2019年03月28日

「愛のひだりがわ」筒井康隆

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舞台は近未来のようです。
ずいぶんと治安が悪くなり、警察も役に立っていないような世の中。
月岡愛は小学6年生。
幼いころ犬にかまれて左腕が不自由な少女です。
母を亡くし、ひとりぼっちになった愛は、二人を置いて家を出た父を探す旅に出ます。
ぶっそうな世界でいろんな事件に巻き込まれ、またいろんな人と出会います・・・・。
なんだかロールプレイングゲームのような小説だな、という印象です。
淡々としていて平面的。
それぞれの人物についても浅く掬っている程度の描写です。
そして文章もいかにもジュブナイル的。
わざとらしいほどですが、もちろんこれは計算されてのことでしょう。
それらの設定が荒廃した世界と重なり、なんとも灰色な印象を受けます。
そんな中での少女の成長と冒険の物語ですが、素直にそれを喜べるという読後感ではないですね。
ラベル:小説
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2019年02月04日

「ベジタリアンの文化誌」鶴田静

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ベジタリアンといえば一般的には菜食主義者、非肉食者のことをいいますが、今までの歴史の中にも大勢のベジタリアンがいました。
宮沢賢治、ガンジー、ジョン・レノン、トルストイ、ダ・ヴィンチ、ピタゴラス、ヒトラー・・・・。
彼らはなぜ肉食を否定したのか。
その思想や社会に与えた影響は・・・・。
ベジタリアンにもいろいろ理由がありまして、健康上の理由であったり宗教の戒律であったり動物保護であったり。
あるいは食料上の理由というのもあったりしますね。
肉を食べるための動物を飼育するのにどれだけの穀物や土地の面積が必要か。
それをそのまま人間が食べるために割り当てればどれだけの食料が確保できるか。
例えばこの本に書かれているデータでは、1ポンドの牛肉を得るためには16ポンドの大豆や穀類が必要だといいます。
1エーカーの土地に穀類を栽培すると肉の5倍、豆類だと10倍、野菜だと15倍のタンパク質が得られるとのこと。
限りある土地を動物の飼育に使うより、穀物や野菜を栽培したほうがずっと有効なのだと。
なので肉食反対という人たちもいるわけです。
歴史の偉人たちの思想や言動をここで紹介するには長すぎる話となるので割愛しまして(笑)、しかしまあベジタリアンのみなさんはけっこうそのようなことを考えて実行しておられるようです。
著者は「ベジタリアン」の訳語として「菜食主義者」という言葉を当てはめるのは適切だろうか、と提起しておられます。
つまりただ単に肉を食べずに野菜を食べる人というだけではなく、健康はもちろん、動物の生命や地球の環境についてまでも含んでいるのが「ベジタリアン」ではないかと。
ただ動物保護の観点から肉食すべきではないという意見に関しては当然反論があるわけですね。
肉食は動物の命を奪う残虐な行為であるというような主張に対しては、じゃあ植物に命はないのかと。
定番の議論ですね。
この本ではそのことについてはほとんど触れられていません。
頁数でいえばせいぜい1頁か2頁ほどでしょうか。
ちょっと煩いことは避けておられる感があります。
ベジタリアンを語る上で避けて通れない話だとは思いますが、まあこれはそのような議論をする本ではありませんので。
著者の意見として「私が植物を愛し育てることは食べてしまうことへの罪ほろぼしをしているつもり」と書いておられますが、わけがわかりません。
じゃあ犬や猫、小鳥などのペットを飼うことで肉を食べることへの罪滅ぼしになるのではないのか。
ちなみに著者はベジタリアンではありますが肉食を否定批判しておられるわけではありませんので念のため。
個人的には動物保護の観点からベジタリアンを主義とするのは無理があると思います。
植物の命をどう考えるのか、というのが付いて回りますので。
自分で黙って実行するぶんにはいいのですが、他人に強要するのはいけませんね。
先日、非肉食者の女性が肉屋の前で抗議しているフランスのニュースを観ました。
捕鯨に反対する連中と同じような人なのでしょう。(笑)
ラベル:グルメ本
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2018年09月20日

「味に想う」角田房子

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作家による食エッセイです。
夫は新聞記者でパリ支局長をしておられ、またご自身もソルボンヌ大学に留学していたこともあり、ヨーロッパのいろんな国々が紹介されています。
フランスはもちろん、イタリア、スペイン、ドイツ、ソ連・・・・。
著者が初めてパリを訪れたのが1930年代とのこと。
そんな時代から向こうで生活され、なので食べ物や店の紹介についても身に染み付いたような生活感が感じられます。
これを書かれたのは日本に帰国してからですので、どこかノスタルジックな雰囲気もありますね。
新聞に連載していたのを本にまとめたとのことですが、文庫化にあたって最後に書き加えられた「亡夫の思い出」という話がいい。
まだ50代だった夫が言った言葉、「末期の水というのがあるが、この世で最後に飲むのが水じゃつまらない。僕はブルゴーニュの赤にする。よく覚えといてくれよ」
そして80歳の臨終のとき、金婚式を祝った思い出のシャンベルタンを綿に含ませ、夫の唇を拭いてあげたそうです。
しんみりといいエピソードではないですか。
ラベル:グルメ本
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2018年08月15日

「鍵のない夢を見る」辻村深月

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地方の街で暮らす女性たちを描いた5編収録の短編集。
どれもちょっとイタイ女性が主人公です。
いや、単純にイタイと言ってしまっては身もふたもなく底が浅くなってしまうのですが。
「仁志野町の泥棒」や「芹葉大学の夢と殺人」などは主人公そのものはイタくないのですが、付き合う友達や男がどうしようもないんですよね。
でもそんな相手に振り回されてしまうというか、相手のペースに呑まれてしまうあたりが結局はイタイわけで。
「美弥谷団地の逃亡者」も同じくでしょうか。
「石蕗南地区の放火」なんてのはまさしく主人公の女性がイタ過ぎです。
勘違いしている女の徹底ぶりが実にいい。(笑)
作者もなかなかシニカルです。
最後の「君本家の誘拐」にもちょっとそんなところはあるのですが、しかし育児ノイローゼだとかこれは経験した人にしかわからないものでもあり、単純に主人公の迂闊さを責めるわけにもいきません。
どれもそれぞれ無難なレベルでまとまった短編集だとは思うのですが、作者はこれで第147回直木賞を受賞しているんですよね。
そうなると「ん?」と首をかしげたくなります。
単純にこれが直木賞にふさわしいのかという疑問がありますし、直木賞受賞作というのは作者にとって代表作として今後ずっと付いて回るわけで。
そう考えるとこの作品集を作者の代表作としていいのかと。
他の作品は読んでいませんのでなんともいえないのですが。
ちょっと弱いんじゃないですかね。
これから他の作品も読んでいきたい作家さんですので、自分なりに検証していきたいと思います。
ラベル:小説
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2018年01月05日

「梅干しを極める」都築佐美子

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梅干しといえば日本のソウルフードといえましょうか。
最近はそうでもないかもしれませんけど。
著者は梅干しを作り続けて約40年という筋金入りのウメボシストです。(笑)
この本では梅干しの作り方はもちろん、梅干しの効用、梅干しを使った料理、梅干しの歴史など至れり尽くせり。
中でもやはり梅干しの作り方がメインとなりますかね。
梅の種類、大きさ、買う時期、塩、赤じそ、容器、アイデア小物、土用干し、困ったときのQ&A・・・・。
手取り足取り解説しておられます。
梅干しというのは漬物に比べるとちょっと手間ですよね。
私も以前から挑戦したいと思いつつ、いまだ実行できていません。
でも本物の梅干しを食べたいですよね。
本来梅干しというのは塩と赤じそだけで作るべきものなのに(白梅干しは赤じそ不使用)、スーパーで売っているのはたいがい添加物まみれ。
化学調味料、甘味料、香料、色素・・・・。
そして本来保存食であるはずの梅干しに保存料が入っていたり、減塩のせいですぐに腐ってしまったり。
本末転倒です。
味もすっぱくてしょっぱいのが持ち味なわけですが、最近はかつお梅だとかはちみつ梅だとか食べやすいのが好まれているようです。
まあそれは味のバリエーションとしてあってもいいと思いますが。
でもやっぱり梅干しはしっかり塩が効いて顔がくしゃくしゃになるほどすっぱくありませんとね。
この本を読んでいるとひたすら口の中に唾が湧き出てきて困りました。(笑)
ラベル:グルメ本
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