2015年07月27日

「サンドウィッチは銀座で」平松洋子 画・谷口ジロー

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フードジャーナリストでエッセイストの著者が各章のいろんなテーマにあわせて食べ歩いたグルメエッセイ。

各章のいろんなテーマというよりは、いろんなテーマで各章を作っておられるといったほうがいいですね。

そんな中で表題作にもなっている「サンドウィッチは銀座で」。

やはり銀座というだけあって、文壇バーで『みやざわ』という店のカツサンドを取り寄せてみたり。

深夜の『ロックフィッシュ』という店ではハイボールを飲みながら生ハムとカマンベールのサンドウィッチをつまんでみたり。

銀座というからにはそうなるのかもしれませんが、でもそんなの普通の人には縁遠いですよね。

なので肉屋さんが店先で揚げているというコロッケを使った『チョウシ屋』という店のコロッケサンドなどというのも紹介されています。

他には「いただきます、社員食堂」という章の社員食堂食べ比べというのも面白かったです。

猫も杓子もあの店この店の食べ歩きを写真付きで自慢している昨今、そんなのなんの目新しさもない。

ですが社員食堂の食べ歩きなんて面白いじゃないですか。

猫も杓子もできないからこそいい。

文藝春秋、女子栄養大学、横河電機、新潮社、ポーラ、共産党本部、琉球新報。

いやいやいや。

3ツ星の店がどうたらよりも私にはこちらのほうがよほど興味があります。

こういう所での食事をいろいろと経験したいなぁ。

話題の店の食べ歩きなんてもういいです。

「熊を食べにゆく」なんてのもそうですよね。

猟師を取材し、熊を食う。

なによりよかったのが「孤独のグルメ」でおなじみの谷口ジローの漫画。

イラストじゃなくて漫画です。

これでこの本は値打ちが数倍アップしましたね。(笑)

ラベル:グルメ本
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2015年07月23日

「「黄金のバンタム」を破った男」百田尚樹

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ボクシング界に「黄金のバンタム」と呼ばれた男がいました。

ブラジルが生んだ史上最強のバンタム級チャンピオン、エデル・ジョフレです。

1960年代に活躍し、デビュー以来8年間無敵という強さを誇っていました。

その「黄金のバンタム」を破り、ベルトを手にしたのがこの本の主人公であるファイティング原田です。

まず日本ボクシングの夜明けということで、第一章は白井義男が登場します。

日本人初の世界チャンピオンです。

階級はフライ級。

当時原田は9歳。

白井がチャンピオンになったときの記憶はないといいます。

その後白井はタイトルを失い、日本人念願のタイトル奪回を8年後に果たしたのが原田です。

やがて原田はバンタム級に階級を上げ、フライ級とあわせて2階級制覇の偉業を成し遂げるのです。

著者はこの本で当時の世界チャンピオンと現在の世界チャンピオンの価値はまったく違うということを何度も主張しておられます。

プロボクシングで最初に設定された階級は8階級です。

そしてボクシング団体は1団体ですから、世界中でボクシングの世界チャンピオンというのは8人しかいなかったわけです。

原田の時代で3階級にジュニアクラスが設定され11階級。

ただしジュニアクラスの評価は一段低かったそうです。

現在はジュニアではなくスーパーと名を変えて本来の正規な階級よりも威厳があるように思われているとも書かれています。

ところで現在(2012年)は17階級あり、しかも主な団体が4つもあるものですから、70人近くもの世界チャンピオンがいるということになるのですね。

それでもたしかに世界チャンピオンになるというのは大変なことでしょうけども、やはり昔のチャンピオンとは値打ちが違うという著者の主張はもっともでしょう。

何階級制覇というのも階級を細かく刻んでいる現在では同じく。

昭和26年に日本に初めてボクシングの世界チャンピオン(ダド・マリノ)が来たときは、銀座から新橋までオープンカーでパレードをし、沿道には何万人もの人々が集まったといいます。

それほどボクシングの世界チャンピオンというのは偉大な存在だったのですね。

そんな流れがある中でのファイティング原田の偉業なわけです。

時代は昭和40年代。

当時の日本人にどれほど夢や希望や自信や活力を与えてくれたことでしょう。

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2015年06月21日

「その女アレックス」ピエール・ルメートル

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中年男に誘拐されたアレックス。

廃墟ビルに連れ込まれ、前かがみになり膝をかかえて丸くなっているしかない身動きできない状態で格子状の木箱に裸で押し込められ、天井から吊るされます。

なぜわたしなのか。

男は言います。

「おまえがくたばるのを見たいからだ」

一方、アレックスが車に押し込められ拉致されたのを目撃した人物がおり、通報によって警察が動きます。

指揮を執るのは身長145センチのカミーユ・ヴェルーヴェン警部。

以前に妻を誘拐され殺害されたトラウマを持っています。

しかし警察の捜査はまったくはかどりません。

その間、アレックスは糞尿垂れ流しの状態でどんどん衰弱していきます。

やがてネズミが檻の周りに集まりだし、アレックスの命を脅かします・・・・。

ここまでが序章なんですね。

なぜアレックスがこのような目に合わなければならないのか、誘拐した中年男は何者なのか。

読み進めていきますとアレックスが単なるそこらの女性であり被害者ではないことが明らかになってきます。

被害者のアレックスが実は・・・・ということで、ぐわっと立ち上がってくるんです。

この展開はすごいですね。

なんといいますか、何度も右に左にハンドル切って大きく方向転換し、読者を揺さぶってくれます。

ただ、ラストに関しましては私はそれは違うやろと思いました。

「われわれにとって大事なのは、警部、真実ではなく正義ですよ」

違います。

あなたたち警察や予審判事にとって大事なのはあくまでも真実です。

心情的にはわかりますが、真実をもって裁かなければなりません。

なのでこの作品、最後に首をかしげざるを得ませんでした。

ラベル:海外小説
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2015年03月22日

「永遠の0」百田尚樹

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司法試験に何度も失敗してぶらぶらしている26歳の健太郎と30歳でフリーライターをしている姉の慶子。

二人は特攻隊で亡くなった祖父である宮部久蔵のことを調べ始めます。

いくつかの戦友会に宮部のことを知っている人がいるかどうか手紙を出し、返事が来た何人かと会うことになります。

最初に会った人は、あいつは逃げ回っていた臆病者だと言います。

それを聞いて萎えてしまう二人。

しかしその後も何人かに話を聞いて回るつれ、だんだんと宮部の人間像が浮かびあがってきます。

国のために死ぬのが当たり前という風潮だった当時において、宮部はひたすら生きて家族のもとに帰るのだと主張し続けていたのでした。

特攻隊への半強制的な志願も拒否し続けていたのです。

そんな宮部がなぜ特攻隊で死ぬことになったのか・・・・。

力作ですねぇ。

感動しました。

ですがかなり賛否が分かれているようですね。

特攻隊や戦争を美化しているというような意見に関しては、さすがにそれはありえません。

どこをどう読んでもそんな話は出てこない。

むしろ戦争の悲惨さ、軍上層部の浅はかさや冷酷さ、特攻という行為の愚かさをくどいほどに主張しています。

右傾という批判もあるようですが、主張としてはむしろ左傾でしょう。

人それぞれ考え方が違いますので感想も違ってくるのは当然のことですけど。

映画については観ていないのでなんとも。

私は実にいい小説だと思いました。

ラベル:小説
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2015年02月10日

「ふらんす料理への招待」日影丈吉

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まず最初の章で読者にフランス料理に高級なイメージを持っていないかと著者は問いかけます。

普通なら決してそんなことはないというところですが、「高級という点は認めてもいいが」ときます。(笑)

ただし「様式的な格式ばった食事は、フランス料理の本質とはなんの関係もない」と。

なんやらようわかりませんが。

この本の内容の初出は1971年と1976年。

今と違い、まだ一般庶民にはフランス料理が馴染みない時代です。

そんな時代にフランス料理を啓蒙しようとしたのは立派。

でもフランス料理といってもピンキリでして、当然ながら一般的なフランス人の食事は決して高級ではありません。

日本でいえば料亭クラスの料理を日本人が毎日食べているわけじゃない。

そんなのは特別です。

この本ではレストランの料理を焦点にして語っておられるので、「高級という点は認めてもいいが」となってしまうのですね。

フランス料理といえばレストランというのがやはり時代を感じさせます。

もちろん今もそうなんですが。

70年代は街中に気さくな店などなく、高級ホテルのレストランで食べる料理という時代でしたし。

なのでこの本はフランス料理への招待というよりも、フランス料理店への招待といったほうがいいかもしれません。

ちなみにこの著者はミステリー作家ですが、フランス料理に対しての造詣は深く、帝国ホテルの村上信夫氏やホテルオークラの小野正吉氏といった伝説のシェフたちを君付けで呼んでおられたような立場です。

すごい。(笑)

ラベル:グルメ本
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