2011年05月29日

「招待客」新津きよみ

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主人公である高谷美由紀が結婚することになり、幼い頃川で溺れたのを助けてくれた命の恩人を披露宴に招待しようという話になります。

二十年も昔の話。

恩人の井口貴明がいま何をしているのかわかりませんが、当時の新聞の切り抜きから現在の所在を探すことは可能だろうと、美由紀は招待することに同意します。

しかし当時高校生だった貴明は、現在まったく別人のようになっていたのです。

そんなことも知らずに招待状を送ってしまったことにより、美由紀は思わぬ展開に巻き込まれていきます。

披露宴にも貴明ではなくその母親の富士子がやってくるのです。

黒留袖という場違いな服装で。

それがきっかけで美由紀は富士子に執拗に付きまとわれるようになり、やがて取り返しのつかない事態へと話しは進んでいきます・・・・。

サスペンスですね。

引きこもりになってしまった貴明よりも、その息子を溺愛する母親が狂っていく過程が怖い。

それなりに面白い展開で話は進んでいくのですが、なんやかんやと詰め込みすぎの感があります。

美由紀が白血病で骨髄移植を受けた患者という設定ですが、これが話の内容にどれほどの効果をもたらしているのか。

プロローグで出てくる刑事がそのドナーなのですが、その後この刑事とある事件で出会うことになるという設定もちょっと世界が狭すぎます。

母親違いの妹の登場も唐突でキャラがいまいち中途半端。

死体を目の前にしての美由紀のリアクションもそりゃないだろうと。

あちこちに視点が飛ぶのもこの作品の場合むしろややこしいだけ。

なんやかんやと粗が目に付いてしまいますね。

もう少しすっきりと整理されていればと思いました。

作者の実力は認めるが、もう一作読んでみたい。(文学賞選評風 笑)

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 『に』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月27日

「楯」二谷友里恵

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いよいよ三部作の最終巻です。

郷ひろみの「ダディ」に対する反論本といえましょうか。

この本は愛するものを守るための「楯」だと二谷は言います。

沈黙を貫いてきたがこれ以上は黙っていられないと。

きっかけとなったのが子供の言葉です。

「ママ、私にとって一番いやな事は、ダディが結婚することでも、ダディがテレビで悪く言われることでもなくて、ママが、ここまで嘘ばっかり書かれても、黙ってることなんだよ。」

二谷が立ち上がりました。(笑)

子供のセリフとして「嘘ばっかり書かれている」と記述するのはなかなかの技と言えます。

そしてそんな子供たちのために沈黙を破るというのも、大義名分と満を持して感を煽り立てます。

やはりこの人を本気で怒らせると怖かった・・・・。

前著「愛される理由」でその片鱗は伺えましたが、今度は攻撃ですからね。

ビシバシ本領を発揮しておられます。

「友里恵以外の数人の女性と肉体関係を結んだ」という郷の記述に対し、「数」と「人」の二文字あいだに「十」も「百」も入っていないと反論。

容赦なく事実(?)を暴き立てます。

そして郷ひろみは仕事が終ったあとも「郷ひろみ」だったといいます。

本名の原武裕美ではなく。

つねに視線は自分自身を見ているのですね。

妻が居ても他の女性を意識し、髪をいじりながら「ボク、アタマ変じゃない?」と二谷に尋ねる郷。

すでにトイレでチェックしているにもかかわらず。

「髪の毛は、変じゃない」と答える二谷。

ピリッとスパイスの効いた返答ではないですか。(笑)

エレベーターに乗っても普通の人のようにボーッと階数表示など見ないそうです。

扉に映っている自分の姿をひたすらチェック。

二谷が郷に愛想を尽かしたのが深夜の救急車事件なんですね。

これが離婚へのダメ押しとなったようです。

夜中に具合の悪くなった二谷。

下腹部に痛みを感じ気分も悪くなり這ってトイレにたどり着き、しばらくトイレに横たわっていたものの寒気に襲われ、さすがにこのままではだめだとどうにかまたベッドに戻ります。

しかし翌朝にゴルフを控えている郷は耳栓をしてアイマスクをしたまま。

症状が治まらず二谷は自分で救急車を呼びます。

家の外に出て座り込み、救急車を待つ二谷。

見上げた寝室のカーテンは閉じたまま・・・・。

翌朝病院を出たもののタクシーが拾えません。

二谷は郷に車で迎えに来てくれるよう連絡しますが、ゴルフのほうが大事とばかりに断られます・・・・。

そりゃ夫婦なんかやっとれませんわな。(笑)

離婚してからは仕事を邪魔するとひどい目に遭うぞというような恫喝もあったとか。

「ダディ」を読むと、友里恵は離婚してもずっと大事な相手でありいい関係を続けていきたいみたいなことが書いてあるのですが、この本を読むとそれらがすべて都合のいい綺麗ごとのように思えてきます。

まあどちらの言い分が正しいのかなんて第三者にはわからないことなのですが・・・・。

最後は再婚相手の平田氏に捧げる詩のような文章で終っています。

なんじゃこりゃ。

なんだかんだいっても、この人も郷ひろみに負けないくらいのナルシストです。

懲りない人ですねぇ。

この最後の数ページがまた『私には、この後の生涯で二度と読み返すことは無いと固く心に決めている本が”三冊”あった。』とならなければいいのですが。

さて、三部作の<序破急>、二谷、郷、二谷と読みまして、やはり感じましたのが文筆家としては圧倒的に二谷友里恵に軍配が上がるということ。

お互いそれが本業ではないので競い合う必要もありませんけど。

「ダディ」はあまり構成を考えておられない。

思いつくまま言いたいことを書き連ねているという印象は拭えません。

やはり郷ひろみというのは天然といいますか、あっけらかんとした人なんですね。

思いのほか(といっては失礼ですが)真摯な考えを持っておられるのですが、しかし根本がやはりあっけらかんなんです。(笑)

これに対して二谷友里恵は理詰めです。

きっちりと詰めてきます。

「楯」を読みまして、幸せいっぱいであるはずの「愛される理由」から怖さを感じたのも頷けます。

本人は気付いておられないであろう天然の芳香もしっかりとありますが。

郷ひろみはもういいですが、二谷友里恵、できればなにかもひとつ読みたい。

怨念のこもった内容がベストだと思いますが。(笑)

ちなみのこの「楯」というタイトル、タイトル順に本棚に並べた場合、必ず「ダディ」の前にくるように付けられたという説があります。

この人ならそこまで計算してそうな気はしますが。

でもタイトルであいうえお順に並べるということはないですけどね。

「愛される理由」二谷友里恵

「ダディ」郷ひろみ

ラベル:エッセイ
posted by たろちゃん at 07:31| Comment(2) | TrackBack(1) | 『に』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月25日

「愛される理由」二谷友里恵

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<序破急>という言葉があります。

<起承転結>と同じような意味でして、<起承転結>は物語を四つの構成に分けますが、<序破急>は三つに分けます。

そんな<序破急>にぴったりとあてはまるのが次の三部作です。

「愛される理由」二谷友里恵、「ダディ」郷ひろみ、「楯」二谷友里恵。

いや、元々は三部作として書かれたわけではないのですが、結果的に三部作のようになってしまったという皮肉な三冊です。(笑)

書評家の大森望氏や斎藤美奈子氏らの書評によりますと、これがぶっとんだ面白さとのこと。

今さらですが、どれどれと三冊まとめて購入しました。

さて、まずは「愛される理由」です。

ぶっとび具合は「ダディ」と「楯」のようですが、それらを楽しむためにはまずこれを抑えておかなければなりません。

まさしく<序>であります。

タイトルが「愛される理由」。

「愛する」ではなく「愛される」という受動態。

「わたし、あの郷ひろみに愛されてしまったの・・・・その理由を知りたい? うふふ・・・・」といったところでしょうか。

たしかにいかにも箱入りのお嬢様な視線で書かれてはいますが、かといってフリルのお洋服を着てお花畑で蝶々と戯れてるというイメージではありません。

まずプロローグともいえる最初の章で、パリのルイ・ヴィトンで店員をどなりつけたエピソードを披露。(笑)

そして郷ひろみとの出会いからプロポーズ、結婚、出産という流れで進んでいくのですが、この二谷友里恵という人、けっこう硬質な文章をお書きになります。

非常に冷めた目で物事を細かく観察しておられる。

彼女の芯の強さといいますか気の強さといいますか、穴の底で待ち構えている蟻地獄の主といいますか、文章からはそんなイメージを持ちましたね。

そして「へ?」と思うような記述が多数。

『子供の頃、私はスプーンを曲げていたらしい』

超能力をお持ちだったようで・・・・。

『気がつくとスピードメーターが180キロを越えていて』

目に涙を浮かべて高速を180キロで走るなんて・・・・。

彼女の車は国産車のレパードだったはずですが、リミッター解除ですか。

あ、郷ひろみのベンツか。

その他、あと(離婚後)になって味わいの出てきたお言葉も。

『もし本当にこの人と結婚したら、きっと私は幸福になれるのだろうなァと思った』

誰もがそう思って結婚するんでしょうね。

『常に絶対に裏切らない彼の気持ちが私はうれしかった』

絶対という言葉はあり得ないと身に沁みられたのでは。

『またここにも一人、何万人目か、何億人目かの幸福なジューンブライドが誕生してしまった』

でもそれはカウントダウンの始まりだったのですね。

『平凡なんて大キライ。平凡に暮らすぐらいなら、ハランバンジョウの方がイイ』

小学生の頃からそのようにおっしゃっておられたそうで、まさにその通りになられましたね。

『あなたの好きなハランバンジョウの人生になったじゃない』

結婚の数日前に母親が言ったお言葉。

数年後にはもっとハランバンジョウが・・・・。

などとあげ足を取るとキリがありませんね。(笑)

まさかこの本が『私には、この後の生涯で二度と読み返すことは無いと固く心に決めている本が二冊あった。(略)一冊は、十年程前に自分が書いた「愛される理由」という本である』(「楯」より)などということになろうとは・・・・。

「ダディ」郷ひろみに続く。

ラベル:エッセイ
posted by たろちゃん at 05:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 『に』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月20日

「人類法廷」西村寿行

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法廷シリーズ第三弾。

といっても前二作とつながりはありません。

上高地大虐殺事件。

バス三台の運転手を狙撃し崖に転落させ、後続のバスから逃げ出す人々も射殺。

死者百五人、重軽傷者五十四人。

未曾有の大事件です。

犯人は沼田光義。

しかし沼田は犯行当時アルコールに酩酊しており、心身喪失状態として裁判では無罪を言い渡されるのです。

これだけの犯罪をしでかしておいて無罪などとは誰もが納得いきません。

母と妻と六歳の娘をこの事件で殺された真琴悠平は、人類法廷を立ち上げて沼田を裁くこと決意します・・・・。

真琴悠平の考えに賛同した強力な支持者が集まります。

経済的な支援を買って出た神崎四郎。

昔は鬼のデカ長と恐れられた念沢義介。

真琴と同じく妻子を殺された元空挺団員の雪江文人。

県会議員でお調子者の関口朝太郎。

沼田が犯罪を犯した動機が重要な鍵となります。

動機がなければただのアル中の心身喪失で無罪として片付けられてしまうのです。

沼田は動機などなく、単なるアル中ゆえの犯行だったのか。

そんなわけはなく、どんな動機があり未曾有の大事件をしでかしたのか。

複雑に事件に絡み合う人物たちの関係は。

人類法廷は独自の調査を開始し、ことごとく警察や検察を出し抜きます。

その行方は・・・・。

派手なドンパチはありませんが(笑)、西村寿行らしい強烈なメッセージがあります。

誰に強要されたわけではなく、自ら陥ったアルコール中毒、薬物中毒。

そんな連中が人を殺して無罪などと、これほど馬鹿な話はない。

心神喪失だなんだと犯罪者を守るなど、刑法自体が間違っている。

精神鑑定医などになにがわかるのかと。

自分が精神病院に入院すべき医師さえいると。

胸のすくような寿行節が味わえます。

たしかにそうですよね。

そのとき泥酔していればやったことはチャラになるのかと。

精神病なら許されるのかと。

被害者にとってはやられ損です。

たまったものではありません。

そのようなことを決して許さない男たちが活躍してくれるのです。

私は西村寿行のファンでして、好きな作家で誰を一番に挙げるかといえば寿行さんかもしれませんね。

なので寿行作品にはかなり甘いんですよねぇ。(笑)

女性の人格なんて完全に無視されていますし、いろいろと突っ込みどころはあります。

しかしそんな細部にいちいちツッコミを入れていたら楽しめないのが寿行作品でもあります。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 05:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 『に』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月27日

「偏食アカデミー 嗚呼日本の胃袋よ!」日本経済新聞社[編]

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タイトルの「偏食」には「たべるこだわり」とルビがふられています。

話題の店がどうこうというような内容ではなく、いわゆるB級グルメな食文化を紹介した本です。

天ぷらにソースをかける地域を調べてみたり、缶コーヒーの歴史を調べてみたり。

いろんな食材で麻婆豆腐を作り、中華の鉄人陳建一氏と勝負するなんて企画もあります。

日経新聞に連載されていたというわりにはけっこう軽いノリです。

なかなか楽しめました。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『に』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする