2020年01月22日

「花だより みをつくし料理帖 特別巻」高田郁

CIMG3583.JPG

全10巻で完結したシリーズの特別巻です。
あれから4年後。
澪は源斉と所帯を持ち、江戸を離れて故郷の大坂で料理屋を営んでいます。
そんな澪のことが夢にまで出てくる「つる家」主の種市。
澪のことが気になるのは戯作者の清右衛門も同じなようで。
清右衛門、版元の坂村堂、種市は澪に会いに行くために東海道を五十三次、大坂を目指します・・・・。(花だより)
澪と恋愛した御膳奉行の小松原こと小野寺数馬。
お互い口には出さなかったものの、相思相愛の仲でした。
しかし立場が違います。
これはまず小野寺の妻となった乙緒の心情を酌みつつ、その先にある小野寺の心情を酌みたいですね。(涼風あり)
あさひ太夫こと野江は、現在大坂で「高麗橋淡路屋」を再建しています。
商売は順調です。
ですが女主人として続けていくには期限があります。
男を主人に立てないと店を存続できない。
野江はどのように決断したのか・・・・。(秋燕)
正体不明の疫病が大流行します。
澪の夫である源斉は全力を尽くしますが、ことごとく患者を亡くしてしまいます。
落ち込み、過労で倒れてしまう源斉。
澪は店を休んでまでも、源斉の看病に尽くします・・・・。(月の船を漕ぐ)
さすがのレベルですね。
相変わらず読ませてくださいます。
巻末の「みをつくし瓦版」を読みますと、いよいよこのシリーズはこれが最後のようですね。
しょうがない。
澪たちのその後が知れただけでも喜びとしなければ。
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月27日

「わが百味真髄」檀一雄

CIMG3568.JPG

食通として知られた作家、檀一雄の食エッセイです。
いや、この人の場合食通という言葉は当てはまらないですね。
食通といいますとある程度スノッブさがないとだめでしょう。
美食家的な。
この本を読みますと、むしろそういう気取ったのとは対極のところで食を楽しんでいるようなところがあります。
本書にも書かれている通り、ぶらりと訪れた土地で立ち飲みや立ち食いの店に入り、コップ酒を楽しむみたいな。
そして檀一雄といえば食べるよりもむしろ作る側の人ですね。
「檀流クッキング」なんて本も書いておられるくらいですから。
とにかく料理大好き、買い出し大好き。
いや、わかります。
私もそういうの大好きですから。(笑)
本人も「世界を股にかけた料理人」と自称しておられたとか。
日本国内にとどまらず、まさしく世界を旅してその土地の料理を食べ、自分なりに咀嚼して再現したりしておられたようです。
旅に行く先々でその土地の食材を仕入れ料理しておられたとのこと。
わかるなぁ。
旅先の市場のなんという魅力的なことか。
自宅の庭に山ゴボウらしいものが自生しているのに気づき、味噌漬けにして家族で食べたところ、家族全員猛烈な下痢と嘔吐に見舞われたというエピソードも紹介しておられます。
そんな経験があるにもかかわらず、ある日庭に茸を見つけ、これは竹孫(キヌガサダケ)だと飛びつきます。
植物図鑑で調べると、どうもアミガサダケのようだと。
さっそく摘み取って料理し、酒友達に振舞ったところ大好評。
実際にアミガサダケだったのかどうかは不明ですが、いつの間にかその場には以前の山ゴボウで懲りている細君の姿はなかったとか。(笑)
食通というよりも食い魔といいますか、とにかくなんでも自分の手で料理して食ってやろうという探求心というよりも執念のようなものを感じますね。
このような話を読んでいますと、気取って流行りの店を追いかけてグルメを気取っているなんて、なんとも上っ面を撫でているだけなのだなぁと思えてきます。
こだわるのなら、もっと根本から「食」というものに食らいつかねば。
自分でも料理していろんな素材を“咀嚼”しなければ。
そんな思いを持ちました。
ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月11日

「素晴らしい一日」平安寿子

CIMG3560.JPG

デビュー作である表題作を含む6編を収録。
エリートの彼氏は使い込みがばれて会社をクビになり雲隠れ、自分が勤めていた会社も倒産して失業者になった幸恵。
30歳でこれといった特技もない女性を採用する会社もなく、貯金は減る一方です。
そこで思い出したのが元カレだった友朗に2年前に貸した20万円。
経営している小さな会社が行き詰まり、幸恵に借金を申し込んできたのです。
ちゃんと借用書も書いて実印に拇印まで押したにもかかわらず、1週間後にドロン。
当時はまあしょうがないやと思っていた幸恵ですがさすがに現在の状況でそんなことを言ってられず、友朗の現在の居場所を突き止め借金を返してと迫ります。
今でも2000万円近い借金がある友朗にそんなの返せるわけがありません。
それじゃあこれからお金を貸してくれそうな心当たりを一緒に回ろうと、何人もの女性のもとを訪れる2人ですが・・・・。
2人してお金を借りて回るという1日を描いています。
調子のいい楽天的な友朗、それに振り回される幸恵。
なぜ貸したお金を返してもらうために自分も一緒になって知らない女たちに頭を下げなければならないのか。
しかし友朗の天性のキャラのせいでしょうか、ようやく1日を終えた時にはなぜかハッピーな気分に。
チャラいけど憎めない男、それを許容してしまう心が広く逞しい女。
なんというか女のほうが一枚上手的な微笑ましい(?)設定は他の収録作にも見られます。
表題作は1日の出来事を濃密に描いているわけですが、作者が敬愛しておられるアン・タイラーの「ブリージング・レッスン」もそういえば何気ない1日を長編に仕立てた作品でしたね。


ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月23日

「33年後のなんとなく、クリスタル」田中康夫

CIMG3551.JPG

1980年に発表された小説、「なんとなく、クリスタル」
当時はずいぶんと話題になりました。
それから33年。
大学生だった登場人物たちも今は50代。
ヤスオは主人公だった由利と再会し、当時の記憶と現在が入り交じります・・・・。
この小説の主人公ヤスオというのはもちろん作者の田中康夫氏です。
どこまでが実話かはわかりませんが、長野県知事時代のことなどもきっちりと記述しておられます。
知事以外にも参議院議員、衆議院議員、などを経歴してこられたわけですが、しかしこの小説の肩の力の抜け感はどうよ、と思いますね。
ことさらそれを誇示するわけでなく、あくまでもさらり淡々と書いておられます。
もちろんそれがテーマの小説ではありませんので当然ですけども。
あくまでただの経歴です。
今、目の前の快楽を享受する若者たちを描いた前作と、そのスタンスはなんら変わりないように思えます。
と言いましてもこの国の未来を憂う気持ちはひしひしと伝わってきますが。
前作は中身がないだなんだの評価も飛び交いましたが(私もそう思ってました)、今から思えばさりげないけどとんでもなくしっかりきっちりと日本の現在と未来を書いておられたんですよね。
最後に日本の出生率のデータが記されているのですが、私など当時はその唐突な提示に「なんじゃこりゃ」と思ったものです。
とんでもない。
今後の日本の未来をビシッと突き付けておられたわけです。
本作のラストはヤスオが黄昏時の光に向かい歩み出すシーンで終わります。
「微力だけど無力じゃない」という言葉が作中に何度か出てきます。
それぞれが自分の生き方で歩んでいく。
その結果・・・・まだ希望はありますよね。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月05日

「迷惑メール、返事をしたらこうなった。 詐欺&悪徳商法「実体験」ルポ」多田文明

CIMG3542.JPG

迷惑メールっておそらく誰もが経験しているんじゃないかと思います。
アダルト、出会い、金儲け、たいがいそんなところでしょう。
どこでアドレスを調べたんだか、と思うことも多々ありますよね。
ほとんどの人は無視して削除していると思うのですが、さて、この迷惑メールに返事をするとどうなるのか。
著者が実験してみました・・・・。
この著者はルポライターであり、このようなことを実体験してルポすることを生業としておられる人です。
以前にキャッチセールについての著書を読みました。
今回は迷惑メール。
ただちょっとツッコミが甘いんですよね。
いい加減な業者であることが判明したので調査はここで打ち切った、みたいな。
いや、いい加減な業者なのはわかってやっているわけですから、そこで止めずにもっとツッコんでくださいよ、と。
で、各章の最後に『撃退3カ条』なんてのを書いておられる。
いやいや、これはそういう被害を受けないための指南書じゃなく、あなたがどこまで深く潜入するかが読ませどころでしょ、と。
イマイ記者とまでは言いませんが、やはりもっとシビアにツッコんで結果を提示していただきたかった。
なんて書くと、じゃあおまえはできるのかと反論されそうですが、もちろん著者ほどには関われません。
しかし私も実はこの手の類は好きでして、昔はよく返信したものです。
なぜ今でなく昔かといいますと、今は面白いメールがこなくなったから。
昔は出会い系もアルバイトのサクラ嬢がせっせと対応していまして、私もそれに対してのらりくらりと返信していたのですね。
そしたらサクラ嬢、私のそんな煮え切らない態度に「その気がないのなら返信しないでください!」と最後はブチ切れました。(笑)
知らない間に会員登録されていたサイトもありました。
そこから送られてくるメールに内容は書かずひたすら返信ボタンをクリックしてそのままブーメラン返信。
何度も繰り返していましたら『退会の手続きが完了しました』とのメール。
爆笑しましたね。
メールに書かれたアドレスをクリックしたらパソコンからピーピー音が鳴ったこともありました。
画面はど派手な色とフォントで何十万だかをすぐに払えと。
払わないと法的措置を講じると。
なんとも下品なセンスでした。
そしてこの画面が消えない。
ここですよね。
これでビビッてしまい、お金を振り込んでしまう人が多い。
もし会社のパソコンでこんなことになったらそりゃパニくるでしょう。
で、そんなのをどうにかこうにか削除し無視しておりましたら、またメール。
開いてみますと半額にするので払ってくれと。
もうアホかと。(笑)
もちろんこんなの無視でOKです。
というか、とにかく無視、削除、これでなんら問題ありません。
これはもうまったく著者のおっしゃる通りです。
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする