2020年08月06日

「山を走る女」津島佑子

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21歳で妻子ある男性の子を宿してしまった多喜子。
酒乱の父には暴力を振るわれ、母親もそんな子供はどうにかしろと言われます。
相手の男にも伝えませんでしたし、また連絡の方法もありませんでした。
しかし多喜子は子供を産みます。
両親からは望まれない出産でしたが、産まれたら産まれたでやはり孫、母親は子供をかわいがります。
酒乱の父親は相変わらず多喜子に暴力をしますが。
世間体や子供の養育という現実の前に、多喜子は自分が無力であることを知らされます。
反発している母親に、ことあるごとに世話にならざるを得ません。
早く仕事を見つけてこの家を出てとは思うものの、そんな生易しくはない。
いろいろ仕事はやってみたものの、どれもうまくいかず。
やがて多喜子は造園業の仕事を見つけます。
男性限定の募集だったのですが、思い切って飛び込んで頭を下げて雇ってもらいます。
そこには障害児を持つ神林という男がいました・・・・。
この作品が世に出たのは1980年。
当時はこういう条件の女性は肩身が狭かったと思います。
そんな中で仕事を得、偏見にも耐え、駆け抜ける女性を描いています。
ただ私生児の母というだけではなく、神林という障害児の子供を持つ男を添えたのが津島佑子だなと。
過去にもやはり障害を持つ子供を扱った作品を書いておられますもので。
多喜子は子供を産んだあと、そば屋、化粧品のセールスと職を変わるのですが、造園業に落ち着きます。
ここからの多喜子がいいですね。
といいますか、タイトルもここからの描写に含まれていますし。
現在はシングルマザーなんて言葉で都合よく処理されてますけど、この時代はそうではなかった。
今とは時代も違った。
そんな中での女の懸命さ。
がっつりきました。
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2019年12月15日

「香港の食の物語」辻村哲郎

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表紙をめくりますといきなりジャッキー・チェンが本書を推奨する文章。
続いて「福臨門」社長、徐維均の推薦文。
たいして縁もないのに箔をつけるため出版社が無理やりコメントを貰ったのかなとちょっと鼻白んだのですが。
いや、失礼しました。
著者は香港在住で、日本のマスコミなどに香港を紹介するプロデューサーです。
ジャッキー・チェンとは通訳の仕事で関わり、「君の日本語はすごいな。どこで勉強したんだ?」とジャッキー。
「僕は日本人ですよ」と著者。
驚いたジャッキー。
著者の広東語があまりにも達者なため、てっきり香港人だと思っていたとか。
そんな縁があり、ジャッキーは映画のキャンペーンで日本全国を巡るにあたって著者を通訳に指名します。
その後も懇意な交際があり、決して飾りだけの推薦文ではないのでした。(笑)
そして職業上、香港のいろんな店を知る必要もあり飲食店も網羅。
「福臨門」にも頻繁に通っておられます。
というわけで本書の上梓となったわけです。
いや、実にいいグルメ本ですね。
ガイドブック的なエッセイなのですが、いかにも香港を知り尽くした紹介は上辺だけのガイドブックとは一線を画しましょう。
飲食店だけではなくそれをメインとして紹介をしておられますが、香港の街や文化もしっかりと解説しておられます。
実際に香港で生活しておられ、それを熟知しておられるガイドでありエッセイです。
「福臨門」といえば高級店ですが、まともに堪能しようとすればとんでもない金額となります。
しかしその神髄を安く味わえるノウハウも披露しておられます。
ここでちょっと思い出しました。
私が昔よく通っていたバーに凄い食通の常連さんがおられまして。
お見かけするとあつかましくお話しさせていただいていました。
その食通さんも同じことをおっしゃっておられたんですよね。
「こういう注文をすると安く福臨門の神髄を味わえる」と。
ご一緒しようという話もあったのですが叶いませんでした。
私も「福臨門」の大阪店には行ったことがあります。
(現在はありません)
当時青二才だった私はそんなテクニックもわからず、無難にコースを頼んでいたのでした。(笑)
ま、それでもコースには名物の『脆皮龍崗鶏』は含まれていましたけど。
さて、本書。
さすがに地元在住の著者ならではのリアル感ある記事満載です。
もちろん「福臨門」だけに限らずいろんな店が紹介されています。
そして飲食店に限らず、観光やコスメ事情なども紹介しておられます。
カラー写真も豊富に掲載されており、ビジュアルでも楽しめますね。
読み物としてもガイドブックとしても楽しめるいい一冊です。
といってもこの本の出版、1998年ですが。
ラベル:グルメ本
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2019年08月29日

「よしもと血風録 吉本興業社長・大崎洋物語」常松裕明

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吉本興行の社長(当時)が綴る半生記です。
まだまだローカルな一企業だった吉本興行に入社し、わけもわからないままあれよこれよと仕事をさせられ、吉本とともに成長してきた著者(代筆)。
本人の半生記でありながら、吉本興行という会社の社史でもあります。
ミスター吉本といわれたあの木村政雄氏の部下として鍛えられたんですよね。
なんやかんやと走り回り、やがて二人の若者と出会います。
ダウンタウンです。
彼らとともに吉本の東京進出が始まります・・・・。
さすがといいますかなんといいますか、この本を読みますと吉本興行というのはなんともざっくばらんな会社だったんですねぇ。(笑)
やはり芸人を有してお笑いを興行する会社ですから、そりゃカチカチなサラリーマン会社ではなかったでしょうけど。
なのでなんやかんやと著者も好き勝手にやってこられた部分があります。
もちろん相当なご苦労があったのは言うまでもありませんが。
といってもこれはあくまで吉本の一社員である著者の視点からの物語です。
また別の視点ももちろんあるでしょう。
つい最近、吉本の芸人が反社会的な連中に闇営業したとして大きな話題となりまして、経営の在り方が問題視されました。
現会長である著者や社長に対して某芸人が責任を追及し、ダウンタウンの松本人志を批判するなんてこともありました。
経営を刷新しろと。
松本は大崎会長や岡本社長が辞めるなら自分も吉本を辞めるといいました。
それに対しての批判ももちろんあったわけですが、しかしこの本を読むとそりゃ松本の主張ももっともだなと思えます。
東京に進出し全国区となったダウンタウンにすれば、著者あっての自分たちです。
義理と人情を秤にかけりゃじゃありませんけど、ビジネスライクに経営陣(大崎会長、岡本社長)の退陣に賛成などできるわけがありません。
そのような苦労を知らない吉本が大きくなってから入ってきた某芸人の批判は結局空回りに終わりましたけどね。
もともとヤクザと芸能界なんて出自は一緒なんです。
かといっていつまでもそのような昔の体質を引きずっていていいわけはありませんが、しかし芸人の世界もサラリーマン化されてきたようですね。
こんなことでは昔のような破天荒な芸人や社員など出てこないでしょう。
それでいいのかもしれませんけど。
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2019年06月11日

「それマジ!? 話のネタに困ったとき読む本」綱島理友

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一種の雑学本になるんでしょうけど、ちょっと違うのはそういう類の豆知識本というのではなく、著者が疑問に思ったことを実際に取材して検証しておられるということです。
こういうことを疑問に思ったのでメーカーの○○の広報室を訪問して部長の××さんにお話を伺ったと。
そういう過程が書かれているわけです。
もちろん他の雑学本も取材しての結果なんでしょうけど、こうなんだというソースがなく根拠もわからないままの断定だったりするんですよね。
昔ながらの俗説をそのまま記載している本も多いです。
この本では明確に根拠を示しておられます。
突撃レポート的な面白さもあるということです。
例えばこれは有名な話だと思うのですが、味の素容器の穴の話。
どうしたら売り上げが伸びるかという会議で、穴を大きくすればいいんじゃないかとOLが提案。
その結果見事に売り上げが倍増したと。
なるほど、味の素をふりかける回数なんてだいたい皆決まっています。
わずかに穴を大きくすればいつもの回数でより多く消費することになる。
これって当たり前のようですごい発想ですよね。
そのOLは社長から功績を表彰されたそうです。
さて、この話は本当なのかどうなのか。
著者は実際に味の素本社に出向き、広報室に取材するわけです。
他にはガソリンが北海道や沖縄という地方、季節によっても中身が違うとか。
著者は出光興産の広報室に話を伺います。
緊急時の保存食として重宝されているカンパンには陸軍式と海軍式があるとか。
一般的に出回っているのはどうやら陸軍式のようで、海軍式は4センチ×7センチの大きさで、昔ながらの製法で作られておりかなり硬いとか。
私は見たことがないですね。
これも発売元の三立製菓に話を伺っておられます。
その他、テレビショッピングの通販商品はなぜどんどん値段据え置きでおまけが増えていくのかなど、誰もが疑問に思いつつもわざわざ調査などしない疑問についてのコラムが満載。
お見事です。
ラベル:エッセイ
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2019年06月10日

「葎の母」津島佑子

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母と葛藤があり家を出て男と同棲している私。
私は男の子供を宿しています。
ある日男は私に母に電話するように言います。
戸惑う私に代わって母と会話した男は母に会いに行くのですが・・・・。
短編集です。
6編収録。
いや、すみません、私には無理でした。
どれも私の読解力では理解できませんでした。
表題作は娘と母の葛藤、そしてラストにはさりげない歩み寄りがあります。
しかし表題作他、どれもシュールでよくわかりません。
夢を物語として組み直さずそのまま書いたらこのような感じになるのかなという気がしましたが。
しかし津島佑子ほどの作家がそのような垂れ流しはしないでしょう。
小説としてしっかりと練られた上での作品のはずです。
表題作は田村俊子賞受賞作とのことですし。
私ごときが及ぶところではありませんでした・・・・。
ラベル:小説
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