2018年08月07日

「流」東山彰良

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時代は1970年代。
台湾。
主人公、葉秋生の祖父が何者かにより殺されます。
誰が? どのような理由で?
悪友との付き合い、恋愛、徴兵。
台北で青春時代を過ごす秋生ですが、もちろん祖父のことは絶対に忘れるわけにはいきません。
青春に付き物のいろんなことを経験しつつ、しかしつねに祖父のことが頭から離れない秋生。
やがて知る真実とは・・・・。
台湾版アメリカン・グラフィティだな、と思ったのが正直な印象です。
といっても内容はずっと暗くて重いですけどね。
秋生の青春を描きつつ、祖父殺しの犯人を追い続けるというミステリーな要素もあります。
そして台湾の当時の歴史ですね。
これが濃密に描かれており、作品を実に厚みのあるものにしています。
やはりここですかね。
これは第153回直木賞受賞作なのですが、当時の台湾を匂いがわかるほどにきっちりと描いたのがよかったのかなと。
話の内容自体は台湾を舞台にした青春小説ですから、これだけでは軽い。
家族を描きつつ、背景をきっちり盛り込んでの成功でしょう。

ラベル:小説
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2018年04月01日

「買えない味2 はっとする味」平松洋子

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「買えない味」の続編です。
単行本時のタイトルは「鰻にでもする?」だったようで。
その「鰻にでもする?」の章で表題作ともいえるのが「鰻」です。
鰻についての思い出や思い入れを語っておられます。
昔、老作家の宅に原稿を取りにいったとき。
「食べていきなさい」と応接間で鰻重をいただいたとか。
子供のころ母親が「暑いから今日は鰻にでもする?」という言い回しに万感の思いがあったとか。
そうですね、食べ物で昔のワンシーンが鮮やかに甦ることがあります。
「はっとする味」の章では最初にパセリが取り上げられています。
最近料理にパセリが添えられることがめっきり少なくなりました。
昔はお造りには“毒消し”としてパセリが付きものだったんですけどね。
洋食にもキャベツやレモンなんかとともによく添えられていました。
私は好きで添えられていれば必ず食べますが、残す人も多い。
というか、残す人のほうが多い。
なので見かけなくなってしまったのでしょうか。
著者はときおり狂ったように大量のパセリを噛みしめたくなると書いておられます。
うんうん、あのモシャモシャ感、咀嚼していくにしたがって口中に散らばる粗雑感。(笑)
ほのかな苦み、甘味、旨味。
いいですね。
ミントの項では、葉を鼻の穴に詰めると実に爽快だとか。
料理ではミントのピラフなんてのも紹介されています。
どちらもちょっと試してみたいですね。
ラベル:グルメ本
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2018年02月06日

「人肌ショコラリキュール」蛭田亜紗子

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ちょっとエッチな短編集です。
元カレに似ているという理由で付き合っている今の彼氏。
優しい彼氏ですが、エッチのときもつねに元カレをダブらせてしまいます。
でもようやく彼氏のよさに気づくのですが、実は彼氏は・・・・。(あなたモドキ)
30歳目前に結婚予定だったOL。
婚約者が変態行為で逮捕され結婚は白紙に。
そんな彼女の現在の“恋人”はヴォルフガングというバイブレーター。
ある日、飲み会の帰りに気になる店主がいる地元の立ち食いそば屋に入るのですが、そこで激しく嘔吐してしまい思わぬ展開に・・・・。(ヴォルフガングとそのほかのこと)
他3編。
う~ん、まあスラスラと読めてなるほどとも思いますが、それで終わりって感じですかね。
特に印象に残るでもなく通り過ぎてしまいます。
本のタイトルも中に同タイトルの作品はなく、意味不明。
甘く苦くほんのり温かくといったイメージなんですかね。
デビュー作も短編集でしたが、そちらのほうが私にはよかったです。
ラベル:小説
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2017年12月04日

「抱擁」日野啓三

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東京の中心部に残っている古い住宅街。
そんな住宅街の谷底のように見える低い場所に、『私』は広い庭に樹木が覆い茂って小さな森のようになっている敷地を見つけます。
その中に建っているのはびっしりと蔦に覆われた古い洋館です。
なぜか私はその洋館に心を惹かれます。
偶然その場で出会った荒尾という男の紹介で私は洋館に案内されます。
住んでいるのは老主人、その息子の嫁である若夫人のたか子、老人の孫である霧子、お手伝いの小田さん。
無口で心を閉ざした少女の霧子に私は関心を持ちます。
それを察した老主人は私に霧子の感情教育のための家庭教師を依頼し、私は引き受けることにするのですが・・・・。
シチュエーションといい登場人物といい、どれも幻想的です。
まず都会の真ん中にある小さな森の(ような)中の洋館という舞台がいい。
そして館内には壺や仮面、甲冑など老主人が世界中から集めた様々な収集品。
登場人物は、生と死を悟ったかのような老人、遺産目当てに露骨な欲を見せる若夫人、そしてガラスのように繊細でなにかを透視しているかのような少女。
そんな中でお手伝いの小田さんはニュートラルといえるでしょうか。
重力を感じさせるような閉ざされた空間で私と少女は何を見、何を感じあったのか。
また生々しい現実はそこにどのように割り込んだのか。
耽美的な非現実感がなんとも心地よいようなシュールな気分にさせる作品でした。
ラベル:小説
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2017年06月09日

「買えない味」平松洋子

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いまや電話やインターネットで簡単に地方の食材が手に入りますよね。
めちゃくちゃ便利な世の中になりました。
なんでも自宅に居ながらにして手に入るのですから。
でも、それでいいんでしょうかね。
地方の珍しいものに手を伸ばす前に、日常の中にある身近な美味しいものにまずは目を向けるべきではないでしょうか。
それは冷ごはんの味わいだったり、だいこんやにんじんの皮のきんぴらだったり、鉄瓶で沸かした白湯だったり・・・・。
そのようなことについて書かれた内容を読んでいると実に味わい深い。
そして食にまつわる道具についても書いておられます。
例えば箸置きであったり、取り皿などの器であったり、土鍋、片口、飯櫃・・・・。
そういうのも含めて味を楽しみましょうと。
味というよりは食ですかね。
灯台下暗しといいますか、どうしても身近なものはその価値を見逃しがちです。
お金を出して満足感を買うのもいいですが、買えない味があるというものも知っておくべきでしょう。
ラベル:グルメ本
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