2019年03月10日

「お江戸の姫君 右京之介助太刀始末」高橋三千綱

CIMG3422.JPG

ある夜、女が浪人に追われる現場に出会った右京之介の手下の弥太。
捕らえられた女を助けようとした弥太ですが、逆に浪人に斬られそうになります。
しかしその浪人を別の浪人が斬り捨て、助かったかと思いきや、これまたその浪人に斬られそうになります。
「殺られてしまうのネ」と念仏を唱える弥太を助けてくれたのが我らが若様こと右京之介です。
その隙を突いて右京之介を腕の立つ黒装束の女が襲います。
寸前で攻撃をかわした右京之介は、女を捕らえて吉原の遊郭に閉じ込めます。
実はこの女は屋敷から逃げ出してきたお姫様でした。
さて、これから右京之介の周りでなにが始まるのか・・・・。
えっと、シリーズ第4弾になりますか。
なんだか前作あたりから内容が複雑になりまして。
今回もお姫様の父親の兄弟がどうこうという話があり、これがまあ事件のきっかけとなっているわけですが、そこにお女中やその旦那がどうという話も加わり、右京之介に惚れる問屋の娘が現れたり、とにかくややこしい。(笑)
私の頭が悪いだけなのかもしれませんが。
もうすこしすっきりしていただければありがたいんですけどね。
でも単純すぎても今回のような話は成り立たず深みもないわけですが。
それはともかく、やはりこの作品は右京之介のキャラでしょう。
いかにも高橋作品らしい飄々とした主人公。
実に魅力的です。
地の文やセリフの言い回しなども時代小説としては軽薄と受け止められるかもしれません。
ですが、何より登場人物に魅力があり小説として面白い。
若様がお江戸に新風を吹き込むがごとく、この作品も時代小説に爽やかでユーモラスな風を吹き込んでおられるのではないでしょうか。
次作も楽しみに読ませていただきます。
ラベル:時代小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月27日

「デウスの棄て児」嶽本野ばら

CIMG3403_LI.jpg

裕福な葡萄牙(ポルトガル)人に売られた日本人妻とのあいだに生まれた四郎。
母は阿片中毒となり、父には疎まれ、周りには異国人だ妾腹の子供だとしていじめられ、神父には性欲のはけ口にされ。
周りはろくな連中ではありません。
薄汚く穢れと欲にまみれたこのような世界を創った天主(デウス)を四郎は憎みます。
そして天主に復讐することを誓うのです。
そのような世界の全ての人間を皆殺しに・・・・。
四郎というのはもちろん天草四郎です。
しかしなぜ嶽本野ばらが天草四郎をモチーフに選んだのか。
わかるようなわからないような。
作風はハマってますけどね。
天草四郎を天主を憎んで世界に復讐しようとする悪のヒーローに設定したのが大胆ですね。
庄屋や浪人たちに総大将として祭り上げられ、しかしまた四郎もその立場を利用し、何万人もの農民たちを率いて一揆をおこします。
敵も味方も皆死ねばいい。
四郎の考えは冷淡です。
しかし神も人間も信じなかった四郎が最後に気づいたことは・・・・。
ラストはちょっと泣けましたね。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月09日

「日常の極楽」玉村豊男

CIMG3394.JPG

極楽というものは天上にあるのではなく、健全な小市民としての日常のささやかな暮らしの中に発見していかねばならない。
著者はそう主張します。
そうですねぇ、ハレとケという言葉がありますけども、皆ちょっとハレを求め過ぎではないでしょうか。
派手な部分に惹かれ、日常の些細なことに関してはありがたみを感じない。
そんなことはありませんかね。
でも現在は当たり前の日常こそが極楽であると気付き始めている人も多い。
昔ながらの自然がどれだけ貴重なことか。
緑を伐採しビルを建て、土を失くして地面をアスファルトで固め、自分の家の中を冷やすために外に熱気を吐き出しています。
そして今頃になって温暖化だなんだと。
エコだロハスだと。
どれだけ自分勝手なんでしょうか。
食べ物にしてもグルメだ美食だと。
昔の地味ではありますが本物の素材で作った料理のほうがどれほど美味しく贅沢なことか。
そういうところに本当の極楽はあるのですね。
ラベル:エッセイ
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月03日

「性的黙示録」立松和平

CIMG3376.JPG

「遠雷」「春雷」に続いての3部作完結編です。
(このあと書かれた「雷獣」を含めて4部作ともいわれますが)
周りの農家は皆土地を売り御殿を立て、成金な生活をするようになりました。
主人公の満夫もそうだったのですが湯水のごとく金を使い、今やすべて手放し、嫁と二人の子供、そして母親と狭い家で暮らしています。
現在の仕事は貸布団屋の事務。
経理も手掛けているのですがその立場をいいことに会社の金を使い込んでいます。
いよいよそれが社長にバレ、満夫は社長を殺害してしまいます・・・・。
田舎が都市化され、農業を捨てた人間がどのように道を踏み外していったのか。
大事なアイデンティティを手放し、いままで持ったこともない大金に踊らされ、狂っていく人たち。
まさにバブルがそうでしたね。
しかし田んぼや畑を売り払い、そのあとがマンションだ駐車場だ商業施設だなどとなってしまってはもう元には戻りません。
土地も人間も。
それを発展というのか退廃というのか。
この作品の主人公はまさしく人として退廃していきます。
そして主人公と死者との会話。
今回この会話が象徴的であり、また作者の主張でもあるのですね。
田舎の片隅の話ではありますが、地味ながらもどっしりと読み応えのある内容でした。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月22日

「赤めだか」立川談春

CIMG3355.JPG

立川談春、落語家。
名前からわかるように立川談志のお弟子さんです。
17歳で入門し、それからの苦労が面白く描かれています。
師匠は落語協会を脱退し立川流を創設したような人ですから、やはり弟子たちへの修業もユニーク。
なぜか築地市場へ修業に出されたりします。
落語を教わりに行ってなぜ築地市場なのか。(笑)
そのおかげでしょうか(?)、いまや立川談春といえば最もチケットの取れない落語家となりました。
テレビドラマでも活躍しておられますね。
この本では談志の落語に対する姿勢がよくわかりますし、それを目の当たりにして修業していく著者やその他の弟子たちの姿がいい。
そしてなにより落語家立川談春が今日に至るまでの軌跡が存分に味わえます。
ラベル:エッセイ
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする