味わい深い作品だったと思います。
ラベル:時代小説
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2017年12月10日

「飛田で生きる 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白」杉坂圭介

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大阪にある飛田新地。
いわゆる遊郭ですね。
実際に界隈を歩いてみますと、「今の時代にこんな街があるのか」と。
夜は妖しげにライトアップされ、なんとも妖艶で風情のある雰囲気を醸しています。
この本の著者は、そんな飛田で10年間店を経営してきました。
そんな“中の立場”の人が内情について書いた本というのは珍しいと思います。
当時31歳だった著者は勤めていた会社をリストラされ、深夜のファミレスでアルバイトをしていました。
そんなとき学生時代の先輩に声を掛けられ、飛田で親方をやると儲かるぞと誘われたのです。
素人がいきなりそんな簡単に飛田で親方なんてできるものなのか。
そんなに簡単に儲かるものなのか。
迷った挙句、著者は店を始めることにします・・・・。
店を始めるにはどんな手続きが必要なのか。
どのようにして女の子を集めるのか。
女の子の取り分や親方の儲けは。
などなど、なかなか知ることのできない話を興味深く読むことができました。
そして当然のことながら経営の四苦八苦ですね。
現在は店の名義を知人に譲り、自身はスカウトマンをしておられるとのこと。
その理由はやはり「くたびれたから」だそうです。
ただでさえ女性を使うのは大変です。
しかも仕事の内容が内容だけに。
続編の「飛田の子」ではそんな女の子たちにスポットを当てておられるようです。
すでに購入済みですので、また楽しみに読ませていただきましょう。
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2016年08月11日

「藝人春秋」水道橋博士

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著者が芸能界で出会ったさまざまな人たち。

もちろんその数は何百人にもなるでしょうが、その中から交友のある(あった)何人かの人たちのエピソードが書かれています。

そのまんま東、石倉三郎、甲本ヒロト、草野仁、古館伊知郎、三又又三、堀江貴文、湯浅卓、苫米地英人、テリー伊藤、ポール牧、稲川淳二、有吉弘行・・・・。

人選の基準がよくわからないのですが、さすがにそれぞれ個性的なエピソードが紹介されています。

本文のあとに【その後のはなし】として後日談を添えているサービスもいい。

しかし著者の文章は上手いですね。

歯切れがいいし比喩も面白い。

吉田豪氏と並んでこれからもぜひ芸能人らの生態を書き続けていただきたいものです。

ラベル:エッセイ
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2016年03月06日

「解錠師」スティーヴ・ハミルトン

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幼い頃にあるきっかけで言葉を失ってしまったマイクル。

ですが金庫や玄関の鍵を開けることができる才能を持っています。

その才能を見込まれプロの金庫破りとなり、いろんな犯罪に関わることになるのですが・・・・。

最初にマイクルが声を出すことができないということと服役しているという設定が提示されるのですが、それを謎のように含みを持たせて最後までずっと引っ張っています。

その理由なんてのはまったくの予想通りですし、こんなことでもったいぶるなよと思いましたね。

少年が大人の都合で犯罪に手を貸さざるを得ないというような流れなのですが、無視すればいい仕事に首を突っ込んだりしていますし。

主人公自ら作者の都合のいいように理屈を付け渦中に飛び込んでいるんですから、いやはやです。

マイクルが言葉を発せられないというトラウマについては、ふりかけのようなものですね。

このほうが味わいが深くなるだろうと。

不幸な生い立ちの少年がいました、言葉を発することができません、鍵を開けるという特技がありました、犯罪に引き込まれました、トラウマを持つ少年はそんな中でアメリアという女性に恋をし・・・・といったところです。

この恋愛が出汁の素になっていますかね。

ですけども漫画で会話したりとか苦笑してしまいました。

なんだかもう金庫破りでも恋愛でも勝手にしてちょうだいといった感じです。

解錠師である主人公が閉じ込められている“場所”から彼女が鍵を開けて解放してあげるわけですか。

なるほど。

座布団一枚。

ラベル:海外小説
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