2018年02月02日

「遮光」中村文則

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いつも黒いビニール製の袋を持ち歩いている私。
中には瓶が入っています。
瓶の中身は人間の小指です。
事故で亡くなった恋人の美紀の小指を、医師の目を盗んで霊安室から持ち帰ったものです。
それをホルマリン漬けにし、つねに持ち歩いているのです。
友人たちには美紀はアメリカに留学していると嘘をつき続けて・・・・。
恋人を失った喪失感はわかりますが、形見の物を身につけるのならまだしも肉体の一部を盗み取って持ち続けるなど、これはもう愛ではなく狂気ですね。
ですが主人公の私は非常に冷静で客観的に自分を見ています。
しかしそれはあくまで自分の世界の中だけの話であって、周りから見ればその言動はやはり異様です。
虚言癖や相手をわざと怒らせるような言動、顔色を変えず(?)に鉄の棒を喧嘩相手に振り降ろしたり花瓶を頭に叩きつけたり。
それは恋人を失った虚しさや絶望感なのか、誰に対してぶつけていいのかわからない静かな怒りなのか。
愛する人を失うのはつらいことですよね。
それでもほとんどの人はそれを乗り越えて、というか乗り越えざるを得ないわけですが、主人公はそれができなかった。
ある意味壊れてしまったんですね。
生と死、精神のコントロール、偏執的、物事を冷たく客観視する目など、過去に読んだ作品には共通した印象があります。
この作家の書く小説は暗く重いです。(笑)
ラベル:小説
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2017年07月03日

「何様のつもり」ナンシー関

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「ナンシー関の顔面手帖」に続いて2冊目の作品集。
(おそらく。著書が多数なので順番がよくわかりませんが。)
当然のことながら芸能人たちの言動について鋭い考察をしておられます。
トップは表紙にもなっている“森繁”。
第15回日本アカデミー賞の模様についてですが、この時点でもうすでにボケておられたようで。
ボケと重鎮という二つの枷を引きずる森繁。
味わい深いですね。
加納典明(カメラマン)なんて最近見かけなくなった人も登場しています。
松本伊代の不思議なポジション、これはいまだに引きずっている気がしますね。
一時期好感度ナンバーワンだった山田邦子についてもその好感度に疑問を呈しておられます。
さすがに鋭い。
その他いろんな人たちが登場。
後半はエッセイや短編小説。
こんなのも書いておられたんですね。
そして巻末には竹中直人氏との対談。
しかしナンシー氏の指摘というのは痒いところに手が届くといいますか、「そうそうそれが言いたかったんだよね」といったカタルシスがあります。
もちろん氏のすべての指摘が当てはまるわけではありませんが。
これからもぼちぼちと作品を読み進めていきたいと思います。
ラベル:エッセイ
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2017年06月25日

「魚料理のサイエンス」成瀬宇平

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日本人にとって魚料理というのは絶対に欠かせないものです。
四方を海に囲まれた我が国、豊富な魚に恵まれ、魚にかけては世界一を誇れるほどにその料理は多彩だと思います。
もちろん調理の技術においても。
ですが昨今、魚離れという話をよく聞きます。
なんでですかねぇ。
料理がめんどくさいだのなんだのという声も聞きますが。
アホかと思います。
どれほどラクして料理したいねんと。
そんな戯けた連中のせいで魚料理が廃れていくなんて日本人として耐えられませんね。
こんなとこでぼやいてもしょうがないんですけど。(笑)
さて、この本ではいろいろな魚を紹介しつつ、タイトルからも察せられるようにその魚の質を科学的に分析しておられます。
脂質はどれくらいで、どのような旨味成分が含まれているのか。
どのような食べ方が向いているのか、それはなぜか。
タイトルではサイエンス(科学)となっていますが、料理はむしろケミストリー(化学)ですよね。
まあ化学は科学に含まれているわけですが。
感心するのはやはり日本人の知恵といいましょうか、魚に関する知識といいましょうか。
昔から受け継がれている『この魚はこのように料理する』というのが科学的にも実に理にかなっているのですね。
日本の昔の人が築き上げた食文化というのは本当に素晴らしいと思います。
旬を感じさせ、バラエティに富み、体にもいい魚料理。
ぜひぜひ日本人としてしっかりと見直さなければなりません。
ラベル:グルメ本
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2017年06月17日

「怖い絵」中野京子

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絵って怖いですよね。
有名な画家の絵なんか見てるとたいがい怖い。
「モナ・リザ」なんてめちゃくちゃ怖いじゃないですか。
それはこちらの受け取り方にもよるんでしょうけど。
てなことを昔から思っていたのですが、この本を読みまして「あ、やっぱり絵は怖いんだ」と。(笑)
こういう書き方をすると語弊がありますね。
すべての絵が怖いのではなく、怖い絵も間違いなくあるんだと。
それは見る者を怖がらせる目的で描かれたものではないにもかかわらず、こちらがその絵に込められた物語を読み取り、それに対して恐怖を感じるということです。
あるいは理屈ではなく感覚的に怖いなと。
で、この本にはそのような怖い絵が何点も紹介されています。
まず表紙に使われているラ・トゥールの「いかさま師」。
これはもう、ストレートに見た目が怖い。(笑)
この女達の目よ。
ゾクッとします。
そして絵に込められた物語もやはり怖いんですよね。
この表紙ではカットされていますが、左右に人物がいます。
左にはいかさま師の男、右には若者。
ギャンブルでさんざん勝たせてやった若者を、3人がかりでさてこれから身ぐるみ剥いでやろうというその瞬間です。
若者のこの後の惨状はいかに。
他、ドガの「エトワール、または舞台の踊り子」という、この絵の何が怖いの? と思えるような作品も紹介されています。
著者の解説を読みますと・・・・。
私などはまったく絵を見る目も教養もないもので、このような解説書は誠にありがたいです
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2017年05月22日

「食べる。」中村安希

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「食べる。」
ストレートなタイトルじゃないですか。
あらゆる国を訪れ、その土地の人たちと出会い、その土地の料理を食べた記録です。
訪問した国がまたちょっとマイナーな国で。
といったら語弊がありますかね。
いや、だってこのような国の料理を思い浮かべることができます?
エチオピア、スリランカ、スーダン、モザンビーク、アルメニア、グルジア・・・・。
イギリス、フランス、イタリアといった国ならある程度想像がつきますけど。
場所的にも私など白地図を広げてどのあたりにあるか指させといわれても無理です。
それら以外にも香港やタイ、メキシコといった比較的馴染みのある国も紹介されていますが。
さて、この本はタイトルからして食べることがメインテーマなわけですが、やはりその土地ならではの料理を食べるとなると現地の人とのコミュニケーションが必要なわけで。
ただこんな国でこんな料理を食べましたじゃなくて、人と出会いそれにまつわるストーリーがあります。
なのでノンフィクションではありますが、ちょっと小説っぽい雰囲気も感じられます。
ナルが鼻に付くともいえますが。
ラベル:グルメ本
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