2015年11月21日

「エバーグリーン」豊島ミホ

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田舎でミュージシャンを目指すシンと漫画家を目指すアヤコは中学生。

別々の高校に進学することになった2人は、卒業式で10年後のこの日にそれぞれの夢を叶えて再会しようと約束します。

自信満々だったシンはその頃はすでに超有名ミュージシャンになっているので、全国ツアーのスケジュールの合間を縫ってギターしょってアヤコに捧ぐ歌を持ってきてやると。

アヤコはちゃんと本になったマンガを見せると。

そして10年。

シンは自分の才能のなさに気付き音楽に対しての情熱も薄れ、今はリネンの会社に就職し病院にシーツを運ぶ仕事をしています。

10年前の約束をぼんやり懐かしく思い出したりの日々。

約束の日が近付いてきたある日、シンはアヤコが漫画家として成功していることを知ります。

それに比べて今の自分は・・・・。

個人的に「ああ、そうだな・・・・」とじわっときましたね。

10代の頃の夢、そして大人になっての現実。

誰しもが経験することじゃないでしょうか。

「クソ田舎で一生埋もれて暮らせ!」とやる気のないバンド仲間に啖呵を切ったシンも、結局は田舎に埋もれてしまっているわけです。

しかしちょっと下に見ていたアヤコが夢を実現している。

約束の日が迫っている焦燥感。

シンは現状でアヤコと再会することができるのか。

シンとアヤコの交互の視線で語られるのですが、アヤコはこの10年間ずっとシンの動向を気にかけ、つねに音楽雑誌をチェックしてシンの名前がないか確認しています。

そして描いているマンガもシンをモデルにしたような内容です。

このあたりのアヤコの一途さというか健気さが実に切なくも清々しい。

ラストもいいですね。

まさしくエバーグリーン。

青春小説ですが、10代よりもむしろ20代後半あたりの世代が読んでぐっとくるんじゃないですかね。

もちろんそれ以上の世代にも。

ラベル:小説
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2015年10月27日

「ロマネ・コンティの里から ぶどう酒の悦しみを求めて」戸塚真弓

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パリ在住の著者によるワインエッセイです。

夏のヴァカンスはロマネ・コンティの古里ブルゴーニュで過ごすといいます。

羨ましい。(笑)

サブタイトルにもあるようにこの本では『ワイン』ではなく『ぶどう酒』と表現されています。

「ああ、それっていいかも」と思いました。

なんだか生活に密着した酒という気がするではないですか。

実際フランス人にとってのワインは著者があとがきにも書いておられるように、『私はフランス人のように毎日ぶどう酒を飲む。といって、ぶどう酒がわかるとか、わからないとかいうために飲むのではない。ただ、ぶどう酒が好きだから飲む』なんですね。

食事には欠かせない飲み物です。

一般の人はワインについてウンチクなんて語りません。

ましてや家庭で普段飲むワインにおいてをや。

それこそ日本人が食事のときにお茶を飲むような感覚といってもいいくらい。

でも日本人はそういう楽しみ方ができないんですね。

今日は何飲んだ昨日は何飲んだ、味はどうだったこうだった、記録し、語らずにはいられない。

それはそれで日本人のワインのスタイルなんでしょう。

またそういうのがワインの楽しみのひとつであるのも事実です。

この本では著者がいろんなエピソードを交え、のぴのぴとワインの魅力について語っておられます。

いや、ぶどう酒について。

でもそれは決してマニアが語るようなウンチクや何飲みました自慢ではなく、ぶどう酒好きの溢れる悦しみなんですね。

ラベル:グルメ本
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2015年10月15日

「おさな妻」富島健夫

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17歳で母を亡くした玲子。

母と娘ふたりだけの暮らしだったので玲子は叔母の家に引き取られます。

叔母はいい人なのですが、その夫が執拗に迫ってくるのです。

耐えかねた玲子は家を出て一人で暮らすことにします。

幸い母が生前に貯めていてくれた貯金や証券がありました。

玲子は高校に通いながら保育園で働くことになります。

まゆみという園児が玲子になつくようになるのですが、その父親の吉川誠一に玲子は惹かれるようになります。

吉川は30歳手前で妻を亡くしてまゆみとの二人暮らし。

吉川もまた玲子に惹かれるのです。

18歳になり玲子は吉川と結婚します・・・・。

「おさな妻」なんてなんだかポルノ映画のタイトルのようですが。(笑)

そのような内容を想像してしまいがちですが、思春期の女性の恋愛と生き様を描いた青春小説です。

まあ、初夜の描写なんかもあったりしますけどね。

それはともかくとしまして、高校生の女の子が妻になるという斬新な設定。

発表されたのは昭和45年ですからね。

引き取られた家ではスケベオヤジに迫られ、結婚後は夫の浮気疑惑なんてのもあったりして、けっこうパターンな展開ではあります。

悩みながらも健気に夫の愛を信じる玲子。

ロマンチックな小説です。

設定を現在にしてこのような話を書けば時代錯誤もはなはだしいですが、この時代の小説としてこれはありでしょう。

でも現在においても根本は変わらないのではないかという気もしますけどね。

現代のチャラチャラした男女よりはよほどいい。

清々しいものがあります。

ラベル:小説
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2015年08月14日

「とり・みきの大雑貨事典」とり・みき

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漫画家、とり・みき。

少年チャンピオンでデビューしたときから読んでいますが、当初は吾妻ひでおに影響を受けた作風でしたがあまり面白くありませんでした。

面白くなってきたのは「るんるんカンパニー」の中頃あたりからでしょうか。

ドタバタを卒業し、シュールなギャグが冴えてきました。

「ポリタン」なんて傑作だと思いますね。

そして「愛のさかあがり」でエッセイコミックに才能を見せます。

この頃から油性ペン(ゼブラのマッキー)を使い始め、独特な味のあるタッチが生まれます。

さて本書ですが、そんな著者が気になるいろんな商品を取り上げ紹介するというエッセイ。

モチーフに対しての話の展開が面白い。

モノに対してのフェチズムがありますし、トマソン的な視点があります。

こういう切り口自体は決して新しいものではないのですが、モノ選びやこだわりにいかにも著者らしいセンスが感じられます。

各章にそえられているイラストがどうってことないんですけど味わいあるんですよね。

ラベル:エッセイ
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2015年08月06日

「堕落のグルメ ヨイショする客、舞い上がるシェフ」友里征耶

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さてさて、あくまで客の立場からグルメ業界に物言う著者が今回はどのような内容で立ち向かうのか。

タイトルは「堕落のグルメ」です。

サブタイトルは「ヨイショする客、舞い上がるシェフ」。

ということで、客も客ならシェフ(店)もシェフだと。

そういうことですね。

まず第1章ではご自身の経験を例に挙げ、性悪店主を告発しておられます。

店を批評したことにより、脅迫や訴訟をちらつかせられたり出入り禁止にされたり。

第2章では食材の偽装について切り込んでおられます。

これはしょっちゅう問題になっていますもんね。

第5章では客に対しての批判もしておられます。

厚顔無恥な常連客やブロガーたち。

第6章では関西飲食業界を批判。

読み通しまして、確かにもっともだと思う部分は多々あるのですが、苦笑してしまう部分も少なくありません。

そこまで必死に批判しなくてもと。

例えば第4章の料理人(匿名)とのQ&Aではいろんなジャンルの料理人が質問に答えているという形式なのですが、著者が最後にコメントを添えておられます。

このコメントがなんとか著者の思いに持っていこうとする意図が見えすぎてしまっており、読んでいてどうも苦しい。

料理人のコメントだけで客観性を持たせるべきなのですが、ご自身の思想に誘導して着地させておられるのですね。

グルメ業界やそれを取り巻く連中の胡散臭さは、業界に興味を持ち見続けている者には明らかです。

ですがそれを真正面から批判する人がいなかったのは事実。

ジバランを始めとして素人の立場から公平に批評するというコンセプトであるはずのサイトやブログの主催者が、マスコミの声掛けによりコロッと寝返ってしまう。

そんなに“有名人”になりたいんでしょうか。

ギャラが欲しいんでしょうか。

山本益博氏にしてもそうですもんね。

「東京味のグランプリ」を出版した最初の頃の気概はどこへいったのか。

なので著者に批判されるのですね。(笑)

話がちょっと逸れましたけども、そんな中でひたすら問題提起しておられる著者の友里征耶氏、賛否あるでしょうが私は面白い存在だと思います。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 03:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 『と』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする